実証実験?の成果から課題へ
こたっつあんの論文を期待します。
情報通信ジャーナル 「地域SNSによって可視化される災害救援・復興のつながり効果」 ○災害に負けないまちづくりに向けた地域情報化の取り組み 大きな災害が発生した直後には、壊滅的な打撃を受けた被災地では、自助・公助・共助という支援には限界があり、被災地内部だけでなく、被災地周辺の地域による素早い支援活動や遠隔地からのタイムリーな援助を促進する仕組みの運用が求められる。これには、被災地内部からの的確でスピーディな情報発信はもちろんのこと、それを被災地外部に効果的に伝搬する実践的で具体的な取り組みや実証的な研究の推進が不可欠である。 総務省では、新潟県長岡市と東京都千代田区において、2005年12月から2006年2月までの間、我が国で初めての地域SNS実証実験を実施し、全国各地に地域SNSサイトが自発的に立ち上がるきっかけをつくった。また、『住民参画システム利用の手引き』では、日常的な利用だけでなく、災害のような非常時にも地域SNSが役立つことへの期待を提示している。 その後、地域SNSは、災害救援・復興の情報ツールとして、被災各地で実際に効果を発揮することとなる。2007年7月16日に発生した「新潟県中越沖地震」では、その日のうちに長岡地域SNS「おここなごーか」に、外部公開の「中越沖地震情報支援コミュニティ」が設置され、「ボランティア関連情報」「高齢者支援情報」「IT支援」「義援金情報」など、被災地の復興支援に情報面から貢献した。また、2008年6月14日の「岩手・宮城内陸地震」においては、盛岡市地域SNS「モリオネット」が、さまざまなメディアに流れる情報を地域SNSに集約し、安否・医療・被害・対策など地域が必要とする各方面の情報交換を行った。2009年8月11日に静岡県東部で発生した地震では、震源に近い掛川市の地域SNS「e-じゃん掛川」が、防災訓練の成果を活かして素早く反応し、地震当日のコミュニティへのアクセス数は4,885件に上った。 ○小さな地域SNSが顕在化させた大きな支え合いのつながり 2009年8月9日に兵庫県西部にある過疎の町・佐用町が、集中豪雨による水害に見舞われたことは記憶に新しい。この時、町が運営する小さな地域SNSサイト「さよっち」が、被災住民らによる民間レベルの多様な災害情報の発信を起点として、地域を越えた救援・復興支援活動の創発を促した。日頃から「さよっち」を介してつながりのある、他の地域SNSサイトの利用者らが媒体となって、放射状に伝搬した災害情報が、自発的で多様な支援を被災地内外に顕在化させたのである。「さよっち」では、静止画や地図はもちろんのこと(携帯電話からの)動画も掲載できる外部公開のブログ、地域SNS間連携によって他のSNSとリアルタイムで情報共有できるコミュニティ機能、Twitterのように手軽に短文が発信できる「コトろぐ」など、多彩な機能の組み合わせが効果を拡大させた。 特筆されるのは、被災家屋清掃のために役立つ古いタオルを家庭から集めようと、兄弟サイトである兵庫県域の地域SNS「ひょこむ」において呼び掛けられた取り組みが、全国に拡大して、約4万7千本超のタオルが届けられたことである。地域SNSの「信頼の連鎖」を経由して放射連鎖的に情報が届けられることにより、受け手に信憑性や価値観が高いレベルで認知され、直接的な行動につながる動機付けが行われたのである。このように、地域SNSを発信源とする情報が、連携したSNSサイトに散在する信頼の連鎖を通して、より広域にかつクオリティを保持したまま拡大していくプロセスは、災害のみならずさまざまな情報を地域の枠を越えて効率的に伝搬する手法「クチコミネットワーク」として活用できる。 地域SNSの機能面や運用面の防災への備えは緒についたばかりであり、地域住民への普及や認知もまだ不十分だ。しかし、突然発生する災害へのネットを活用した想定シミュレーション訓練や他地域の経験知を学びあう取り組みが有効であることは明らかで、実際に災害関連情報の発信・交流に一定の役割を果たし始めている。今後、地域SNSの設置が全国各地に拡大・連携するにつれて、地域の枠を越えた多様で具体的な支援活動にますます役立つことが期待される。 |