夏川勇作(58) 大手商社勤務。貿易関係一筋で定年後の人生設計を模索中。 仕事だけが生き甲斐で走り続けてきた人生。振り返ってみると趣味と呼べるやすらぎもなく、会社以外の人のつながりもない。ましてや盆栽やゲートボールに興じるつもりもない。定年を間近に控えて残った人生をどう生きるかを模索して、いろんなセミナーに参加している中で県民交流広場の活動を知った。ブックレットになっていて重荷にならないガイドブックを手に「e-HIROBA.NET」にアクセスすると、なんと地元の大山町でも活動が実施されていることを知って、すぐさまメールを入れた。 HPには、「CATまちづくり塾」というコーナーがあり、コミュニティ支援隊の方々がそれぞれ20分くらいのショートレッスンを動画で公開してある。気がつくと数時間たっていたくらい話しに熱中してしまった。交流広場はそれぞれがユニークだ。「ひろばテレビ」では、住民ディレクターが自ら取材・編集した番組が、インターネットで視聴できる。あまりに力作が多いので、自分のタブレットにダウンロードして通勤時に全部見てしまった。 メールの返事をくれたのは、谷内会長。知らない住民に丁寧に活動の内容を説明してくれた。迷いもなく、誘われるまま「安心安全マップ」づくりの活動に参加して、ここに住んでいてよかったと実感。活動の輪の中で、会社とはまったく違うネットワークの心地よさにどっぷり浸かることができた。 実際の地域での人の絆もさることながら、「地域SNS」でつながる人の輪も素晴らしい。同じような悩みを持った人たち同士が集まったり、地域活動のアドバイスを交換する「コミュニティ」が、どれほど世界を広げてくれたか計り知れない。交流広場を知らなかったら絶対に交流できなかった多くの先輩や友人たちに恵まれて、特技の翻訳作業を活かすボランティア仲間とも知り合えた。今は、定年後の生活が楽しみな毎日を送っている。 ※この物語はフィクションです。特定のモデルが存在するわけではありません。 |