二三日前にシベリウスの音楽をあれこれ聴いていて、1枚のCDがあることを思い出した。
これは僕が作ったものだが、昔NHK FMで放送されたものをカセットテープに録音(エア・チェック)し、CDの時代になってから転写したものである。 このうち、メインになっているシベリウスの「交響曲第2番」は、今からちょうど45年前の日本万国博覧会に合わせて、フェスティバルホールで開催された一連の演奏会の一夜のライブ録音で、僕が聴きに行っていたときのものである。 それだけに、僕にとっては非常に思い出深い貴重な録音である。 オーケストラはニュー・フィルハーモニア管弦楽団(現在のフィルハーモニア管弦楽団)であったが、この演奏会にはちょっとしたハプニングがあった。それは、予定されていた指揮者ジョン・バルビローリが来日直前に急逝され、ジョン・プリッチャードが急遽代役として指揮台に立つことになったのである。
演奏曲目は当初バルビローリが振る予定だったものと全く同じだったが、最後に演奏されたシベリウスの交響曲は感動的な演奏であった。ライブ録音なので最後に盛大な拍手と歓声が入っているが、それを聞いていると、その聴衆の一人として興奮した28歳の自分がいるのを45年の時空を超えて感じるのである。 それまではシベリウスと言えば「フィンランディア」くらいしか知らなかったが、このとき以来好きな作曲家の一人になったのである。
この日の公演を含む一連の演奏会のプログラムが残っていて、都合8夜に亙って聴きに行っていることが分かった。 45年も経つと、そのほとんどが記憶から消えてしまっているが、そんな中で今も強く印象に残っているこのプリッチャード&ニュー・フィルハーモニアのシベリウスは、稀に見る名演奏だったと思うのである。 |