変異型ウィルスとGoToトラベル(金澤和夫副知事)
2021年02月15日 07:52
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いつも新型コロナについて書いていますが、できる限り「データに基づいて」考えることを心掛けています。
理由はいくつもありますが、最大の理由は、コロナについてはまだ「わからない」ことが多すぎることです。 ウィルスの性質や感染防止のポイントなどに関して、さまざまな情報が流れ、専門家の説も紹介されますが、検証されていない「仮説」段階のものも多いと思われます。そのまま鵜呑みにはせずに、最新の時点で得られるデータをしっかり確かめる必要があると感じます。 一つの例は最近よく取り上げられる「変異型ウィルス」。 「英国型」の変異ウィルスは、昨年12/19に英国保健大臣の下院での報告をきっかけに知られるようになったもので、「感染力が(最大)1.7倍」と発表されました。兵庫でも、この英国型変異ウィルスの感染者が見つかったとの報道を目にして、心配されている方も多いのではないでしょうか。 しかしこの「感染力」が本当のところどの程度強いのかは、まだ検証の途上です。 確かに、英国では昨年12月から今年1月にかけて感染が急増。人口10万人当たりの新規感染者数(1週間平均)でみると、12/4の21.2人/日をボトムに、ピーク(1/10)には88.6人/日まで増加しました。これはひょっとしたら、変異型ウィルスのせいかも知れません。 しかし、英国でもその後は沈静化して、2/14には20.6人/日まで戻っています。決して「感染爆発」はしていないというのが事実です。 現時点の他国との比較でも、 英国(2/14) ~ 20.6人/日 米国(2/13) ~ 32.8人/日 イタリア(2/14) ~ 20.2人/日 スペイン(2/13) ~ 34.9人/日 フランス(2/14) ~ 19.9人/日 スウェーデン(2/13) ~ 29.0人/日 英国が特に突出した感染拡大を起こしているわけではないことがわかります。 ちなみに、変異ウィルスの影響を受けていない日本でも、同じ期間に、 (12/4)1.8人/日 ⇒(1/10)4.6人/日 ⇒(2/14)1.2人/日 となっており、感染拡大⇒沈静化という経過をたどりました。 また、別のタイプの変異ウィルスが報告されている南アフリカでも、 (12/4)5.4人/日 ⇒(1/12)(ピーク)32.5人/日 ⇒(2/14)4.0人/日 で、一度は急増しましたがその後沈静化しています。 確かに、変異型ウィルスに関しては、死亡率への影響や、ワクチンの効き目への影響など、まだ確認されていない懸念要素があります。ただ、感染力に関しては、これまでのデータによる限り、変異型ウィルスは「要注意」ではあるものの、社会全体が過敏になるほどの危険性を持ったものではないように思われます。 もうひとつの事例は、「Go To Travel」です。 2月10日に、観光庁がこのキャンペーンの利用者数を発表しました。 Go To Travelは、開始が7/22、10/1から東京発着が対象になり、12/28に停止となりました。 ここで、各月のキャンペーン利用者数と、新型コロナの新規感染確認数とを並べてみます。 7月利用者 214万人泊 ⇔ 7月感染確認15,779人 8月利用者 1,349万人泊 ⇔ 8月感染確認33,493人 9月利用者 1,418万人泊 ⇔ 9月感染確認15,157人 10月利用者 2,206万人泊 ⇔ 10月感染確認17,428人 11月利用者 2,565万人泊 ⇔ 11月感染確認47,065人 12月利用者 1,029万人泊 ⇔ 12月感染確認83,756人 日本で第3波の感染拡大が始まったのは、10月末頃からです。 10月1日の東京発着拡大と関係しているかは微妙なところですが、少なくともそれ以前、9月までの間に3千万人泊近くの利用者がありながら、特に感染拡大が生じたように見えないということは、事実として押さえておくべきだと思います。 以前、Go To Travelについては「感染拡大の原因としての疑い希薄」、Go To Eatの方は「疑い濃厚」と書きましたが、このデータを見る限り、やはり「トラベル」は無実の罪を着せられているような気がしてなりません。 |