《無料です》 うちの小さな息子が、ある晩、キッチンで夕食の支度をしている私の妻のそばに来て、何か書いたものを渡した。 妻はエプロンで手を拭いて、それを読んだ。 芝を刈った・・・・・・・・・・5ドル 自分の部屋を掃除した・・・・・・・・・・1ドル お使いに行った・・・・・・・・・・50セント ママが出かけたとき、弟のめんどうをみた・・・・・・・・・・25セント なまゴミを外に出した・・・・・・・・・・5ドル いい点をとった・・・・・・・・・・5ドル 庭を掃除した・・・・・・・・・・2ドル 合計14ドル75セントの貸し 妻は返事を待ってたっている息子の顔を見た。 さまざまな思いが妻の脳裏をよぎっているようだ。つと、妻はペンを取り、その紙の裏にこう書いた。 10か月間、私の中であなたが育つのを待って運んでまわったのは・・・・・無料。 いく夜も寝ずの看病をし、治るのを祈ったのは・・・・・無料。 この歳月、あなたのためにつらい思いをし、涙を流したのは・・・・・無料。 すべてを足してみても、私の愛の値段は無料です。 怖れで眠れなかった夜も、味わうとわかっていた心配事も・・・・・無料。 おもちゃも、食べ物も、着る物も、あなたの鼻をかんであげたのも・・・・・無料。 それを全部足しても、本当の愛の値段は・・・・・無料です。 読み終えた息子の目に、久しぶりに大粒の涙が浮かんでいた。 彼はまっすぐに母親の目を見つめると言った。 「ママ、ぼく、ママが大好き」 そう言ってペンを取ると、大きな字で、彼はこう書いた。 「ぜんがく支払い済み」 M・アダムス 子供の虐待や親殺しの暗いニュースがあとを絶たない現代・・・ 生まれてきたときのあの感動はどこへ行ってしまったのか・・・ また父や母の暖かさを何時から忘れてしまったのか・・・ 今一度親子の愛を確かめてみたい |