めし屋で40代のオバチャンから、あんたより
20才も若いんだから、うれしいだろうオジイチャンといわれたことがある。うれしくはなかったけど、なるほど、20才も若いと考えれば確かにそうだ。
僕が時おり昼ごはんを食べに行く居酒屋がある。 その店は昼は定食オンリーで、「日替わり定食」 を含めて6種類ほどのメニューがあるが、全品630円と値段も手ごろである。 ある日、豚の生姜焼きを食べたくなってその店へ行ったところ、表の立て看板に 「本日の日替わり定食・豚しゃぶ」 と書いてあった。 店へ入って座ると、40代と思われる女店員がやってきて、《今日の日替わりは、冷やし冷しゃぶでーす》 と言う。 「冷やし冷しゃぶ」・・・、僕はおかしさを噛み殺して、《冷やし豚しゃぶと違うのん?》 と聞き返す。 するとその女店員、《冷 や し 冷 しゃぶ ・・・、おかしいですね》 と言ってケラケラと笑っている。 僕は 《今までずっとそう言うてたん?》 とニヤニヤ。 女店員は 《いやー、そうかもしれません》 とまたケラケラ。全く屈託がない。 結局、僕は生姜焼きをやめて 「冷やし冷しゃぶ」 なるものを食べることにしたが、注意してみていると、あとから入ってきた客の何人かにも、彼女は 「冷やし冷しゃぶ」 を繰り返していた。 この店では3人の女店員が接客にあたっているが、全員が40前後の若いオバチャンである。そしてみんな愛想がいい。「いらっしゃいませ」 も 「ありがとうございます」 も、ほんとに嬉しそうな声と笑顔で言うから気持がいい。みんな喜々として働いているように見える。マニュアルどおりに、ロボットのような口調と作り笑顔で応対する若い女の子に比べると、何と気持のいい応対だろうか。 こういう従業員を雇っている店は、たぶん待遇もいいのだろう。時給はともかくとして、楽しく働ける環境がなければこんなに喜々としていられるわけがない。それに人選もいい。ある程度人生経験を積んだ年齢の人は、しゃべる言葉にも味があるし、安定感、安心感を客に与える。 「冷やし冷しゃぶ」 でもいいではないか。 オバチャン万歳! |