| 書き込み数は2件です。 | ◀▶ |
| [ 日付順 ] [ 投稿者順 ] |
|
2025年度前期生涯学習論B第13回授業(2025/07/14)録画・要約
【返信元】 7月14日 生涯学習論 第13回 講義について
2025年07月15日 06:07
|
|
第13回授業レポート:「サイバー文明と生涯学習」 (大阪産業大学 生涯学習論B・2025年7月14日) 2025年7月14日、大阪産業大学にて「生涯学習論」第13回目の授業が行われた。今回のテーマは「サイバー文明と生涯学習」。未来の社会構造と人間の学びの在り方について、テクノロジーと倫理、価値の転換をめぐる複合的な視点から講義とディスカッションが展開された。 ■ 一般価値と特殊価値──人間関係の本質へと立ち返る 授業は坪田先生による「価値」の再定義から始まった。ここで紹介されたのが「一般価値」と「特殊価値」の対比である。経済的な取引や市場価値といった一般的な価値基準に対し、友情・愛情・信頼といった関係性の中で成立する特殊価値があるという視点だ。現代社会は、経済的合理性を追求するあまり、関係価値の重要性を見落としがちである。坪田先生は「経済価値は必要だが、それだけでは人間らしさは失われる」と指摘し、共感と相互承認に根ざした社会の可能性を提示した。 特に印象的だったのは「人間の性質はゼロサム的で、つい比較や競争に向かいがち」という発言である。だが、そうした傾向を乗り越えるためには、他者との関係を通じて自らを問い直す生涯学習が不可欠であると述べられた。 ■ アテンションエコノミーと再動物化──現代人の意識を取り巻く環境 続いて取り上げられたのは「アテンションエコノミー」と呼ばれる現象である。SNSや動画プラットフォームは、利用者の「注意」を奪い合い、ビジネスの資源として活用している。坪田先生は「再動物化」というキーワードを使い、この構造が人間の思考を単純化させ、反射的な行動に誘導する危険性を説明した。 このような情報環境の中では、与えられた情報をそのまま受け取るのではなく、常に「本当か?」「誰が得をするのか?」と疑問を持つ「クリティカル・シンキング(批判的思考)」の習慣が求められる。また、そうした思考力を支えるのもまた、長期的で持続的な学習=生涯学習である。 ■ 歴史の中の価値転換──農耕革命からサイバー文明へ 和崎教授の講義では、人類の歴史の大きな転換点として「農耕革命」と「産業革命」が紹介された。農耕革命によって定住が始まり、人口が爆発的に増加した一方で、所有や戦争の概念も生まれた。産業革命は、大量生産と輸送手段の発展により経済活動を加速させたが、その代償として環境破壊や人間疎外といった課題も同時に拡大した。 そして現在、私たちは「サイバー文明」への転換期に立たされている。和崎氏は、インターネットを基盤とする現代の社会構造を、以下の4つのキーワードで説明した。 トレーサビリティ:すべての取引が記録・追跡可能になる透明性。 ゼロマージナルコスト:情報の複製・共有にほとんどコストがかからない特性。 ネットワーク外部性:ユーザーが増えるほど価値が高まる仕組み。 複雑系ネットワーク:変化が予測不可能な構造であること。 これらは、今後の社会や経済システムの在り方を根本から変えうる可能性を持つ。和崎氏は「30年以内に新しい社会モデルが確立される」と述べ、学生たちに「自分がその担い手である」という意識を持つよう促した。 ■ AIと生涯学習──アニミズム的な共生モデル 授業の後半では、AIと人間の関係が大きなテーマとなった。和崎氏は「AIを敵と見る西洋的発想ではなく、東洋的なアニミズムに学び、AIと共に生きる可能性を模索すべき」と語った。この考え方は、人間と技術を対立構造で捉えるのではなく、補完し合う存在として共生していく未来像を示している。 実際に30年後の社会では、AIやデジタル技術が生活や仕事の多くの側面を担うようになるだろう。その中で人間は、単に効率や利便性を求めるのではなく、「何を大切にし、何に時間を使うのか」といった本質的な問いに向き合う必要がある。 南海トラフ地震のようなリスクも視野に入れつつ、AIやテクノロジーを防災や地域支援に活かすといった、新たな活用方法が議論された。 ■ サイバー文明と民主主義──選挙と情報の重要性 今回の授業では、選挙の意義と若者の政治参加も強調された。和崎氏は「参議院選挙にぜひ投票を」と学生に呼びかけ、民主主義の根幹としての選挙の重要性を解説した。さらに、ナチス政権が利用した「エコーチェンバー(共鳴箱)効果」についても言及され、情報が偏在する現代において、「批判的に情報を精査する」姿勢の必要性が語られた。 ここで紹介されたのが、黒龍二郎氏の『サイバー文明論-持ち寄り経済圏のガバナンス』にある「知徳報恩」という概念である。これは、知識・倫理・法制度・感謝の循環をもとにした社会づくりの指針であり、技術一辺倒ではない、倫理的なガバナンスの在り方が問われている。 ■ 生涯学習とは「恩返し」である 授業の締めくくりとして和崎氏は「生涯学習とは、自分のためだけでなく、社会に還元する『恩返し』の実践である」と述べた。この言葉は、情報化社会における「学ぶ意味」を再確認させるものだった。高度情報社会を生き抜くうえで必要なのは、知識やスキルの蓄積だけでなく、他者や社会との関係の中で学びを活かす態度である。 ■ 学生への課題と今後の展望 本授業では、以下の課題とステップが学生に与えられた。 『サイバー文明論』の読解 経済価値にとらわれない特殊価値の再評価 30年後の社会・自分自身に対する展望のレポート提出 チャレンジプレゼンへの参加(希望者) 最終課題の提出準備 これらを通じて、学生一人ひとりが「AI時代の生き方」「学び方」「関わり方」を再考し、未来に向けた準備を進めていくことが求められている。 おわりに 今回の授業は、単なる知識の習得にとどまらず、哲学的・倫理的な視点を含む「学びの本質」に深く踏み込む内容であった。サイバー文明に生きる私たちは、技術とどう向き合い、人とどうつながり、どのように生涯をかけて学び続けるのか――そのヒントが数多く提示された90分だった。 |
