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2014年05月19日(月) 

『みんなが嬉しい街おこしを目指して』
第五話「大学生だからできる地域貢献」

もともとお酒が飲めなかった泰子をいっぱしのワイン通に仕立て上げたのは、大学時代からの親友・小島妃佐子(45)だった。政夫が修行していた寿司屋のお誕生会の幹事も彼女なら、ふたりを結びつけたのも妃佐子だった。若い頃から無類の日本酒女子で、お誕生会でも純米酒を名指しで立て続けにオーダーし、ひとつひとつの酒蔵の蘊蓄まで披露するという女傑だった。蒸留酒系にはあまり強くなかったが、ワインはソムリエはだしの知識と味覚を持っていて、泰子は妃佐子についてまわるうちにワインの味だけは分かるようになったという。

「ワインの選び方は色々あるけど、最初は評判のお店でハウスワインをグラスで飲んでみること。ハウスワインが美味しいところは、大抵品揃えもよい所が多いのよ」。頼まれてもいないのに、泰子のワイン講義が始まった。「赤で渋く濃い感じのものが苦手ならブルゴーニュ系がいいわね。フランスのブルゴーニュ系なら代表的な葡萄の品種がピノ・ノワール。ジャムのような香り、バラのような香り、など花の香りにたとえられるものも多いのよ。チリやアルゼンチンなど南米系のものはリーズナブル。南国のワインは、比較的甘味があってフルーティな感じにできあがってるわ。わりと苦手な人が多いのがボルドー系のカベルネソーヴィニオン系統。同じカベルネでも南米系やイタリア系あたりは比較的飲みやすいのよ」。ほとんどは妃佐子の受け売りだけど、好きなだけあって説得力がある。講釈を述べながら赤のハウスワインを常温でグラスに注ぎ終えると、前菜を出し終えた政夫も一緒に乾杯した。

グラスを下ろすと、ひとりの女学生が前菜の花柄のプレートを指して「マスター、これはイギリスのウェッジウッドのワイルドストロベリーですよね。わたしこのシリーズが大好きなんです♪」と語る。レストランで食器を褒めてもらうのはとても嬉しいけど、最近の大学生って何者?(笑)。泰子がウェッジウッドのファンだと話すと、少し緊張していた若者たちの雰囲気が一気に和らぎ、日頃のボランティア活動の話題や大学生活のこと、恋愛感についてなど、さまざまな話しに花が咲いた。コースが魚料理に進んだ頃、出身の故郷の話題から「極点社会」がテーマになった。

「極点社会」とは、若年女性の首都圏への流出が加速し、高齢者すら現象を始めている地方自治体が増えていく中で、2040年には半数の自治体が消滅するという戦慄のシナリオだ。「さとちゃんは宮崎に帰らなくちゃね」と声を掛けられると「田舎はいい仕事があまりないし、都会で警察官になってサイバー犯罪を取り締まるのが夢だから」とさと子は応じた。動機はテレビのドラマと軽いが、警察官への憧れの信念は固い。どうやらさと子も極点社会を加速する要素のひとりになりそうだ。年老いた両親を沖縄の兄弟に任せて本土で生活する政夫と泰子には、なかなか耳の痛いやりとりだった。

さまざまな考察や意見が一通り飛び交ったところで、リーダーの古家が「若い女性の流出を止めるには、充実した子育て環境の整備、優秀な教育システム、女性が活躍できる社会と職場、住んで魅力ある地域づくり、ソーシャルキャピタルの充実、そして経済の流入と循環を実現する必要があるね」と、課題を明快にまとめた。見事という他に言葉がない。食事はメインの肉料理へと進み、議論はさらに具体的なアプローチに移っていく。この若者たちは、きちんと聞いてきちんと考え、きちんと発言してきちんとまとめ、それを自分事として展開する能力がある。バカでくだらない会議を時間ばかりかけて繰り返している大人たちに、議事の教科書として録画して見せてやりたいものだ。

「地域経済を循環させるには、地元の人が地元で消費してくれなくてはだめ。そのためには住民に信頼できる情報が圧倒的に不足している」と田中が語り「以前に仲間で『いい飲食店を紹介しよう』とソーシャルメディアで発信しようとしたけど、取材のための出費が大きく学生の分際では継続に無理があった」と失敗談を披露した。政夫は開業する前の経験として、信頼できる人からの情報しかいかにあてにならないかについて語り、クチコミを拡げる難しさについても体験を説明した。良い資源がたくさんあるのに、きちんと情報が橋渡しできていないことで、それが活かされることなく消滅していく。政夫も若者たちも、解決策を見いだそうと努力したが、議論はついに煮詰まってしまったかに思えた。その時、少しワインを飲み過ぎて赤い顔をした泰子の一言で状況は一変することとなる。

つづく

この物語は、すべてフィクションです。同姓同名の登場人物がいても、本人に問い合わせはしないでください(笑)

閲覧数430 カテゴリ日記 コメント0 投稿日時2014/05/19 05:23
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