1,561万kW/2,039万kW (03/29 13:30)
76%
■バックナンバー
■RSSフィード
RSS 1.0 RSS 2.0 Atom 1.0
■このブログのURL
https://hyocom.jp/blog/blog.php?key=275069
2017年02月16日(木) 
とっておきの友達の物語を紹介する「ゆいトレマガジン」。3月号に掲載される、伊丹のイタリアンレストラン「アントン」のオーナーシェフ・中村明(Anton)さんのストーリーです。
ちょっとフライングでご紹介します。
http://mag.yui-tr.jp/index.html

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

「もったいない」という料理人の想いが、シェフをジビエ料理に引き込んだ!

「いい食材は捨てるところがないんですよ。みんな活かして美味しい料理がつくれる」
 兵庫県伊丹市のイタリアンレストラン「アントン」のオーナーシェフ中村明さんは、人なつっこい優しい笑顔で語ってくれた。

 伊丹のアントンと言えば、「シカ肉」料理が名物だ。
「シカ肉」は、「固い」「臭い」「不味い」などという印象と一緒に、「あんな可愛い動物は食べられない」と言われそうだ。
 狩りで入手した野生動物を調理するのは、欧州貴族に受け継がれた伝統文化で、とても高級な料理。ほんとうはとてもおいしいはずだが、日本では食用にする習慣がほとんどなかったので、食材として利用するにはいろいろと勉強が必要だった。

・イタリア料理を目指したきっかけは「名犬ラッシー」
 シックな木製の扉を開くと、白を基調とした明るい店内に、ゆったりとテーブルが配置されている。まるで我が家のダイニングにいるかと錯覚するような、アットホームでほっとする雰囲気の空間だ。
 和歌山県海南市で育ち、ぼんやりと料理人を志していた明少年。賢いコリー犬と少年の友情物語「名犬ラッシー」で、ドラマに出てきたイタリアンレストランのシーンに感激。「イタリアンのシェフになる!」と将来の進路を固めた。

・修行の中で巡り会った運命の女性
 フランス料理のルーツとなったイタリアンは、郷土の食材を活かした料理が特徴。「あまり形式ばらずに食事を楽しんでもらえるから好きなんです」と明さん。
 今でこそ、あちこちにイタリア料理店があるが、当時は和歌山はもちろん、阪神間でも数店が営業していた程度。
 直接、イタリア料理の道に進むのは難しく、高校を卒業すると単身大阪に出て、大手鉄道会社系列のホテルを皮切りに、ピザ店や洋食店で料理人修行に励んだ。
 あるとき、11歳違いの可愛い女子高校生がアルバイトに。愛妻・智子さんとの出逢いだった。
「決してぼくがひっかけたわけではありません!」とう明さんの言葉はかなり怪しい(笑)。


・夫婦に、家族に、そしてお店が♪
 高校を卒業した智子さんは調理師学校に通い、ふたりは2年後に結婚。千恵さん・美世さんという二人の娘に恵まれる。
 智子さんが育った伊丹に転居し、現在の場所に念願のレストランを開店。智子さんは、生まれたばかりの千恵さんをおぶって頑張った。
 阪神淡路大震災では、阪急伊丹駅が崩落するなど、多数の犠牲者と大きな被害が出たが、幸い店はさほどの被害もなく済んだ。
「震災のときは、仮駅舎が店の南側にでき、しばらくは復興景気で大忙しでした」と明さんは懐かしく語る。

・震災をきっかけに高校生と店主が共に育つまちづくりへ
 震災の復旧工事が一段落すると、阪急伊丹駅が幹線道路を越えた場所に移動し、3店あった大手の百貨店やスーパーも撤退。賑やかだった界隈は急に閑静な通りに一変した。
 店は暇になったが、明さんはこれを機会に地域づくりの活動に参加。忘年会で偶然隣同士になった市立伊丹高校教諭の畑井克彦さんと意気投合し、商店街活性化を高校生が企画・運営する取り組みが始まる。
 商店街での活動は、高校生が社会人基礎力を養う絶好の学びの場となり、その後、毎年数千人の市民を商店街に動員するハロウィンプロジェクトなどに発展していった。

・シカバーガーからジビエ料理へ
 高校生が空き店舗を使い、地域SNSでつながりのある兵庫県佐用町の物産を販売する取り組みが、明さんに次の展開をもたらす。
 高校生が目利きして販売していた物産の中に、野生の鹿肉を使ったハンバーガー「鹿肉バーガー(シカバーガー)」があった。
 智子さんがこれを購入、朝食にと明さんに食べさせたところ、鹿肉の処理と調理がプロの琴線に触れた――「これは面白い!」
 全国各地で野生の鹿が繁殖し、大きな被害をもたらして社会問題になっている。しかし、外見の愛らしさや馴染みのなさなどから、日本では鹿肉を食べるという習慣がない。
 欧州では、狩猟で得た天然の野生鳥獣の食肉は「ジビエ」と呼ばれて、貴族の伝統料理として古くから発展してきた食文化なのに。
 佐用で鹿肉料理が模索されていたのは、シカによる被害が年々急増している現実への対応策だった。

