1,644万kW/2,121万kW (03/28 20:20)
77%
■バックナンバー
■RSSフィード
RSS 1.0 RSS 2.0 Atom 1.0
■このブログのURL
https://hyocom.jp/blog/blog.php?key=112689
2009年12月06日(日) 
 町が大混乱に陥っている中、被災地から40km離れた姫路市内でホスティング されている佐用地域SNS「さよっち」のサーバは、今回の豪雨の影響は受けることなく通常通り稼働していた(25)。、直接被災した人々には、地域SNSを使って情報を発信する余裕はほとんどなかったが、それでも、被災当日から未明までに、被災状況や安否確認などがブログを使って書き込まれた。(表1参照)

 「さよっち」のSNSエンジンであるOpenSNP(Open Social Networking Platform)(26)のブログには、写真及びファイルの添付機能や地図連携機能だけでなく、公開・コメント制御機能、インターネットTV(27)と連携した動画掲載機能(28)などが搭載されている。これら特徴的な機能は、単なる情報発信ではなく、よりクオリティの高いコミュニケーションを実現できるようになっており、佐用豪雨災害においてもその効果をいかんなく発揮していた。

表1 被災直後における「さよっち」ブログへの水害関係の投稿

筆者(2009)がブログ一覧機能により抽出して作表

 ブログ毎に、[外部][全体][トモダチ](31)と分けて公開やコメントを許可できる機能は、平常時には書き込む内容の一般性や汎用性よって分類される傾向があるが、災害時には緊急性や公益性の高い情報が外部公開に設定されており、またプライバシーに配慮して公開制限されているケースも見られるなど、「さよっち」では適切な利用が行われていた。外部公開のブログは、「さよっち」のログインページで外部からそのまま参照できるだけでなく、検索エンジンからもサーチし参照できるので、[全体公開]や[トモダチ公開]のものと比較(32)すると、その閲覧数は遙かに多くなっている。従来のSNSのサイト設計は、ユーザーを囲い込むために、情報を外部に持ち出しにくい仕組みになっているものが多いので、外部公開機能を有していないものもあるが、災害時などには外部への発信が重要性を増すことから、平常時においても外部公開機能を提供しておくことが必要である。

 被災から3週間の間に、「さよっち」ではブログを通じて、写真73点、地図情報15件、動画13点が公開された(表2参照)。ブログの中には、町の職員が避難所からの報告をとりまとめて書き込んだり、派遣された被災地から、復興ボランティアの重要な参考情報となる現状報告をほぼ毎日のように行って刻々と変化する現場ニーズを外部に連携することで支援活動を間接的に支えるなど、効果的な役割を担うものが少なくなかった。同じ豪雨で被災した隣接する宍粟市では、交通途絶した宍粟市福知地区の状況を把握しようと、県庁から被災翌朝に防災ヘリが飛ばされたが、悪天候による視界不良のため状況不明のまま引き返すということがあった。その日の正午前、第一報が福知地区の消防団隊員から地域SNS「E-宍粟」によって被害状況が発信され、初めて安否確認ができたという事例も報告されている(33)。

 また、マスコミから報道されなかった被災各地の被害状況が、地域住民が携帯動画を使って即時にレポートされていたり、住民ディレクターとして活躍している住民が中心となって、各地の被害・復興状況を番組制作し、インターネットTVやケーブルTVから続々と放映されるなど、これまでの災害現場から整理されて発信することのなかった情報が、ほぼリアルタイムに入手できた。

表2 水害関係の「さよっち」ブログ公開制限別投稿・閲覧状況(34) 2009年11月1日現在

筆者(2009)がブログ一覧機能により抽出して作表

 被災後5日間の「さよっち」への接続は、訪問数、ページビュー(35)ともに、被災前の2倍から3倍に達しており、特に被災直後には情報ツールとして活発に利用されていたことがわかる(図1参照)。また、月次の推移をみても、被災3ヶ月間のログが被災前の実績を上回っており、「さよっち」は継続的に利用されていた(図2参照)。


