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2013年08月05日(月) 

 学校と地域が連携し、地元の商店街を教育の舞台として、高校生たちが社会デビューを目指す伊丹市立伊丹高校情報科1年生の「伊丹商店街活性化プロジェクト」は、まさに地域の潜在資源としての人的つながりを可視化しつつ、地域力(エンパワーメント)の向上を実現する、教育とまちづくりを融合させた画期的な取り組みである。地域力は、そのエリアに存在する個人の能力の総和ではない。その能力は隣人たちとのつながりの質によって、プラスにもマエナスにもなる。他者との紐帯(つながり)が良好であればあるほど、潜在しているパワーが指数的に増加し、全体力となる。
E(地域力)=m(個人の能力)×C^2(つながりの二乗)、という方程式が成り立つ。これはすべてのネットワークに有効で、「関係性の力」はこれまで、あまりに過小評価されすぎてきた。

 情報科の授業のゴールは、高校生になったばかりの純粋無垢な生徒たちを、地域社会の中に立派にデビューさせることである。そのプロセスの中で若者たちは、さまざま感激や感動と出会い、多くの障害や課題と対峙する。成功が約束された線路の上を、車両を連ねて安全に目的地まで運ばれるのではなく、自分たちで悩み、解決しようとするポジティブな思考と行動が求められる。その中で、地域の信頼関係を理解し社会の規範を身につける。次第に、目先にある個店の利益だけを追いかけるのではなく「まちの商店街を地域に取り戻す」という視点の大切さが見えてくるのである。高校生たちに求められるのは、情報技術を習得することだけではなく、コミュニケーション能力を養うことである。そのために生徒たちは、ExcelやWordやPowerpointという情報ツールの操作を、課題として覚えさせられるのではなく、同僚や商店主とのコミュニケーションの道具として必要に迫られて、教師のサポートのもと、自ら自発し友人たちと協力しながら体得していく。

 入学したての生徒たちのほとんどは、地域社会との共通言語を持っていない。もちろん、地域装置としての「商店街」などを意識したこともない。そんな生徒たちがまず商店主から学ぶのは、地域共同体の一員としての地元への愛着とそれを支える地域への帰属意識としての公共心である。生徒たちは、1年間を通してコミュニティに参加していくことで、教室では学ぶことのできない地域の現場の温かさや厳しさ、地域を支えてきた「規範」の大切さを実感する。そして若者たちは「伊丹がすきやねん!」という言葉に埋め込まれた「空間の履歴」が語りかける地域の真心に心揺り動かされるのである。このプロセスにおいて感性増幅装置としての役割を担っているのが、地域SNS「いたまちSNS」と電子商店街「いたまちモール」の存在だ。生徒たちにとっては、学校内だけでなく、商店主や地域の支援者たちが参加するリアルと連動したバーチャルな交流の場は、体得したコミュニケーション能力を磨き、成果を発揮する格好の舞台になりつつある。

 この授業を通じて「真の自立」へのきっかけを見つける生徒も少なくないが、多くはこれまでの学習とのギャップに戸惑いながら、自分自身の成長と闘っている。そんな中、自立に目覚めた一部の生徒たちが、高大連携でプロジェクトに関わる関西学院大学の学生たちのサポートを受けながら、オピニオン・リーダーとなってさまざまな企画を牽引し、数多くの仲間たちを巻き込んでいく。生徒たちの活躍は、世界各地の地域活性化モデルを支え、成功に導いた「社会起業家(Social Entrepreneur)」の姿を彷彿とさせるものがある。

 「地域」は決していまの大人たちだけのものではない。いや、これからは伊丹の高校生たちのように、リアルな社会とバーチャルなツールを巧みに操りバランスをとりながら、「信頼」「規範」「連携」「協働」「愛着」「公共心」という、地域社会から失われつつあった社会基盤の再生に気づいて動き出した若者たちの手で新たに組み替えられていくことによって、地域共同体としてのコミュニティが甦るのであろうと期待している。

閲覧数1,232 カテゴリ出版 コメント1 投稿日時2013/08/05 06:25
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コメント(1)
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  • 2013/08/05 09:00
    aoitoriさん
    「E(地域力)=m(個人の能力)×C^2(つながりの二乗)」というアインシュタインの方程式にあてはめると、「つながりというものがいかに大きな要素になるか、よく感じられます。

    「感性増幅装置としての役割を担っているのが、地域SNS「いたまちSNS」と電子商店街「いたまちモール」の存在」
    リアル社会とバーチャルのツールの組み合わせということにも、すごく感銘を受けました。
    次項有
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