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2017年01月11日(水) 
ドイツ観光の目玉といえば、ハイネの詩にも歌われたライン川のローレライと、バイエルン王国の狂人めいたルードヴィヒ2世が建てたノイシュヴァンシュタイン城が双璧だろう。

そのノイシュヴァンスタイン(白鳥城)の近くにあるM社はもう30数年来、夫の会社の顧客である。

年末に夫が、既に退職している親しい元社員に挨拶のために電話すると、年金生活をおくっている元同僚10人ほどが1月5日に新年会を兼ねてオーストリアのインスブルックに「遠足」に行くので、参加しないかという誘いを受けた。

北チロル州のインスブルックはバイエルン州の南方で、彼らが住む地域からは列車で2時間20分の距離にある。

なんでそのインスブルックへ出かけるかというと、最近できた歴史館の、とくに19世紀初めにチロル地方とバイエルン王国の間で繰り広げられた戦争の絵が評判なので、それを見に行くのが主な目的だという。

「チロルのパノラマ」というその歴史館は大きな円形で、上階の内壁にぐるりと壮大な戦闘風景が展開され、なかなかの見ものなのだそうだ。

その戦闘画を見に、バイエルンからインスブルックへ。

いくら絵が評判でも、昔の敵のところへその敵が描いた壁画をわざわざ見に出かけるって、変じゃない?

日本と韓国の戦争の絵を見に、日本人が韓国を訪ねるか?

しかしちょっと考えてから、バイエルン人とチロル人の違いは日本人と韓国人との差とは全く異なり、むしろ、例えていえば会津の人間と長州・薩摩の人々との違い程度かもしれないと気づいた。

いや、それよりもさらに近い関係にあるかもしれない。歴史的にはもちろん、文化人類学上もこれらの二つの地方の人々には共通点が多い。オーストリア皇室もバイエルン王室とずっと親戚関係にあったし。

それはともかく「だからインスブルックに行こうよ」と夫が言うのには、ウーン、と悩んでしまった。

なんで正月早々、そんな雪深いチロルになんか。それでなくても南ドイツで震えているのに、もっとガチガチ震えに出かけるの?

だけどすぐに考えなおした。

インスブルックには2003年から2005年にかけて3回ほど行っているが、2回は夏で日本からの親戚の観光案内だった。

これがもうひどい客人で、景色や文化や歴史などには目もくれず、一人はスワロフスキーだのエスプリだのとファッションにうつつを抜かし、もう一組は朝から晩まで食べものの話ばかりしている。

2004年には夫の業界の行事で行ったので、昼間は一人好きなように動けたが、4月とあって中途半端な気候で、町にまだ雪が残っているし、森は枯れ木ばかり。

しかし、インスブルックと聞いて私がまず連想するのは、当時も今も、1964年の冬季オリンピックである。というか、その開催時に私は初めてインスブルックという名を聞いたのだった。

1964年といえば日本のウィンタースポーツのレベルはかなり低くて、覚えているのは福原美和というフィギュアスケートの選手が、メタルには届かなかったものの5位だか6位だかの入賞を果たしたことだ。

そもそも私の記憶に残る冬季オリンピックの最初がインスブルック大会で、開会前にラジオを聞いていると、地元の新聞が福原選手について「東洋の若き女性がその微笑で私達を魅了する」と書いたと言っていた。

この福原選手、ちょっと申し訳ないが、美女とは言い難く、さらに足も太くて、スタイルが当時のヨーロッパ人はもちろん今の日本人に比べてもかなり・・・

オーストリアの新聞のソツの無さには感心した。

ところで今回知ったのだが、福原美和さんは資生堂の創始者の娘さんなのだそうだ。スケートって、やっぱりお金持ちの子女でないと無理だったのね。

それから10年余りたった1976年、札幌オリンピックの次にまた冬季オリンピックがインスブルックで開催された。

社会人になっていた私は「あれれ?どういうこと?」と思いつつ、それにかまけてはいられない状況だったので忘れていたのだが、これも今回調べたところ。

実はアメリカのデンバーでの開催予定が、予算を大幅に上回る費用や環境破壊の問題で、デンバー市が開催地を返上したのだとか。

困ったIOCは、既に設備が整っていて受入れに肯定的なインスブルックに再度開催地となってくれるよう要請したのだという。

ふむふむ。それは賢い。ということは、20年の東京オリンピックも余りに費用がかさむので返上して、例えば2004年に使ったアテネの施設を再利用したっていいじゃない?ギリシアのどん尻の経済にも貢献するだろうし。

