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2017年02月13日(月) 
先日読んだフランスの金融・経済新聞レゼコー(les Echos)に、ちょっと笑ってしまう記事があった。いやその短い記事の意図は真面目なのだけれども、そこに引用されている言葉が傑作なのだ。

記事は英国の経済界に関するもので、世界の四大会計事務所の一つであるEY(元はアーンスト&ヤングといったが今はそうは呼ばないらしい)が行ったアンケート結果が報告されている。

それによると、昨年末に英国の外国企業254社の経営者に「EU離脱を受けて資本を大陸に移すとしたら、どの国にしますか」というEYの質問に、ドイツと答えた企業が一番多かったという。

その次がオランダで、フランスは三位だったそうだ。ついでに四位はアイルランド。

トランプの大統領就任で多国籍企業にはさらに不安の種が増えた。彼らの富の増減を大きく左右する為替率の変動も予測不可能。

興味深いことに、これら多国籍企業がドイツを選んだ大きな理由はその政治が安定しているためで、英国を離れるとしても必ずしもEU離脱が原因ではなく、欧州市場の不確実性と政治の不安定の方がもっと深刻な問題だと経営者たちは答えたそうだ。

つまりそれらの点で目下のフランスは、安心できる政治状況を提供できるわけでなく、財政状況もあまり好ましくはなく、行政官庁も効率がいいとは言えない、ということだ、とEYは結論付けている。

そんなニュースのどこが面白いかって?

実はこの記事、「最後に勝つのはいつもドイツだ」という文章で始まり、英国の往年のサッカー名選手ゲイリー・リネカーのこの台詞は経済にも当てはまる、と言っている。

私はそんな台詞もその発言者のことも知らなかったので調べたところ、これは1990年のサッカー世界選手権大会の準決勝で英国がドイツに敗れた際のコメントなのだそうだ。

全文はこうなっている。

「サッカーは単純なゲームさ。22人の男たちが90分ボールを追いかける。そして最後にはいつもドイツが勝つ。」

実際はいつもドイツが勝つわけでなく、2014年の優勝は久々の快挙だった。しかし1990年にリネカー選手にそう言わせただけあって、英国を破ったドイツは決勝でアルゼンチンを下して優勝している。

レゼコーの記事はちょっと捨て鉢な感じもして、フランス人にしては可愛げがあると思う一方、私はこのリネカーという選手のセンスに多いに感じ入った。まさに優雅な敗者だ。

英国人のユーモアは良く知られているが、私が好きなのは、彼らが自分のことを笑えるという点である。つまり、精神に常に余裕があるのだ。

その例として記憶に残っているのは、確か吉田健一氏のエッセイで言及されていたと思うが、チャーチルが戦時中に言ったという台詞だ。

首相官邸で空襲警報を聞き、ガウン姿で慌ててヘルメットを被って二階から降りて来る途中、鏡に映った自分の姿を見て、下で待ち構えている部下に「君、戦争というものは、人間を実に滑稽な姿に変えるのだね」と言ったそうだ。

こういうゆとりや笑いのセンスは、残念ながらドイツ人には期待できない。

何かの本で、世界で一番薄い本はベルギーの歴史とドイツ人のユーモア話と読んだことがある。

ベルギーという国家の誕生は1830年だから、新大陸のアメリカ合衆国などよりずっと新しい。

(ついでながら、そのとき現在のベルギー内では適当な人材が見つからなかったようで、国王はドイツから連れてきた。といってもベルギーは別に恥じる必要はない。お隣のオランダを見よ。ベアトリックス前女王もその母親のユリアナ女王も、さらにその前のウィルヘルミナ女王も、王配は全員がドイツから婿入りしているではないか。)

ベルギー、オランダの話はともかく、ドイツ人のユーモアの件は面白いと思ったので夫にそれを言うと、彼は「それはドイツ人への偏見だ」とふくれっ面をした。

ほーら、そうやってムキになるところがバカにされるのよ。アハハ、そうだね、って笑わなきゃ。

閲覧数797 カテゴリ日記 コメント8 投稿日時2017/02/13 02:49
公開範囲外部公開
コメント(8)
時系列表示返信表示日付順
  • 2017/02/13 10:08
    国民性と言うのはありますね、ドイツが安定してしっかりしてるのは真面目な国民性で、日本人とも似てるそうですが。ユーモアに欠けるところもでも。日本人もいろいろ言われながら責任感が強いので結局はあてになる民族だと思います。
    次項有
  • 2017/02/13 20:38
    鉛筆ベッガさん
    > ろれちゃんさん
    今欧州で一人勝とかいって妬まれているドイツ人、そのことに何かうしろめたさしさを感じている風でもあって、「全然真面目一辺倒じゃないんだよ、俺たち結構適当なんだよ」とアピールしたがっていますが、いかんせん、欧州の他の国の不真面目さ、いい加減さが半端じゃないので、少々力を抜いても、うさぎみたいに途中で昼寝しても、やっぱり一番でゴールしてしまう。

