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【報告】(2025/07/10)第30回「大好きな映画を語り合う会-鬼畜」
2025年07月10日 16:52
「大好きな映画を語り合う会」第30回レポート
松竹映画『鬼畜』をめぐって語られたこと

2025年7月10日、第30回となる「大好きな映画を語り合う会」が開催されました。今回の作品は、松竹映画の名作『鬼畜』(1978年公開/監督:野村芳太郎)です。参加者それぞれに、作品に対する思いや感想、制作背景の深掘りなど、多面的な語り合いが行われました。

■『鬼畜』という作品について
今回取り上げた『鬼畜』は、松本清張の短編小説を原作にした作品です。社会の陰に生きる人間たちの葛藤を描いたサスペンス・ヒューマンドラマであり、同時に「親とは」「家族とは」という根源的な問いを観客に突きつけてきます。

映画では、印刷会社を営む主人公・竹中宗吉(演:緒形拳)が、かつて愛人との間にできた3人の子どもたちを、妻(演:岩下志麻)に内緒で引き取るものの、やがて経済的にも精神的にも追い詰められ、子どもたちを次々と手放していくという壮絶な展開が描かれます。

■解説と考察
今回の会では、映画鑑賞後に和崎京子さんが全体の進行と解説を務めてくださいました。和崎さんはまず、映画の制作過程について触れ、監督・野村芳太郎の演出スタイルや、脚本を手がけた橋本忍の構成力に注目しました。

俳優陣の選定については、宗吉の妻役に岩下志麻、愛人役に小川真由美という名優が起用されたことにより、物語の感情的厚みが格段に増していると評価。岩下志麻の冷徹で毅然とした演技と、小川真由美のどこか弱く、しかし切実さを滲ませる演技の対比が、家庭と外の女性という二つの「母」の姿を際立たせていました。

また、坪田さんは原作と実際の事件の関係性にも言及。もともと松本清張の原作は、実在の養育放棄事件をモチーフにしており、それを映画化する際、脚色のなかでドラマ性が強められた点にも注目が集まりました。特に、原作では描かれなかった子どもたちの視点が強調されたことで、観客にとっての「当事者性」が強く感じられる構成になっているという指摘は、多くの参加者の共感を呼びました。

■演技と音楽、そして「子どもたち」の存在
会話の中でもっとも議論が盛り上がったのは、子どもたちの演技についてでした。3人の子ども役には、いずれも当時無名に近い子役たちが起用されており、特に長男を演じた少年の自然なセリフ回しや、ラストシーンにおける視線の動きには、観客の多くが胸を打たれたようです。

吉田さんは「子どもが泣く演技、嫌がる演技というのは、演出に頼りすぎると不自然になるが、『鬼畜』ではむしろ、子どもたちの“反応”のリアルさに支えられていた」と述べ、作品全体の「重み」がそこに宿っていることを強調しました。

また、音楽についてもコメントがありました。決して過剰な演出ではなく、場面の情緒や人間の内面に寄り添うような抑制された使い方がされており、かえって観る者の感情を揺さぶる効果を持っていたという意見に、うなずく参加者も多く見られました。

■「鬼畜」というタイトルが問うもの
さらに、この会ではタイトルの意味についても多角的に考察されました。「鬼畜」という言葉は、宗吉が行った行為を指すにはあまりに苛烈であると感じる一方で、それでも子どもたちに対して責任を果たせなかった事実は重く、善悪の単純な二元論では捉えきれない人間の矛盾がそこにあるという声が挙がりました。

参加者の一人は「この映画は、主人公を断罪するための物語ではなく、私たち自身の“親としての未熟さ”や“他者への想像力の限界”を浮き彫りにする鏡だ」と語っており、映画を「他人事」としてではなく「自己を省みる素材」として受け止めていた姿勢が印象的でした。

■次回予告と今後の予定
最後に、次回の映画の会の予定が共有されました。次回は2025年9月4日(木)に開催予定で、鑑賞作品は一転して華やかで音楽あふれるミュージカル映画『ラ・ラ・ランド』が選ばれました。会の時間帯は14時〜16時ごろを予定しており、詳細については和崎さんより追って各参加者にご連絡があるとのことです。

■おわりに
『鬼畜』という重厚で問いの深い作品をめぐって、今回は演出や俳優論にとどまらず、「親と子」「社会と個人」「赦しとは何か」といった深いテーマにまで話が及びました。映画を通して語り合うこの場の力は、単なる感想共有の枠を越え、参加者それぞれが自身の人生や価値観を照らし合わせる機会となっています。

次回の『ラ・ラ・ランド』ではまた、色彩と音楽が紡ぐ夢のような世界の中で、別の角度から「人生とは何か」を語り合えることが期待されます。

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