そもそも、オリンピックのために造った建物がその後も有効に利用されているかどうか、大いに疑問である。

長野のスポーツ施設だって、維持費が膨らんで県や市が悲鳴をあげているというではないか。他の国々でもこの種の諸施設はカネ悔い虫の重荷になっているらしい。

英語でフォリー(folly)という言葉があって、これは「愚かさ」とか「愚行」という意味だが、もう一つ、莫大な費用をかけて造った役立たずの建築物のこともフォリーという。

日本語では「阿房宮」と訳されているのを見たことがある。本来の「愚」という意味から「あほう」という言葉を引っ張りだしてきたのか、なかなか名訳だ。

で、世界中にこの「アホ」な建物が散在している。

しかしインスブルックの名誉のために言っておくと、ここはさすがに欧州各地からリゾート客が集まるだけあって、かなり頻繁に利用されているようだ。

そしてジャンプ台なども、景観を損なわないようにうまく考慮されている。

というわけで、冬のインスブルックに私はちょっとタイムトラベルをしてみたのだった。

写真1.は歴史館の内壁に張り巡らしたカンバスに描かれた戦闘図

写真2.はインスブルックの遠景。右手の長い建物が氷上スポーツセンター

写真3.はスキージャンプ台。ジャンプ選手は遠くにアルプスを見ながら、インスブルック旧市街に向かって飛び出す。

閲覧数856 カテゴリ日記 コメント18 投稿日時2017/01/11 03:22
公開範囲外部公開
コメント(18)
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  • 2017/01/11 21:35
    > ベッガさん
    > ペギー・フレミングがクロード=キリーと雪の上で踊り舞う

     ぜひ観たいと思い探したのですが、見つからなかったです。

    ・Peggy Fleming 1997 Carlo Fassi Tribute [Ave Maria]
    https://www.youtube.com/watch?v=EPKxL8w1R5I
    次項有
  • 2017/01/11 22:02
    鉛筆ベッガさん
    > 南総の寅次郎さん
    私はいたく感激したのですが、メディアでは特に大きな話題にはならなかったようです。今とは時代が違いますからね。

    キリーがスキーを履いて踊るのがとても面白かった。本当に「白い恋人たち」でした。
    次項有
  • 2017/01/11 16:41
    鉛筆ベッガさん
    > くちべにがいさん
    くちべにがいさんは私より多分大分お若いので、1964年の東京オリンピックのご記憶もないのでは?

    インスブルックは春から秋にかけては本当にきれいなところです。有名な観光スポットの一つに「黄金の小屋根」というのがあります。今回も一応見に行ったら、小屋根の半分は雪で覆われていました。
    次項有
  • 2017/01/11 11:06
    zosanさん
    インスブルックのシャンツェは建物ぎっしりの中心街目指して飛ぶのでとても怖いのだそうです。実際にここで飛んだ選手のどなたかの話として新聞だか雑誌だかに載っていたのを見た記憶が有ります。
    上から下を見てみたいものです。
    次項有
  • 2017/01/11 16:54
    鉛筆ベッガさん
    > zosanさん

    あ、それ分かります。

    インスブルックの旧市街には写真のような凱旋門があり、シャンツェはその少し左斜め後ろなので写真には写っていませんが、この門を挟んでシャンツェの真正面にアルプス山脈が広がっています。

    上から下を見てみたいと同時に、そこから見たアルプスの壮観を想像すると、選手は怖いだろうけど、同時に羨ましいですね。
    次項有
  • 2017/01/11 21:57
    はい。実家にカルピスでもらったソノシートがあります。
    国語の教科書に最後まで走った「ゼッケン67」のカルナナンダ選手の話が載っていました。オリンピックの映画は見たことがあります。
    次項有
  • 2017/01/11 22:17
    鉛筆ベッガさん
    > くちべにがいさん
    あー、そういう話、ありましたね。それが教科書に?知らなかったわ。

    東京オリンピックの映画、市川監督ですね。当時はなんだか前衛的でピンとこなくて、その前のローマ・オリンピックの記録映画の方が「記録」として馴染みやすかったけど、今見るときっと違う印象を受けるでしょう。

    そうだ、忘れるところでしたが、私が全く覚えていない56年のオリンピックでアルペンスキー三冠王になったトニー・ザイラー。この人、美男子なので俳優として来日していますが、彼がチロル州の出身なんです。

