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2014年05月23日(金) 

第九話「潜在化したリソースの可視化」

「ひょっとしていろりさんのホテルには、すごいジオラマありませんか?」。突然のフリに小寺は驚いた。「なんで君が知ってるの?」。「うちの大学には『鉄道模型サークル』という同好会があって、ぼくもその一員なんです。小さな頃から、ずっとプラモデル作ってます。メンバーのひとりが偶然『いろり夢鉄道駅づくり作戦会議』という地域SNSのコミュニティを見つけて、話題になっていたところだったんです」。それは小寺が地域SNSで、ジオラマづくりの仲間たちと交流している掲示板だった。外部公開になっているので閲覧自由、インターネットの検索で見つけることができたのだ。中西はまるで憧れのアーティストに出会ったかのように目を輝かせて小寺を見ていた。「もっとあのジオラマを前に出してホテルやお店の営業に使ってはだめなんですか。うちのサークルでは、次に合宿するなら誰かがツテを探して交渉しようということになっているんです」と続けた。

「ええよええよ、めちゃくちゃウェルカムや。今の夢鉄仲間にも声を掛けて合同でやるのもお互いいい勉強になりそうやし。凄い人たちてんこ盛りやからおもろいで。超学割プライスを用意するわ」。小寺の顔は喜びでくしゃくしゃになっていた。翌年、全国の大学の鉄道模型サークルが集まる大会を、中西のサークルが主幹事になって開催する相談にも乗って欲しいと依頼をうけた。「もうひとつお願いがあるんですが..」と中西はちょっと遠慮気味に切り出すと、新人の研修として小寺のジオラマ作成を手伝わせて欲しいという内容。小寺がNOというわけはなかった。「今日はきた甲斐があったわ♪」という一言で、すでに小寺のアイデアソンは完結してしまったことがわかった。中西のアイデアは、木多見の助言によって、より一般的なモデルとしてポストイットに書き込まれた。

さと子がファシリテートに入っているテーブルもアクティブだった。大学一年生のさと子は太鼓を持ったまま、ただただその迫力に圧倒されていた。さと子の同級生・田中真由(19)も状況は同じだった。左には若い頃から「マジシャン」と呼ばれている天才バーテンダーの柳川周平(63)、右には呉服屋さんで元商店街理事長の松岡時康(66)という強力な熟年ミドルコンビに囲まれて、目を白黒させながら二人のブレストを聴き入っていた。柳川と松岡は旧知の仲で、柳川のショットバー「CLIMB」のカウンターで着流しの松岡がテネシーウィスキーをストレートで味わう姿が、夜の街を代表する「粋な名物」のように言われていた。

「学生が飲みに行くのは居酒屋さんが多いの?」と松岡が興味本位で聞くと、真由は「私はまだ未成年なんですが、先輩たちは大人数なら居酒屋さん、少人数のときはカフェが多いみたいです」と応えた。「どうやってお店を決めるんだい?」と柳川が訊ねると「いつも同じようなところが多くて。経済的なこともあるんですが、たまには違う雰囲気を味わいたい気持ちはあります。でもあまり情報がないので、やっぱりいつものお店(笑)」と真由は苦笑した。「学生は大学で毎日出会っているから、クチコミで横の情報ネットワークが充実していると思っていたのに、ぼくらとと同じように地元情報については結構過疎なんだ。柳川さんのような素晴らしいバーテンダーが街にいるのに、とてももったいない!」と松岡がつぶやいた。

「いえいえ、バーなんてとても学生の分際で立ち入ることなんてできませんよ~」と自嘲気味に語る真由に、柳川は身を乗り出して話し始めた。「バーというのは、そんなに敷居の高いお店じゃないよ。気軽にふらりと立ち寄って、粋な会話を肴に軽く一杯やっていくところなんだ。特にウチではワンドリンク500円で400種類以上のカクテルを提供しているし、なんなら16000種類のレパートリーの中から、真由ちゃん専用のカクテルをアレンジしてあげようか。君みたいなかわいい美人が店に来てくれると、お客さんも喜ぶだろうな~」。最後の言葉には、ちよっとだけ中年おじさんが混じっていた(笑)。

「すごぉ~い♪」。脇で聞いていたさと子が喚声をあげた。大人の事情で大きな声では言えないが、どうやらそこそこ飲めるクチらしい。「おじさん、私も真由ももうすぐ二十歳なので、一緒に行ったらお祝いにピンチョス付けてもらえますか!」。若い娘はおねだりが上手だ。おじさんたちはこういうパターンに滅法弱い。柳川の脳裏には、彼女たちの成人祝いのためにと腕によりを掛けて作る自慢のスペイン料理のイメージが駆け巡っていた。「新しくお姫様セットなんてメニューを作って特別にプレゼントするよ」という言葉に、娘たちはハイタッチではしゃいで「嬉しいです。友達どんどんつれていって拡げますね♪」と約束した。「ふたりとも、彼氏と一緒なら、経済的問題はクリアできるんじゃない」と松岡が入れ知恵をすると、さと子と真由の笑顔が少し曇った。素早くそれを見取った松岡は、近いうちにふたりに地元のいい青年を紹介してあげようと、いつものお節介を心に決めた。

つづく

この物語は、すべてフィクションです。同姓同名の登場人物がいても、本人に問い合わせはしないでください(笑)

閲覧数674 カテゴリ日記 コメント0 投稿日時2014/05/23 04:41
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