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2014年06月03日(火) 

第十八話「道徳なき経済と経済なき道徳」

地味な主婦・直美の両肩が微妙に震えているのを見て、脳みそウニシンドローム爆発寸前と見取った地域SNS運営管理者・岡本早苗が、我慢も限界と和崎を問い詰めた。「こたつさん、ところでこのプログラムってどこにあるのか、そろそろ教えてくれないとみんな欲求不満が爆発してしまいます」。いくら素晴らしい企画でも、机上で空論をころころ転がしているだけでは我慢できない。地域の現場で活躍する実践者の人たちは総じてこんな傾向がある。やるかやらないかの判断の要素は面白いかどうかが基準。たくさんの仲間たちと楽しみながら社会貢献できるのが必須条件なのだ。

和崎はいつもの笑顔でにこにこと語り始めた。「2010年のピーク時に全国で500サイト以上あった地域SNSは、4年後には170サイトくらいにまで減少しています。活動の停滞、運営費の捻出、人的問題など、理由はそれぞれさまざまありますが、設立当初は大志を抱いてスタートした地域ばかりだったのに大変残念なことです。私たちの仲間も宇部を失い、さらにいくつかのサイトが閉鎖を検討せざるを得ない状態になっているのが現実。そこでインフォミーム(地域SNSエンジン・OpenSNPの開発会社)では、まちづくりへの志しを活かし、地域の人をつなぐという手法に磨きをかけながら、経済的自立を獲得して持続可能性を高めるツールの実装を研究・検討してきました」。横のジョッキをぐいっと飲み干してから続けた。

「とはいえ、僅かとはいえお金を稼ぐとなると商売かと揶揄する人が出てくる。かといって利用者に均等に負担を強いることも難しく、スポンサーを見つけるというのも活動に偏りがでてくることが懸念される。そこで考えてついたのが、アフィリエイトをビジネス型ではなく地域貢献型にリノベーションしたシステムでした」。アフィリエイトとは「成果報酬型広告」や「成功報酬型広告」と呼ばれるネット広告の課金方式の一つで、ウェブページやメールマガジンなどの広告媒体から広告主のウェブサイトなどへリンクを張り、閲覧者がそのリンクを経由して広告主のサイトで会員登録したり商品を購入したりすると、媒体運営者に一定の料率に従って報酬が支払われる方式だ。

掲載回数やクリック数などに対して報酬が支払われる他の広告手法に比べ、広告主にとっては売上などの成果が挙がってから初めて広告料(の請求)が発生するため、費用対効果が比較的高い広告を展開することができる。媒体運営者にとっては、他の広告プログラムよりも加入・登録の門戸が広く、個人でも容易に開始できる点や、商品選択や掲載方法の自由度が高く、自分のサイトのテーマやデザインに馴染んだ広告にしやすいというメリットがある。アフィリエイトプログラムには、広告主となるオンラインショップやオンラインモールなどの事業者が独自に媒体運営者を集めて展開しているものと、広告主と媒体運営者の双方を募集して両者を引き合わせるサービスがあるが、どちらにしても、商品を通じて広告主を紹介し、その対価として報酬を得るだけでしかなく、関係者のつながりを構築して価値づくりをしていくという視点は欠如している。

「利用者にも店舗にも運営者にも紹介者にも、システムに関わる全ての関係者にそれなりの利益と嬉しい関係性を与える仕組みを企画するのはなかなか難しいことだけど、今回のアイデアソンで磨いてくれたSNS連携地域型共同購入クーポンの発想は、まさにこの難問を解く唯一無二の方程式なのではないかと思います」。和崎はここまで3年間で研究開発してきた結果と、今回の企画をホワイトボードに比較して図示しながら説明した。そのふたつのチャートは、情報通信技術(Information Technology)面ではほぼ完成に近づいており、運用に係る社会技術(Social Technology)では、アイデアソンの考察が概ね間隙を埋めていることを現していた。

「もうできあがってるんですね!」と岡本たちが感激の声をあげると、和崎はその手を挙げて発言を抑えて続けた。「このシステムに一番大切なのは『哲学』です。もちろん利用者にそれを強制することはできませんが、運営者、紹介者、店舗には、きちんと理解しておいてもらわなくてはならないことがあります」。静岡県掛川市に二宮尊徳の報徳思想の拠点である「大日本報徳社」がある。講堂前には1909年に建てられた県の重要文化財である正門があり、左が経済門、右が道徳門となっており、ふたつは同じ高さ担っている。社会は道徳と経済が調和したものでなくてはならないと教えている道徳経済一円融合の門だ。「地域に興味がなく儲けだけに固執する人の参加は排除しなくては、このシステムの目指す目標は達成できません」。いつもよりマジな顔で細い眼をさらにすぼめて和崎は訴えた。

つづく

この物語は、すべてフィクションです。同姓同名の登場人物がいても、本人に問い合わせはしないでください(笑)

閲覧数827 カテゴリ日記 コメント0 投稿日時2014/06/03 08:41
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