ドレーゴ広場に向かうデフェンサ通りに足を踏み入れると、早朝から降った 雨がようやくあがったばかりの石畳で、露天商人やフリマ感覚の若者達が 準備を急いでいる。早くも品物を並べ終え人の好さそうな笑顔をこっちに 向けるのに誘われて「ティエネ クチージョ ビエホ イ メホール(ナイフの 骨董で好いのある)?」と言いつつ近寄って台に並んだのを眺める。親父 「これは鞘と中身が別物だから好くない」とか「涙粒ほど金を混ぜてある銀 製品が高価だが美しい」とか色々教えてくれる。知識だけいただいて「グラ シャ イ チャオ」、露天以外にもガレリアや商店を冷やかしながら進むと、 立派なショーウインドウの店で値段も手ごろな感じ、中に入り品物を見せて もらう。気に入りが見つかったので交渉に入り色々粘ってようやく購入。 広場をざっと巡ってデフェンサ通りと交わる辻に入ってゆくと、なんと!オル ケスタ・ティピカ・インペリアルが路上ライブの準備中。石畳を転がしてきた アップライトピアノは鏡板が無く中身は全部むき出し、調律はどうなってるん だろう。やがて演奏が始まるPAを用いない全くのアコースティックだが音量 は凄い!周囲の喧騒などお構いなし時折走る救急車のサイレンも気になら ない。圧倒されている中、歌手が(さすがに彼だけはマイクを握り)これまた 豊かな声量で歌い上げる。これがあのCDも出し毎年のヨーロッパツアーを こなしているインペリアルなのか。服装もラフなスタイルで気楽に笑いながら 演奏を進めてゆきやがて大きな余韻をあたりに残し終わってしまった。途中 何度も溢れるものを抑えるのに苦労したほどの感動のひとときであった。CD が積んであるそばにポストカードが置いてあり見るとその日の夜もアバストで ミロンガコンサートを演るという。滞在ホテルのそばのカルロスガルデル横丁 、市の主催なので参加は無料。CD(日本ではもちろん未発売)2枚で35$ を買って「きっと行くよ」と言いながら綺麗なカードも十枚ほどイタダキ。 you tubeでインペリアルの路上ライブ観て下さい。 http://www.youtube.com/watch?v=aVY-OS59p3c 別の辻を入ると今度はアフロンテの路上ライブ、やはり電子ピアノではなくて アップライトの鏡板を外したのを持ち出している。持ち込んでその場で調律 をしてしまうのかな?だけどさっきのインペリアルでは音ズレがあったなぁ、全 く気にはならなかったけど。演目はグワルデルビエハだが強烈なリズムで支配 して、音ズレの不協和音みたいなのがピアソラ的味つけ効果を生んでるようだ。 など思い返しているとアフロンテの演奏が始まる。やはり同様の感動、歌手の側に ぴったり寄り添い聞き耳を立てながらバイオリンを弾くリーダー、その気配を背 で感じ取っているのかぴったり息を合わせた4丁のバンドネオン。すばらしい! と思わず声が出る。ではちょっと録画に不満ですがアフロンテです。 http://www.youtube.com/watch?v=OFlBoI2VHus 常に繰り返されてきた模索と回帰の中で伝統を固守するかに見える彼ら オルケスタ・ティピカ・ウニオンのグループのタンゴを好ましく思うの は年のせいかなぁ。やがて戻ってきた喧騒の中にバルス”ロマンセ・デ ・バリオ”の一節を繰り返すアコーデオン。妹を側に座らせ2オクターブほどの 玩具を弾いている7っつか八つくらいの男の子。缶はほとんど空っぽで通る人を 笑顔で見上げながら弾きつづける。ここにもタンゴの原風景があった。「今年も 路上タンゴライブにむけて我らの稽古を重ねよう」と心に誓いつつ歩みだした。 このシリーズ次回の(3)でちょっとダンスにもふれておきます。 |