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2009年12月06日(日) 
 1995年1月17日早朝、姫路の自宅の居間で経験したことのない大きな揺れを感じた筆者は、まず家族の安否を確認し、自宅やご近所に被害がないことが判るとTVの前にかじりついていた。しかし、当初はどこからもほとんど情報らしいものを入手することはできなかった。しばらくして、震源が兵庫県南東部だという情報とともに、あちこちから火の手があがる神戸・長田地区のヘリ中継が目に入った。筆者は救援活動に参加しようと、すぐに所属していた姫路青年会議所の事務局に駆けつけたが、携帯電話がまだ十分に普及していない時代だったこともあり、阪神間のメンバーと連絡をつけることは至難の業であった。現地の状況がまったくつかめない中で対応を検討する会議が行われ、断片情報から想定された現地の状況を頼りに、それぞれの役割分担が決まった(51)のは午後1時前になっていた。このように、情報の枯渇が初動の救援に大きな障害となったのは、阪神淡路大震災が最初ではなく最後でもなかった。

 15年前との違いは、情報通信インフラの整備が進み、全国各地からブロードバンド(52)でインターネットに接続できるだけでなく、携帯電話網の急速な発達でだれでもどこでも情報に接触できるようになっていることである。兵庫県では、近い将来、直下型地震を起こすであろうと予想されている「山崎断層」(53)沿いに、西から「さよっち」、「E-宍粟」、「さんでぃ」、「いたまちSNS」という地域SNSの拠点が並び、地域を越えた人的なつながりが生まれ育ちつつあった。兵庫県では、一般的に、支援者たちが素早く適切な対応を行うため、被災直後の「空白の6時間」を解消する情報基盤はほぼ整いつつあると考えられていた。しかし現実には、自ら被災した状態でパソコンを開き、冷静に情報発信できる人は少なく、携帯からの情報提供もブログやコミュニティを利用する限り、発信までの手続きが煩雑で手間がかかりすぎる。「短文でもよいから、簡単に素早く情報をポストできる仕組みが必要」とのニーズから、OpenSNPでは、多数の若者から支持を受けているショートメッセージコミュニケーター「Twitter」を手本としたシステム「コトろぐ」を開発・実装することとなった。

 「コトろぐ」は、PCならマイページで常時表示と随時入力することができ、携帯ならメインメニューからワンステップで書込画面にいけるという簡易なインターフェースで、全角文字で約50文字程度のメッセージが残せる。OpenSNPをASP形態によるホスティングサービスで利用している20サイト以上で、ひとつのボードが共有されるようになっており、すべてのサイトのユーザーが閲覧する可能性がある。この「コトろぐ」の連携環境を活かして、被災直後に現場から緊急で発進された短文の情報を、さまざまなロケーションにある全国各地のサイトで受信することができれば、空白の6時間の解消と支援体制のスムーズな構築に役立つと考えられる。そこで、2008年12月に「コトろぐ」の試用版を実装するとともに、2009年01月には山崎断層を震源とする直下型地震が発生したことを想定した「OpenSNP連携1.17ネット防災訓練2009」(54)を実施、震災発生時のシミュレーションを行った。

 普段の「コトろぐ」は、お天気や身の回りの小さな出来事、鉄道の遅延情報などが、つぶやきのように書き込まれるのみであったが、「E-宍粟」が震源地となり、近隣の「さよっち」が大被害を受けたというストーリーの防災シミュレーションでは、6時間で700件近い情報が書き込まれ、迫真のメッセージに感動で涙するなど感情移入する参加者も少なくなかった。いみじくも、訓練の主舞台となった2つの地域SNSのカバーエリアが、半年後に豪雨水害の被災地となり、シミュレーションで活躍してくれたアクターが、実際の救援・復興における情報発進の中心的な役割を担ったことは皮肉である。そして、災害時の情報ネットワークには、事前の防災訓練が大きな効果をもたらすことを、現実の災害が明らかにした。

 一般的に、人的関係が薄い遠隔地で起こる災害については、人間は無頓着であり、ましてや支援に動き出すことは少ない。対して、肉親や友人がいる(いた)地域での災害情報には、「東アジア的相互扶助意識」(55)から、支援動機が働きやすい。近隣で発生した災害であれば、情報に接することで多くの人々が善意の救援行動を起こしやすいということである。正確性や公共性は少々低くても、災害発生直後の被災情報が、普段の人的つながりを経由して支援者たちに伝わることで、事前に想定されるより遙かに大きな支援効果をもたらす(56)可能性は高い。

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(51) 姫路青年会議所は、西日本の救援物資集約拠点となり、約1ヶ月間組織的救援活動を行った。
(52) ADSL、CATV、FTTH(光)、高速無線など広帯域でインターネットが接続できる環境。政府は、2010年度内にブロードバンドゼロ地域の解消を目指している。
(53) 岡山県美作市(旧勝田町)から兵庫県三木市に至る活断層。日本の活断層の中では、今後30年間に地震が発生する確率が相対的に高い高いグループに属している。
(54) 詳細は、ひょこむ内の専用コミュニティにて外部公開されている。http://hyocom.jp/community.php?bbs_id=413
(55) 東アジアにみられる、インフォーマルな相互扶助意識。
(56) 「コトろぐ」のように、サイト連携を前提に日常的に提供される仕組みにおいては、ひとつのサイトのひとりのユーザーによる不適切な書込が、連携サイト全体に影響を及ぼす危険性が高いので、運用に関しては高い倫理観と運用技術が必要とされる。

閲覧数1,683 カテゴリロンブン コメント0 投稿日時2009/12/06 20:10
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