僕は大阪生まれの大阪育ちですから、昔母がつくって食べさせてくれた大阪の惣菜が懐かしく、また美味しいと思います。だから、今でもときどきは母のつくっていたものを思い出しながら、自分なりにアレンジしてつくっています。 今日は、その中から最近つくって食べた2つを紹介します。
これは生節と焼き豆腐の煮ものです。 生節は鰹で出来たものを使います。ビンチョウマグロで作った「とんぼ節」というのもありますが、鰹のものに比べるとあっさりしすぎていて旨みが少なく、身がパサパサしていて滑らかさがないので僕は使いません。 鰹が主役なので、煮汁には昆布の出汁を使います。味付けは味醂と薄口醤油ですが、時間をかけて煮込むので、やや薄めの味にします。煮汁はひたひた程度に入れ、落し蓋をして弱火でことこと煮込みます。 鰹の旨みが出た煮汁が豆腐に滲み込んで、とても美味しい惣菜になります。 ちょうど山蕗が出ている時期だったので一緒に炊きましたが、この香りも味のグレードアップに役立ちます。
これはしろ菜と白天の煮浸しです。 しろ菜は本来は「白菜」と書きますが「ハクサイ」と紛らわしいので、今では仮名書きにするのが一般的です。 同じアブラナ科の小松菜と似た形をしていますが、軸が幅広で白いのが特徴です。葉の部分は小松菜に比べると浅い緑色です。クセがないので、他の食材との組み合わせも自由です。 僕が子供のころの大阪では、「なっぱ」と言えばこのしろ菜を指すほどにポピュラーな野菜でしたが、現在では小松菜、ほうれん草、水菜、ハクサイなどが幅を利かすようになり、売り場の片隅に追いやられています。 しろ菜は、江戸時代には「天王寺かぶら」や「田辺大根」などとともに「大坂しろ菜」として、今で言う「ブランド野菜」だったくらいですから、その美味しさが解るでしょう。 前置きが長くなりましたが、これも大阪の家庭料理として広くつくられていたはずです。というのも、一緒に炊いているのが白天と呼ばれる鱧などの白身魚を使った練りもので、これも大阪ではポピュラーな食材だからです。(今回は紅生姜の入ったものを使いましたが、キクラゲ入りを使うのが一般的です。) 煮汁は、昆布と鰹の出し汁に薄口醤油と少量の味醂で吸いものより少し濃いめの味をつけます。 たっぷりの煮汁の中に一茹でしたしろ菜と白天を入れ、3分ほど煮たてたあと火を止めて冷まし、味を滲み込ませます。 炊きたてを食べても美味しいのですが、冷たくなってから食べた方が味がよく滲みて美味しいと思います。煮汁も美味しいので、汁もの感覚でいただけます。 また、白天ではなく、やわらかい薄揚げと炊いても美味しいですよ。 |