・丁寧な作業がおいしさの秘密
 明さんは、伊丹と佐用の地域SNSでのつながりから、猟師をしている大西茂さんを紹介してもらって、鹿肉を手にすることができた。
 大西さんが譲ってくれたのは、骨がついたままの「枝肉」。このままでは料理に使うことはできない。
 料理人修行の頃、厨房に届く仔牛の枝肉をひたすら切り分けた経験がここで生きた。
 明さんは、素早く綺麗に血抜きされた鹿の枝肉を、一定期間冷蔵庫で熟成させたのち、ステーキ用、煮込み用、モモ肉など、それぞれの用途にブロックにわける。
「血抜き」と「熟成」に加えて、このときに肉を包み込む「筋膜(筋)」を丁寧に取り除く作業が、アントンのシカ肉がおいしい秘密なのだ。
 鹿肉は牛肉と比べものにならないほど高タンパクで、鉄分・ビタミン・ミネラルも豊富、脂質は牛肉の85分の1と超ヘルシー。かむほどに深いコクとしなやかな肉の滋味が広がる。高齢者にもたっぷりと楽しんでもらえる食材だ。
「骨もデミグラスソースのベースになるので、鹿の枝肉は捨てるところがない」と明さん。
 料理人冥利に尽きる素晴らしい食材だ。
「シカ肉は臭みや固さが心配でしたが、あっさり柔らかく臭いもしない。美味しい料理でイメージが一変しました」(50代男性)とか、「とても居心地がいい。アレルギーや苦手な食材、要望に合わせてアレンジしてくれるのでありがたい」(50代女性)など、シカ肉はアントンの看板になった。

・鹿肉が精肉売り場で、牛肉や豚肉と並んで売られるようにしたい!
 兵庫県内では、年間1万5千頭以上のニホンジカが捕獲・駆除されているが、それが食用にまわっているのはわずか3%程度。
 猟師高齢化への対策、不足する処理場の整備、調理方法とレシピの普及、消費者の拡大など、市場形成への課題は多い。
「ひとりではなにも出来ない。狩る人、処理する人、調理する人、食べる人のそれぞれがつながって、思いのある人たちが一緒に動き始めることが大切」と熱く語る明さん。
 パティシエの道を進む千恵さん、コックとして修行中の美世さん。ふたりの娘さんの成長とともに、明さんと智子さんの「アントン」の夢が実現する日が来るのも、そう遠くないかも知れない。

アントンで食べられる代表的なシカ肉料理(要予約。食材が揃わない場合もあります)
・シカ肉のカツレツ デミトマトソースで
 お箸でも切れるほど柔らかいお肉。エダムチーズが味を引き立てます。
・ビーフストロガノフのビーフをシカに替えて、シカ肉のストロガノフ
 デミグラスソースとサワークリームを相まって、シェフ自慢の絶品。
・シカ肉のステーキ 赤ワインソース山椒風味
 山椒の辛さがピリリと利いて、鹿肉の旨みが増幅されています。
・シカ肉のロースト、煮詰めた出し汁に洋ワサビを添えて
 イタリア語で「モチェッタ」と言う干し肉もあります。
・シカ肉のミートソーススパゲティー
 まったくしつこくなく、あっさりとして食べやすいミートソース。
・シカもも肉のスモーク
 淡泊であっさりして、風味豊か。

 (取材記者・和崎宏)


イタリアンレストラン・アントン
伊丹市西台3丁目1-12
11:30~15:00(LO)
17:00~22:00(9時LO)
水曜定休(不定休あり)
072・770・2923

閲覧数966 カテゴリ日記 コメント2 投稿日時2017/02/16 10:54
公開範囲外部公開
コメント(2)
時系列表示返信表示日付順
  • 2017/02/16 18:34
    山田錦さん
    イタリア料理も鹿肉も好きです。ぜひ訪れたいですね。
    次項有
  • 次項有コメントを送信
    閉じる
    名前 E-Mail
    URL:
    ※画像に表示されている文字を入力してください。
■プロフィール
こたつねこさん
[一言]
地域を元気にする情報化に貢献したい♪
■この日はどんな日
■最近のファイル
■最近のコメント
■最近の書き込み