    今やトニー・ザイラーを知る人は、このブログでは、zosan、寅次郎さん、それからろれちゃんくらいかな。

    写真はトニー・ザイラー。共演は、オーストリア人とのハーフの鰐淵晴子です。ご存知?
    次項有
  • 2017/01/12 08:17
    > ベッガさん
    > 私が全く覚えていない56年のオリンピック…

     コルティナダンペッツォ冬季オリンピック、よく覚えています。このときの回転で猪谷千春が銀メダルを獲得し、日本人初の冬季オリンピックメダリストになりました。
     そうですか。トニー・ザイラーはチロル出身でしたか。
     「白銀は招くよ」の主題歌、懐かしいな。

    ・Ich Bin Der Glucklichste Mensch Ayf Der Welt -Toni Sailer
    https://www.youtube.com/watch?v=_3czHNVOaMw

     鰐淵晴子の「ノンちゃん雲に乗る」、小学生の頃、学校から引率され、列を作って見に行きました。
     当時、子どもが映画を見るなんて滅多になかった。
    次項有
  • 2017/01/12 16:39
    鉛筆ベッガさん
    > 南総の寅次郎さん
    「ユキノヤーマハ トーモダチ」って映画の主題歌は私も覚えています。

    そのややこしい名前のイタリアの地で開かれたオリンピックの時は私はまだ小学2年生、テレビもなかったし、覚えているはずはないですが、猪谷千春という名はその後聞きました。寅次郎さんは小学校6年生?だったら記憶に残っていますよね。

    だけど私も1956年のメルボルン大会は覚えていますよ。これ、ひとつには、このときバタフライで銀メダルを取った石本選手が私と同郷の人だったから。

    「ノンちゃん雲に乗る」は、私も学校からみんなで行きました。どんな話だったか。あとで聞くと原節子がお母さん役だったそうで。

    ちなみにザイラーっていうのはザイル(綱・ロープ)職人という意味で、オーストリアには多い苗字です。

    (ヴァーグナーはヴァ―ゲン[馬車]職人、シューマッハは靴造りで、ベッカーはパン屋、バウアーはずばり農夫。)

    ところで次期大統領のトランプはどういう意味なんだろう。この人のお爺さんがドイツからの移民で、その出身地はうちの亭主の田舎の近くです。

    同郷とか知り合いとか、この年になると「Die Welt ist klein(世界は小さい/世間は狭い)」ってつくづく思いますね。同世代で共通の思い出もどんどん増えるし。
    次項有
  • 2017/01/13 19:36
    父と母がデートしてトニーザイラーの映画を見たそうです。
    父は全くスキーに興味はなく母の好みに合わせたのだろうと想像がつきます。そこで父がひとこと「こういう髪の毛の男は禿げるよ」。
    当時薄毛だった父の唯一の感想だったとか。
    次項有
  • 2017/01/13 19:56
    鉛筆ベッガさん
    > くちべにがいさん
    ワッハッハ、見事に当たりましたね。

    でも欧州の人は3人に2人くらいの割合で禿げてますよ。そして禿はちっとも悪いことではないらしい。だって、6割・7割の男性が禿げてたら、それを嫌っても仕方ないですものね。

    ただ、容貌に禿げ頭が合っているかどうかがポイントなんでしょう。

    ザイラーの場合は甘いマスクにちょっと似合わないとこが残念でしたね。ドロンとかも、禿げたらお気の毒。

    私ジーン・ハックマンが昔から好きで(近年見かけませんけど)、この人は禿の模範だと思います。
    次項有
  • 2017/01/15 17:26
    鉛筆ベッガさん
    Mississippi Burningってこわーい映画ですよね。秀作だと思うけど、今の私は全編を見るエネルギーがありません。

    先日Ladies in Lavenderというイギリス映画を見たんだけど(「八月の鯨」に似て、海辺の村で静かに暮らす老姉妹の話ですが、そこに若い音楽家が加わている点が違う)、100分の長さのこういう穏やかな映画が限界です。

    ジーン・ハックマンは80年代の終わりに見たAnother Womanも良かった。ローラ・ジーンズ主演でちょっとシチメンドクサイ映画、だけど当時は私にも人並みに女性としての悩みがあったので、共感を抱いたのですが、今見たらどうかなあ。

    勧善懲悪でメデタシ・メデタシだとやはり後味がいいですね。すぐ忘れられるのもありがたい。
    次項有
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