イベント名:第11回サイエンスカフェ(NPO法人化記念講演) ゲスト講師:岡田真美子氏(兵庫県立大学名誉教授) 講演タイトル:山のもったいを生かす 開催日時:2014年5月11日(日)13:00〜15:00 開催場所:はりま里山ラボ内 参加者:20名 講演内容 1.悲鳴を上げる山河 琵琶湖で赤潮発生(70年代) 九州でのセメント材料採掘による山の破壊(60年代) →開発の結果として、山崩れ、土砂災害の多発 →「痛々しい」と感じる感性 六甲三大災害(1938年、61年、95年) →急峻な地形、風化花崗岩といった脆弱な地盤 →防災も進むが、開発も進む(山腹300Mまで宅地化) 2.震災の教えた国土のいのちー草木の話す国の生命観 山も大地も不動のものという信仰(インド) →日本の山や大地は、むしろ「よく動く」 自然観 日本では、地震、台風など天然は時に甚だ峻厳・過酷 →人間の能力を遥かに超えた存在 →動物的(草木、国土、道具にいのちを感じる) →貝塚はただのゴミ捨て場ではない。ものにいのちを観ている。 →現代でも引き継がれる様々な供養(パソコン供養、はさみ供養、パチンコ供養、バレンタインチョコ供養) もったいないとはそもそもどういう意味なのか 英語には訳しにくい(too good to throw away(捨てるには惜しい)の意味だけではない) 元来は、そのものの内在的な価値であり、それが中途半端にいのちを失うことを悲しむ気持ちという意味合いが強い。 3.山のもったいーつながりの中で生きる 山誉め祭り(玄界灘志賀海神社) →山と海の繋がりがいかに大切かを昔の人々は経験から知っていた。 魚つき林の保護(たつの市室津) →科学的にも山と海の繋がりの重要性は示されている。 所感: NPO法人はりま里山研究所としては最初の集まりであること、千姫プロジェクトからの引き継ぎという意味もあり、記念講演として岡田先生にお話をしていただいた。講演前後で、理事会、総会も開催した。ソーシャルネットワークの「ひょこむ」つながりでの参加者が多かった。また岡田ゼミ卒業生の方々も数名参加され、つながりの大切さを感じさせるとてもいい雰囲気のサイエンスカフェを開催することができた。 環境倫理の話として非常に勉強になるお話であった。悲惨な様子をみて、「かわいそう」とか「悲しい」と感じる心が、人を行動に駆り立てる大きな動機となっていることを改めて感じさせられた。「もったいない」というのは、言葉ではなかなか説明しにくいし、説明してもすぐに理解できるものではないように思えた。岡田先生の説明にあった通り、「その感性は育てる」ものであるのかもしれない。 もったいないという言葉が、英語で説明するのが難しいという点も興味深い。確かに、英語辞書では、「too good for〜」で「〜には良すぎる」ひいては「もったいない」と訳すと示されている。しかし、それだけでは「惜しい」「損をした」という金銭的な意味が強い気がする。ものの価値とは人が決めるだけでなく、それ自体が持つ価値もあることも説明する必要がある。 主観的なものを、いかにして他人に客観的に伝えることができるのか、今後の環境分野の研究者や活動家の課題であると感じた。 |