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2010年06月26日(土) 
 縄張りの検討により、各時代の特徴が導き出されているところに本書の特徴があるように思った。
 南北朝時代の城郭は、尾根に階段状につくられた小規模な郭群だったとされる。巻末の文献史料集からも、但馬の南北朝期の戦争の実態がうかがえる。南北朝時代の城郭の実態は、いまだ、研究的にも不明な点が多いと思うが、南北朝期の戦争の実態や城郭の実情も気になるところだ。
 土塁や堀で囲われた方形居館タイプの平地城館が皆無に近いのは、但馬の特殊性なのだろうか。唯一、土塁で囲われた平地城館として取り上げられている岡城が近隣に所在する詰城の法道寺城とともに織豊系城郭と評価されているのは興味深い。播磨の土塁を伴う幾つかの平地城館を検討するうえでも参考になると思う。
 岡城や法道寺城とともに、浅間城など幾つかの城郭が織豊系の城郭と評価されている。特に、横堀が織豊系の技術とされており、播磨の横堀を持つ城郭の評価も変わってくるかもしれない。
 養父神社を守るように存在する養父神社城砦群も興味深かった。
 但馬の城郭は、結構、発掘されているということも知った。太田垣氏の本拠とされる建屋うすぎ城の城下の場市遺跡が面白そうに感じた。守護代所だろうか?発掘調査報告書を読んでみたい。
 八木城下の殿屋敷遺跡も興味深い。土塁を伴わない堀囲みの方形居館だったようだ。
 山城が非常に密集して存在する地域があるのも面白い現象だと思った。
 
 論考編も充実しているが、特に、西尾孝昌「但馬における江戸期の陣屋」は、全国的にも研究がほとんど無いと思われる千石~二千石クラスの旗本陣屋の空間構造を分析したもの。貴重な成果だ。旗本陣屋でも、千石の旗本陣屋と二千石の旗本陣屋では、陣屋の大きさも変わってくるようだ。
 西尾孝昌「但馬の中世寺院の検討」、谷本進「但馬地方における山岳寺院の類型化」も貴重な成果だ。但馬の山岳寺院の類型化は、播磨の山岳寺院を考えるうえでも参考になる。八木城に近接して存在し、八木氏の菩提寺だったとされる山岳寺院の今滝寺を描いた室町期の絵図があるということも初めて知った。

 但馬は城郭研究が特に盛んで、西尾孝昌さんと谷本進さんが中心になって調査・研究されてきたと思うが、本書も両氏が中心になって執筆されている。但馬の城館も、但馬の中世史も全く不勉強だったが、本書を読むことによって、かなり勉強になって良かった。
 

閲覧数3,187 カテゴリ日記 コメント9 投稿日時2010/06/26 17:51
公開範囲外部公開
コメント(9)
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  • 2010/06/28 15:17
    そうかそうか
    早速読んでみるよ。

    こっちも見学の必要ありやね
    次項有
  • 2010/08/30 18:33
    播磨屋さん
    『図説養父市城郭事典』早速、一冊申し込みました。ところで、■プロフィール のところに掲載されている写真はどこの城なのでしょうか?
    次項有
  • 2010/08/30 21:02
    > 播磨屋さん

    恒屋城居館の中村構居(地元の人は「姫屋敷」と呼んでました)とクランクのある堀で隔てられた西側の墓地(地元の人は「家老屋敷」と呼んでました)の西側の堀?です。いかにも堀のように感じましたが、堀と捉えてよいのか微妙です。今は切り通しの道のようにして使われています。
    次項有
  • 2010/08/31 06:03
    播磨屋さん
    恒屋城址、今年の盆に下見を兼ねて前城だけ登ってきました。晩秋に主郭まで登ろうと計画しているところでして、姫屋敷・家老屋敷の探索も加えることができました。ところで、城主に関係する菩提寺や史跡などは存在しているのでしょうか?
    次項有
  • 2010/08/31 21:16
    > 播磨屋さん

    僕も恒屋城に関して、そんなに詳しくないですが、『香寺町の散策』によると、恒屋城の登城口に存在する祐光寺に恒屋城に関する古文書があったが、火災で焼失したとあるので、菩提寺的な位置にあったのかも知れません。恒屋城の西南の山中にあった山岳寺院の棚原山出湧寺も中世が盛期で、恒屋城主と関係のある寺院だった可能性が考えられると思います(田中幸夫『播磨の中世寺院跡』)。恒屋城の城主居館は「御屋敷」と呼ばれていますが、今は宿泊施設(香寺荘)が出来ており、旧状はあまり止めていませんが、発掘調査が実施されています(堀本裕二「香寺町域の中世城館について」『年報 香寺町の歴史 第2号』)。恒屋城や恒屋氏に関して、詳しくは、『香寺町史』、『恒屋の里 第1号』、『年報 香寺町の歴史(第1号~第4号)』、『神崎郡誌』、『語りつぐふる里の歴史』、『ふるさと香寺(創刊号~第7号)』などで御確認されたく、御願い致します。
    次項有
  • 2010/09/01 08:54
    播磨屋さん
    恒屋城に関する貴重な情報をいただき、まことにありがとうございます。今後とも、よろしく、お願いします。
    次項有
  • 2013/10/07 23:13
    恒屋圭子さん
    はじめまして。
    恒屋と申します。
    恒屋城、恒屋伊賀守に関する書籍を探していました。、『香寺町史』、『恒屋の里 第1号』など入手できたら嬉しいのですが、入手できる方法をご存知でしたら教えてください。
    次項有
  • 2013/10/12 13:55
    > 恒屋圭子さん
    『香寺町史』は姫路市役所から購入可能ですhttp://www.city.himeji.lg.jp/s115/2894886/_10653/ko…udera.html 。『恒屋の里 第一号』は北恒屋地区が昭和53年に発行したもので非売品です。多分入手不可能です。図書館で閲覧するか(姫路市立城内図書館には置いてあると思います)、古書店をあたってください。恒屋氏に関しては村井良介「武士の動向」『香寺町史 村の歴史 通史編』が、恒屋城に関しては山下晃誉「恒屋城」『ひょうごの城』(神戸新聞総合出版センター)が最新の研究成果だと思います。姫路埋蔵文化財センター発行の恒屋城跡のパンフレットが閲覧可能ですhttp://www.city.himeji.lg.jp/koho/press/_23638/_238…24032.html
    次項有
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