    これに関しては、ドイツが悪いわけじゃない、と擁護したくなります。

    あ、スイスにはかないませんけど、EUじゃないし、最初から勝負は挑まない。向うも相手にしない。
    次項有
  • 2017/02/13 10:47
    zosanさん
    ドイツ人のユーモアについては全く分かりませんが、ドイツ人は我慢強い。

    DBに乗ってみればそれが良く分かります。
    列車がいくら遅れようが、途中で打ち切りになろうが、職員に食ってかかる人を見たことが有りません。
    次項有
  • 2017/02/13 20:47
    鉛筆ベッガさん
    > zosanさん
    それ我慢強いっていうんでしょうか。

    航空会社、郵便、鉄道、どんなに変な理由でストしても市民は怒らない。一度TVレポーターが乗客にマイクを向けて、「困りますねえ、これじゃ」というと「でもストは労働者の権利だから仕方ないわね」って言っていました。

    それ聞いて、あ、この人も公務員か私企業の社員か知らないけど、気に入らないことがあるとすぐストやる連中の一人なんだ、と思いました。

    列車が遅れるのが機関士・駅員の怠慢の所以であっても(と言うより、明確に彼らの怠け癖、仕事嫌いが原因なのですが)、乗客のみなさんも自分の職場ではチンタラいい加減に仕事しているから、働きたくない人達に理解があるのですよ。

    まあ、そういう意味では、自分は怠けながら他人の不効率を責める、というのとは違って、一貫性があるとは言えますが。
    次項有
  • 2017/02/13 21:55
    > ベッガさん
    > 乗客のみなさんも自分の職場ではチンタラいい加減に仕事しているから、…

     それでも、日本を上回る強い経済力が維持できるのは何故なんでしょうね。
    次項有
  • 2017/02/13 22:43
    鉛筆ベッガさん
    > 南総の寅次郎さん
    負けてる欧州諸国が最大市場で、かつ地理的に近いことが大きいでしょうね。裕福なベネルクス、北欧、スイス、オーストリア、どこも自動車作っていませんし、各種機械の生産もごく限られていますし。(北欧はスウェーデンのボルボがあるけど、今これは中国資本です。)

    二番目が中国市場で、これに関しては日・中の不和を徹底的に利用してきた。ドイツ政府は中国に対してだけは、どんなに非人道的なことをしても決して非難しない、だって、命綱だから。日本はドイツにたてるべき義理は今やまったくありません。

    あと、余り知られていませんが、防衛産業の繁栄も。兵器輸出高は世界三位です。買ってくれるならどの国でもOKとばかり兵器・武器をせっせと輸出して戦争に加担し、それで「難民」を受け入れて人道主義を説く。これはフランスも同じ、というより、こちらは今産業不振で貧乏している分、兵器製造・販売にはますます力を入れています。

    (フランスも工業が低調なわりに貧乏臭くない、などという人もいますが、フランスと英国の場合には植民地時代に稼いだ富が半端じゃないので、その貯金でやっていける部分もあります。それを使い果たしてからが、本当の勝負でしょうね。)

    ちょっと欧州を覗いただけの海外特派員がどういうか知りませんが、実際にドイツの町に住み、そこの役所や郵便局や鉄道駅の人々の仕事ぶりを見れば、たいていの日本人は唖然としますよ。

    午後6時閉店のところへ5時45分に入ると、ほとんどの店で店員に舌打ちされるか、明日にしてくれ、といわれます。

    郵便配達員は時間が来ると仕事をパタリと止め、残った郵便物を自宅に持ち帰り、いつの間にか紛失してしまうことも。友人が、送ってもらった速達書留のパスポートの行方が分からず調べたら、配達員がバッグに入れて遊びに行ってた。
    次項有
  • 2017/02/17 14:56
    zosanさん
    > ベッガさん
    我慢と言って悪ければ物分かりが良い・・・?

    自分がサボリマンであっても人のサボリは気にかかると言う人は多いけれど、自分がサボリマンだから人のサボリに理解があると言うのはエライ・・・
    次項有
  • 2017/02/17 16:00
    鉛筆ベッガさん
    > zosanさん

    そうですね。それと、列車が遅れて誰かに迷惑がかかる、誰かを長く待たせる、などということがあまり気にならない、鈍感な国民とも言えますね。いま日本には「鈍感力」という言葉があるそうですが、欧州の人を見習うべきかもしれません。
    次項有
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