|
2025年度前期生涯学習論A第13回授業(2025/07/14)録画・要約
【返信元】 7月14日 生涯学習論 第13回 講義について
2025年07月14日 15:28
|
|
生涯学習論レポート 第13回授業:サイバー文明と生涯学習 2025年7月14日(月) 大阪産業大学 和崎宏・坪田知己 はじめに:私たちはどんな未来に向かっているのか 「サイバー文明と生涯学習」と題された今回の授業では、デジタル革命とそれがもたらす社会の変容をテーマに、これからの時代をどう生きるべきかが多角的に論じられた。特に印象的だったのは、「経済的価値(一般価値)」と「人間関係・愛情といった特殊価値」の対比である。星の王子さまの一節「大切なことは目に見えない」を引きながら、現代社会が見失いがちな価値を再認識することが授業全体を貫くメッセージだった。 1. 坪田知己先生による「価値」と「人間関係」の再考 坪田先生はまず、「経済的価値(一般価値)」とは交換可能で貨幣に換算できるものであるのに対し、「特殊価値」は関係性や共感、愛情、信頼といった貨幣では測れない価値であると定義した。 現代は「お金を稼ぐこと」が人生の中心になりがちだが、それは「利便性のためにお金が必要」という本質を見誤っている可能性があるという。特に印象に残ったのは「経済は愛情増進のためのサブシステム」という言葉だ。愛着や共感といった人間の根本的な感情を育むための手段として、経済が機能すべきなのだという視点は、非常に新鮮だった。 坪田先生は「プラスファム人間(plus femme=より人間らしい人)」の重要性を語り、特殊価値を重視する生き方こそが、争いのない平和な社会を作る礎になると強調した。 2. アテンション・エコノミーと「再動物化」の危機 続いて議論されたのは、SNSとインターネットがもたらした「アテンション・エコノミー(注目経済)」の影響だ。和崎教授は、人間が理性を働かせず、感情や衝動に流される傾向が強まっていることを「再動物化」と表現。刺激的なコンテンツや陰謀論などが蔓延する現代社会は、かつて理性によって確立された民主主義や人権の基盤を脅かしているとも言える。 このような時代においては、「対話によって社会の調和を取り戻す」ことが重要であるとし、再び人間が「主体」として社会に関わる姿勢が求められている。 3. 情報革命の歴史とその未来的展望 和崎教授は続けて、国領二郎著『サイバー文明論』を下敷きに、アルビン・トフラーの「第三の波」理論を解説。農耕革命(鉄製農具)、産業革命(蒸気機関)、そして現在進行中の情報革命(インターネット・AI)という三段階の技術変革が人類社会をどのように変えてきたかを丁寧に説明した。 特に情報革命がもたらす4つのキーワード: トレーサビリティ ゼロマージナルコスト ネットワーク外部性 複雑系ネットワーク これらは社会構造や経済活動に急速かつ広範な影響を与えており、すでに私たちの暮らしの根幹に浸透している。 4. 未来社会のシナリオと「知徳報恩」の世界観 授業後半では、「30年後の社会」をめぐる3つの未来シナリオが提示された。 (1) ユートピア型 情報技術の発展により経済成長・格差是正・医療の進化・持続可能な社会が実現され、個人が能力を発揮できる世界。 (2) ディストピア型 プライバシー侵害、情報格差、AI暴走、偽情報の拡散、人間性の喪失など、技術の負の側面が現実になる未来。 (3) 知徳報恩型(推奨モデル) 「持ち寄り経済圏」の概念を導入し、AIと人間が共生する相互扶助型社会。プラットフォームが安全にデータを管理し、信頼に基づく価値循環を通じて「経済的格差」が縮小される。 この知徳報恩モデルの根底には、二宮尊徳の「報徳思想」がある。特に「至誠・勤労・分度・推譲」の四綱領は、現代企業の倫理や地域社会の活性化にも応用可能であり、渋沢栄一や松下幸之助らがそれを経営哲学として採用してきた事実も紹介された。 5. 対話と持ち寄り経済の可能性:芋こじの精神 授業の締めくくりでは、「芋こじ」という江戸時代の農村復興の手法が紹介された。桶の中で里芋同士がぶつかり合って磨かれていくように、人間同士も本音で対話し合うことで互いに成長し、課題解決につなげていくという思想である。 現代社会が高度なAIや情報技術に依存していく中でも、「芋こじ」のようなアナログな人間関係の深まりが、社会の幸福度を底上げする要因となる可能性がある。このような対話を大切にする文化が、真に「豊かな社会」を形成する礎になるだろう。 おわりに:特殊価値に目を向ける未来志向 今回の授業を通じて、私たちが生涯学習を通じて考えるべきは、表面的なスキルや知識の獲得だけではないと痛感した。むしろ、「何を大切にして生きていくか」「他者とどうつながっていくか」といった、より根源的な問いに答える姿勢が求められている。 一般価値よりも特殊価値を重視すること。理性を失わず、感情に流されない自己を育てること。対話を通じて共感と共創の未来をつくっていくこと。これらは、急速に変化するサイバー文明の中でも普遍的な学びの核となるだろう。 |
| ◀▶ |