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(2025/09/29)後期生涯学習論第2回目授業の録画と要約
【返信元】 (2025/09/29)後期生涯学習論第2回目授業について
2025年09月30日 05:20
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大阪産業大学 2025年度秋学期「生涯学習論」第2回講義報告書 実施日: 2025年9月29日(月) テーマ: 「生涯学習」と「生涯教育」 担当教員: 和崎 宏 教授 講義動画URL: https://youtu.be/JK2Ducd86QI 本講義は、「生涯学習」をテーマに、個人と社会、そして現代社会における技術革新と文明の変化という、多角的な視点から「学び続けること」の意義を深く考察する内容であった。特に、前半ではレポート作成に関する具体的な指導と学生の学びの事例共有、中盤では文明論と情報技術の進展、後半では「生涯学習」と「生涯教育」の定義と、その実践例としての静岡県掛川市の事例が詳細に紹介された。 I. 講義ガイダンスと学びの共有 1. レポート作成および受講姿勢に関する指導 和崎教授は、授業冒頭でレポート提出と受講姿勢に関する厳格な指導を行った。特に、レポートについては「だんご文」(冗長で読みにくい文章)は減点対象となること、また対話した相手の氏名を明記すること、そして自身の経験に基づく記述を心がけるよう注意が促された。これは、単なる知識の報告ではなく、体験と対話を通じた「学びのプロセス」を重視する本講義の姿勢を明確に示すものである。 2. 学生の学びの共有:対話力マンダラチャート 講義では、第1回授業の課題として提出された、ある学生の「対話力向上」に向けたマンダラチャートが紹介された。このチャートは、傾聴、要約、フィードバック、記録といった対話の構成要素をバランス良く配置しており、「対話を自分の実践計画に落とし込む」という能動的な学びの姿勢が評価された。教授からは、「相手の強みを引き出す質問」を意識することや、毎回の対話で小さなテーマを決め、事後に振り返りの日記をつけることなどの助言が送られた。 II. 文明論と「第三の波」の到来 1. 教員の「人生を変えた一冊」から紐解く文明の変化 教員が自身の人生を変えた書籍を紹介するコーナーでは、和崎教授が『シリコンバレー・モデル』(加藤敏春他著、1995年)を、坪田教員のアルビン・トフラーの『第三の波』(1980年)を紹介した。 トフラーが提示した「第三の波」(情報革命)は、農耕文明(3000年前)と近代工業文明(300年前)に続く、人類史における第三の大きな変革であるという視点が共有された。この「第三の波」の先に、國領二郎氏が提唱する「サイバー文明」が出現しつつあるという議論が展開された。サイバー文明は、その統治(ガバナンス)や経済活動において、技術(デジタル技術)・富(信頼)・統治(プラットフォーム)が基盤となり、西洋文明とは異なる東洋的な世界観(儒教、仏教、アニミズム)をどのように反映させていくかが課題となる。 2. 「技術的特異点(シンギュラリティ)」と生成AI 現代における技術進化の具体的な例として、「シンギュラリティ」(技術的特異点)がすぐにそこにある未来として提示された。IoT、仮想現実、自動運転、メタバースといった技術群の中で、特に生成AI(人工知能)の定義と応用例が詳しく解説された。 生成AIの定義: 学習したデータを基に、新しいテキスト、画像、音声、動画などのコンテンツを自動生成する人工知能技術。 活用例: 文章作成、翻訳、プログラミング支援、デザイン制作など、多岐にわたる分野での作業効率化や創作支援に貢献する。 注意点: 情報の正確性、著作権への配慮、倫理的な使用、プライバシー保護が必須であることも強調された。 和崎教授は、AIが人間を模し、やがて人類を超える可能性について触れ、「思考しない人間は自滅か?」という鋭い問いを学生に投げかけ、自発的な学習の重要性を訴えた。 III. 「生涯学習」と「生涯教育」の根源 1. 定義の明確化 講義後半の核心テーマは、「生涯学習」と「生涯教育」の明確な区別であった。 「生涯教育」は、ユネスコ成人教育長であったポール・ラングランが1965年に提唱した概念であり、「現代社会の諸変化への適応」のため、「生活の準備としての教育」から「自己教育を中核とした継続的な学び」へと教育の使命が変化すべきであると訴えた背景が紹介された。 2. 生涯学習の先進事例:静岡県掛川市 生涯学習の実践例として、昭和54年に全国に先駆けて「生涯学習都市宣言」を行った静岡県掛川市の事例が詳細に紹介された。 まちづくりの特徴: 市民の主体的な参加を促す「市民募金」により、新幹線掛川駅や木造天守閣の復元を実現。また、「道徳を忘れた経済は罪悪、経済を忘れた道徳は寝言」という二宮尊徳の教え(報徳思想)を掲げる大日本報徳社の存在が、その精神的な基盤となっている。 市民参加の仕組み: 市民総代会システム: 地域の代表が市長や幹部職員とまちづくりのために話し合う仕組みで、中学生の公民の教科書にも採用されている。これは、二宮尊徳の「芋こじ」(芋がぶつかり合って互いに磨かれるように、自由に本音でトコトン話し合う場)の教えを現代に受け継ぐものと説明された。 地域生涯学習センター: 小学校区単位に設置され、地域住民が主体となって運営される学習・交流拠点であり、防災や福祉の拠点としての多機能も持つ。 生涯学習の5つの必要性: 元掛川市長の榛村純一氏の提言として、「学歴社会からの脱皮」「楽しむ・たしなむ生涯学習(自己実現)」「勉強を求められる生涯学習(変化への適応)」「高齢化に対する生涯学習(自己規律)」「まちづくりへの生涯学習」が紹介され、これらが掛川市のまちづくりの根幹となっていることが強調された。 IV. まとめと次週予告 本日の講義は、「自発する学習」と「意図的な教育」の違いを理解し、AI時代において「人となる」努力、すなわち自ら思考し、変化に適応する能力が求められているという警鐘で締めくくられた。 次週(10月6日)のテーマは「生涯学習とリカレント教育」であり、ゲストスピーカーとして創造社リカレントスクール大阪校校長の松村眞吾先生を招き、実際の社会で行われているリカレント教育について学ぶことが予告された。 |
(2025/09/29)後期生涯学習論第2回目授業について - 25/09/24 09:46 (こたつねこ)