筆者(2009)がアクセスログ解析データから抽出して作図
-------------------------
(25) 災害が発生した場合、サービスエリア内にサーバを設置しないという方法は、防災面において有効な手段である。
(26) 2006年10月にリリースされた地域に特化したSNSシステム。同じエンジンをデザインを変えて地域毎に利用できるように設計されており、2009年10月現在で約30地域・団体が採用している。
(27) 「さよっち」のインターネットTV機能「さよっちTV」は、http://sayo-chi.jp/tv/
(28) PCと携帯の双方で、投稿・閲覧ができる共通機能を有したサービス。インターネットTVは、SNSサイトとは別の専用ポータルサイトを有し、カテゴリー分類やお薦め動画など外部からも容易に利用できるよう設計されている。
(29) 閲覧数、返信数は、2009年10月20日現在。
(30) 「全体公開」はSNS内部のみに公開、「外部公開」はログインせずにインターネットから参照可能。
(31) [外部]はサイトにログインしなくても情報が閲覧できる状態、[全体]はログインしたユーザーなら誰でも閲覧できる状態、[トモダチ]は書き込んだユーザーとトモダチ関係にあるユーザーしか閲覧できない。
(32) 被災3週間に書かれたブログを集計すると、1ブログあたりの平均閲覧数は、[外部]207.9,[全体]30.5,[トモダチ]31.2となっている(表2参照)。
(33) 2009年10月に松江市で開催された「第5回地域SNS全国フォーラム」で、牧慎太郎・兵庫県企画県民部長が報告した。
(34) [投稿]投稿数,[ACC]閲覧数,[COM]返信数,[PHO]写真掲載数,[MAP]地図情報数.[MOV]動画情報数
(35) サイトを訪問した利用者が、どれだけの情報ページを閲覧したかを集計した指標。

閲覧数2,749 カテゴリロンブン コメント2 投稿日時2009/12/06 10:22
公開範囲外部公開
コメント(2)
時系列表示返信表示日付順
  • 2009/12/06 14:12
    gotさん
    平時から稼働していた情報ツールが、災害情報後方支援ツールとして、SNSが実際稼働した最初の事例として貴重なデータであると思います。

    阪神淡路、ナホトカ、高知水害、普賢岳、中越地震、能登地震・・・みんな、災害後に作られたシステムです。これまでは、差違が時のシステムを平時にどのように維持していくかというのが課題でした。

    「さよっち」はその課題の解を出してくれたのではないかと思います。

    防災関係の学会もありますが、これまで災害時のことしか扱ってませんでした。平時のことは論文にならないからですね。

    今後、サービスサイエンスの分野に予算がつくようになりますので、平時の仕組みつくり、平時と災害時への接続など、これまで陰に隠れてきた地道な努力に光が当たると思います。

    これは、災害に限らず、里山の管理などもおなじです。土砂崩れの仕組みを研究しても、里山は守れません。

    こたつねこさん、是非、発表しまくって下さい。

    阪神淡路、ナホトカ、・・・作用町水害・・・

    災害情報の提供システムの開発の流れ(BBS,Web-GIS、マッシュアップ、SNS、SNS+GIS(言い過ぎかも?))を総括するようなシンポを開いたらどうかと思いますがどうでしょうか?

    発表者の顔が浮かんできそうなので、私はその気になりつつあります。
    次項有
  • 2009/12/06 19:11
    > gotさん
    > 平時から稼働していた情報ツールが、災害情報後方支援ツールとして、SNSが実際稼働した最初の事例として貴重なデータであると思います。

    got先生、災害情報の専門家からそのように褒めて頂けるととても嬉しいです。これまでも情報は災害時にさまざまな役割を担ってきたのですが、それがなかなか持続しにくかったみたいです。「日常と非常」の関係性を人のつながりからみると、不思議なくらい連関が可視化されました。ひとつの方向性が示せたように思います。

    > こたつねこさん、是非、発表しまくって下さい。

    はい。まずは地域SNSに書きまくってみます。研究者としての学会発表は大切ですが、できるだけ多くの人々に知って頂くことも重要であると思いますので、さりげなく露出度をあげてみます。

    > 災害情報の提供システムの開発の流れ(BBS,Web-GIS、マッシュアップ、SNS、SNS+GIS(言い過ぎかも?))を総括するようなシンポを開いたらどうかと思いますがどうでしょうか?

    凄いです!
    防災に対するいまの行政の考え方に、大きな刺激を与えるだろうという予感がします。
    やっちゃいましょう!(笑)
    次項有
  • 次項有コメントを送信
    閉じる
    名前 E-Mail
    URL:
■プロフィール
こたつねこさん
[一言]
地域を元気にする情報化に貢献したい♪
■この日はどんな日
■最近のファイル
■最近のコメント
■最近の書き込み