稀勢の里が二敗目の土にまみれた土曜日、深夜のニュースで翌日も土俵に上ることが報道され驚いた、続いて感激が押し寄せた。 画面の向こうの横綱の凄い気迫が伝わってくる。胸を熱く詰まらせながら思いめぐらしつついつしか寝入ってしまった。 千秋楽の朝が明けた。突然カブキには優勝への道筋が見えた。寡黙な横綱の胸中も読めた気がした。そのことをすぐひょこむにアップした。 「横綱を信じるしかないじゃないか」と家人をはじめ午後には大阪に出かけ友人達にも熱弁をふるうも皆悲観的、いや否定的でさえあった。 酔って神戸に帰る新快速で揺られながらスマホで検索し続けるも一向に結果が出てこない。と突然「優勝決定戦へ」の文字が画面にあらわれ、「ウッ」と息を飲み込んだ。 三宮駅を東口、に出て見やると街頭テレビの辺りは黒山のひとだかり。焦りを募らせつつ人ごみを縫って急いで近づく。間に合った、隣の紳士が「優勝決定戦ですよ、今からですよ」と教えて呉れる。 「知ってます、これで」と嬉しそうな笑顔に向かってスマホを掲げ笑い合って画面にくぎ付け。「勝ちますよ」と言う間もなく行事の軍配が返った、なんというタイミング。 「ウッ、ウッ、ウン」横綱と一緒に力を籠める。そして「勝ったぁー、やったぁー」と信じ続けていたカブキは思わず大声。皆しびれたのか黙っている。紳士の手を握りながら、込みあげるものを堪えた。 「すぐバスが出ますので」と踵を返してバスに。マナー違反だがまだバスは停車中、先ほど別れた友人に電話。「勝ったぞ稀勢の里、優勝や」とちょっと声を大きくまだ知らない乗客たちにも伝えた。 この日の喜びは生涯絶対忘れないだろう、いや忘れないでおこうたとえ認知症になろうとも。 |