第30回「草花を愛でる集い」レポート
― 小さな森を手のひらに『苔テラリウム3』 ―
2025年8月9日(日)、姫路市西今宿の「みんなの秘密基地」で開催された「草花を愛でる集い」第30回は、人気企画『苔テラリウム』の3回目。10名の参加者が集まり、夏の午後に小さな森づくりに没頭しました。
「草花を愛でる集い」は、市民花壇の植栽や山野草ハイキング、手柄山温室植物園での生態観察など、自然と親しむ活動を毎月積み重ねてきたシリーズ。今回で30回目を迎え、節目となる回にふさわしく、参加者の表情には期待感が満ちていました。
■ 講師は里山の語り部
今回の案内役は、Jターン活動クリエーターの末兼覚(すえかね さとる)さん。兵庫県佐用町のご実家の里山で採取した、ヒノキゴケ、タマゴケ、スギゴケなど、個性豊かな苔をたっぷり用意して登場です。
苔は、日本の湿潤な気候に適応し、森の木陰や岩場、川沿いなど様々な環境に息づく植物。花を咲かせず、胞子で増えるその姿は、まるで時を忘れた小さな精霊のよう。末兼さんは、苔の種類や特徴、採取後の管理方法、テラリウムでのレイアウトのコツなどを、冗談を交えながらわかりやすく解説してくれました。
■ 「苔テラリウム」という小さな宇宙
テラリウム(Terrarium)は、透明なガラス容器の中に小さな自然景観を閉じ込める園芸手法。19世紀のロンドンで、探検家が遠方の植物を輸送・保護するために編み出した「ウォードの箱」にルーツがあります。
苔を使ったテラリウムは、多肉植物や熱帯植物のテラリウムとはまた違った魅力を持ちます。苔のしっとりとした質感、緑のグラデーション、光を受けた際の柔らかな輝き。容器をのぞき込むたび、まるで森林浴をしているかのような心地よさが広がります。
苔は比較的育てやすく、水やりも霧吹きで軽く湿らせる程度でOK。四季を通じて美しい緑を保つため、室内の癒しインテリアとしても人気です。
■ 作業開始 ― 参加者は“創造主”に
今回、用意された直径12cmの容器や持参のガラス瓶に、苔や小石、流木、ミニチュアフィギュアなどを配置し、自分だけの景色をデザインします。
まず底に排水層として小石や砂を敷き、その上に湿らせた土を重ね、苔をピンセットで丁寧に配置。苔の種類によって背丈や色合いが異なるため、「前景・中景・後景」を意識しながら立体感を出していきます。
ある参加者は、タマゴケの丸いフォルムを主役に、流木と小人のフィギュアを配置して“森の住人の村”を表現。別の方は、ヒノキゴケを高低差をつけて植え、苔の丘と小川をイメージした作品を仕上げていました。
解説の時間はほどほどに、気づけば会場全体が集中モード。ピンセットの先に全集中し、まるで自分が自然の創造主になったかのような時間が流れます。
■ 心に残る感想
完成後の交流会では、それぞれの作品を見せ合いながら和やかな時間が過ぎていきました。
参加者のひとりは、
「今日は、末兼 覚さんをお迎えしての『苔テラリウム』ワークショップ。ENGAWAでの開催は今回で3回目になります。ヒノキゴケ、タマゴケ、スギゴケ…豊かな表情を見せる数々の苔と、愛らしいミニチュアフィギュアをご用意いただきました。さらに、ワークショップの後には、みえちゃんの紙芝居という嬉しいサプライズも。完成した苔テラリウムは、これまでで一番のお気に入りになりました。」
と語ってくれました。
■ 苔とともにある暮らし
苔テラリウムは、作った瞬間がゴールではありません。日々の観察、水やり、光の加減の工夫を通じて、少しずつ育っていく“緑の風景”との対話が始まります。数か月後には、苔が新芽を出したり、小石の隙間に小さな胞子体が伸びていたりと、ゆっくりとした変化が訪れます。
「草花を愛でる集い」では、こうした植物との持続的な関係を大切にしています。単に作って終わりではなく、植物とともに暮らし、その命の営みに心を寄せる時間。それこそが、この活動の醍醐味です。
■ おわりに
第30回という節目を迎えた今回のワークショップは、参加者の笑顔と熱中ぶりが印象的でした。苔という控えめな存在が、手のひらサイズの世界でこれほど豊かな表情を見せること。そこには、自然の奥深さと人の想像力が融合した、唯一無二の魅力があります。
次回の「草花を愛でる集い」は、2025年9月3日(水)14時から、姫路市立手柄山温室植物園(姫路市手柄93番地)で、朝井健史さん(姫路市立手柄山温室植物園 副園長)に講師をお願いし、姫路市の花である「サギソウ」の生態や栽培について、ライフワークとされている研究のおいしいところをお話しして頂く予定です。
また新たな草花との出会いと物語が生まれることでしょう。