観光客のいない奈良を歩くのはいいものです。歴史に直に向きあえるという意味で・・・。そして、このことを実感できるのが佐紀です。 佐紀というのは奈良・平城宮跡の真北に接する地域ですが、ここには古墳時代中期に造られたと思われる大規模な前方後円墳が蝟集していて、平城京が造られる遥か以前から人の手が入っていたことが分かります。そして佐紀盾列(たたなみ)古墳群と呼ばれるここの古墳には、なぜか女性のものとされている墳墓が目立ちます。神功(じんぐう)皇后、日葉酢媛(ひばすひめ=垂仁天皇后)、磐之媛(いわのひめ=仁徳天皇后)等々。 また、この地は万葉集にたくさん詠まれている歌まくらの地でもあります。地形的には、低くなだらかな丘陵が北に控える山すそといった感じの、優しい日本的な風景で、恐らくは、いにしえの都人たちの格好の行楽地であったでしょう。宮廷の女性たちは、春に秋にこの野原で草を摘み、花を愛で、歌を詠んだことであろうと思われます。 をみなえし 咲く(佐紀)野に生ふる白つつじ 知らぬこともて いわれしわが背 春日なる三笠の山に 月も出でぬかも 佐紀山に咲ける桜の花の見えゆべく をみなえし 咲く(佐紀)沢の辺の真葛原 いつかも繰りて 我が衣に着む かきつばた咲く(佐紀) 沼の菅を笠に縫い 着む日を待つに 年そ経にける 古墳の周濠やため池など広い水面の多いこの地には、秋になると夥しい数の水鳥が飛来します。小春日和の日などに散策するのも、またいいものです。奈良を愛する人、古代史や万葉集に興味をお持ちの方にぜひ歩いてもらいたい場所です。 詳しくは、http://www1.odn.ne.jp/~cea07800/saki.htm 写真左は日葉酢媛命陵、中は水上池、右は空から見た佐紀地区 |