「戦後強くなったものは女と靴下」と言われた時代がありました。昭和20年代のことです。
だから、いまこの言葉を知っているのは団塊の世代以前に生まれた人に限られるでしょう。
敗戦と米軍統治によって西欧型社会に転換した日本は、「婦人参政権」をはじめとして女性の地位が飛躍的に向上し、「男女平等」という言葉が声高に叫ばれていました。男尊女卑の社会に育った当時の国民の目には、本当に「女は強くなった」と映ったことでしょう。
一方、「靴下が強くなった」のは、これもアメリカからもたらされたナイロン繊維でできた女性用ストッキングの登場によります。それまでの綿や絹の靴下に比べて驚異的な強さだったからです。
男ものの靴下(ソックス)にもナイロン繊維が使われるようになり、お母さんが夜なべをして夫や子供の靴下にあいた穴を繕う姿も次第に見られなくなっていきました。
その後、ナイロンに替ってポリエステルやアクリルなどが登場しましたが、強さにおいては天然繊維とは比較になりません。
ところが、いつのころからか強かったはずの靴下が弱くなってきました。原因はいろいろあると思いますが、その一つに国民生活の向上に伴う消費者ニーズの変化があります。つまり靴下には「強さ」より「履き心地」や「通気性」が重視されるようになったのです。その結果、化学繊維に綿やウールといった天然繊維を混紡・混織したものが喜ばれ、天然繊維の割合も高くなっていきました。そして靴下は次第に弱くなっていったのです。
そしてもう一つ、「男」も弱くなりました。これは解説するまでもないことです。
そんなわけで、僕の靴下もよく爪先に穴があきます。足が大きくて親指が異常に長いという身体的特徴もあって、爪先部分にあたる圧力が人一倍強いからですが、ウールを多用した冬用の靴下が特にひどいのは、上に述べた構造的問題によると言えるでしょう。
だから、指先部分に摩耗に強い繊維を多くするとか、二重構造にするとか、強くする方法がありそうに思うのですが、なかなかお目にかかりません。値段の高いものにはあるのかもしれませんが、そんなに安くてなくてもいいから「強い靴下」が出てこないかなぁ。
しかし、売る側からすれば、あまり強くすると買う回数が減るから困るんでしょうね。 (笑)
見苦しい写真をお目にかけてスミマセン。
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