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2014年06月29日(日) 

第二十七話「日本の社会に根付いていた信頼の通貨・ウッフィー」

SNS連携地域型共同購入クーポンシステム「とらぽん(Trust Coupon)」は、その運用が始まると信頼関係でつながった地元の人たちが自発して智恵を集め、地域の元気創造に資するものならイベント・研修や施設紹介などの無料クーポン発行にまで利用されるなどさまざまな実践が展開できた。そのおかげで、単純な値引きだけの仕組みではないことが形となって目に見えてきて、多くの人たちに受け入れられることとなりスムーズに動き始めた。しかし、「とらぽん」の立ち上げまでには、想定を超えたさまざまな障壁が存在していた。

「とらぽん」のポリシーは、近江商人の「売り手よし、買い手よし、地域よし」をモデルとして、地域のソーシャルキャピタル(社会関係資本)を可視化し、情報・人・経済の地域循環を創造して、みなが大好きな地元に元気を取り戻そうというもの。売り手の都合だけで商売するのではなく、買い手が心の底から満足し、さらに商いを通じて地域社会の発展や福利の増進に貢献できる「三方よし」のデザインを実現することにある。信頼できる人のつなかりである安心安全な地域SNSは、その重要な役割を担うコミュニケーション基盤だった。

「三方よし」の仕組みを支えていたのは、売り手と買い手と地域社会の一般的信頼関係にあった。売り手が単に物品やサービスを提供し、買い手がその代償として金銭などで決済するだけではこの関係は育たない。最初はさほど強くない信頼関係がささやかな互酬意識を生みだし、相互理解の上で支え合い助け合うという行為が信頼関係を醸成し互酬性が向上する。この循環プロセスを動かすためには経済活動としてのビジネスを超えた日本の「あきない」精神の要素が不可欠である。

現代人の多くが「経済」の物差しで価値評価することに慣れすぎていて、古来から存在していたこの「感謝の交流」に気がつきにくくなってしまっている。しかし、この形もなくデータにもならない感性の通貨は、「貢献」と「評判」の交換が連鎖的に行われるネットワークの中で、つながり社会の価値単位や「経済」と併存するもうひとつの物差しとして確認されつつある。二宮尊徳は報徳思想の中でこれを「経済と道徳」と述べ、ウェブマーケティング専門家のタラ・ハントは、「ウッフィー」と呼んで概念化している。

つながり社会の中では、みんなが喜ぶ情報やアイデアを提供したりすると、それを受け取った人々は提供者に恩義を感じその願いや提案を受け入れやすくなる。逆に自分勝手な発言や行為を重ねると評価が下がり人々の協力は得にくくなる。ハントのいうウッフィーは、つながり社会の中でどのような振る舞いをすべきかを考える基礎となるもので、「役立つ」「貢献する」「評価される」「信頼される」「感謝される」「喜んでもらう」「感動してもらう」といった利他的な行動がウッフィーを増やす。

ウッフィーが蓄積されることによって、自身の意見や行動が受け入れられたりより良い提案が受けられるようになる。ウッフィーは文化人類学でいう「反対給付」「互酬性」、心理学でいう「心理的報酬」「好意の互恵性」、社会学や進化生物学でいう「間接互恵性」として説明できる。人に親切にすれば、その相手のためになるだけでなく、やがてはよい報いとなって自分にもどってくるという意の諺「情けは人のためならず」の欧米流の表現と言える。

しかし、本来は心地よい現実との接点を持つゆるやかなつながり社会であった地域SNSの弱体化が急速に進んでいた。あるサイトでは「地域のソーシャルキャピタルの醸成(と活用)」という目的を棚上げにした運用の結果、個人的な利用を優先して全体利益に対する視点も意欲も持たなくなった利用者が増加したために、SNSが社会基盤としての意味をなさなくなりつつあった。また、ここちよいゆりかご空間だったネットワークに、主義主張や批判的発言を行うメンバーが目立つようになり、信頼と互酬性に支えられていたソーシャルキャピタルがダメージを受けて基盤自体が弱体化してしまった事例も少なくなかった。よりアクティビティの高いソーシャルメディアへの利用者流出に歯止めがかかりにくいということも重要な課題であった。このように、基盤の健全性に問題があるサイトでは、大手術を行ってつながりを強化しなくてはならず、回復には相当な時間と努力が必要であった。

ウッフィーはつながり社会の中では通貨とは逆に、使えば使うほど増えるという特性を発揮するが、つながり社会の外では信頼関係が成立しないのでまったく意味を持たなくなる。とくに、経済の物差ししか持たない個人主義的な相手には、基本的な考え方すら理解できないことから必要以上に懐疑的な印象を与え「うさんくさい」と評価されることが少なくない。このような場合は、いくら説得を図って説明してもかえって逆効果になることが多く、努力することはほとんど無意味である。これに反して、信頼関係が成立するつながり社会の中では、絶大な効果を発揮するのがウッフィーの特徴である。

顕著な事例が地域経済のキーパーソンたちの「とらぽん」への反応にあった。商工会議所専務理事の坂井政彦(58)、商工会会長の三渡啓介(66)、商店街会長の藤田誠治(73)とは、数年間または1年近く行き来はなかったが、共に地域社会のために汗を流した戦友たちであった。時は経っても信頼関係と互酬性はいささかも損なわれておらず、互いのウッフィーはまったくといっていいほど劣化していなかった。普段から地域経済の弱体化を通して地元社会の未来に危機感を感じている彼らには、「三方よし」を実現するシステムの詳細説明は必要なく、弱点となる部分を的確に指摘し、それを解決する対応策を提案までしてくれた。

このように、地域経済や地域づくり実践者、SNS利用者などの理解と協力を得て、各地のSNSの個性を活かしながら、それぞれをつないでボリューム効果を発揮する「とらぽん」のシステムが動き出すことになった。

つづく

この物語は、すべてフィクションです。同姓同名の登場人物がいても、本人に問い合わせはしないでください(笑)

閲覧数673 カテゴリ日記 コメント0 投稿日時2014/06/29 08:17
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