白毫寺(びゃくごうじ)を拝観したあと、元来た道とは別ルートを歩いて出発点の近鉄奈良駅まで戻りました。
西大寺と同じ真言律宗に属する白毫寺は、高円山(たかまどやま)の山麓にあるところから、山号を高円山(こうえんざん)と称しています。 小さな寺ですが、近年は「花の寺」として知られ、特に萩が有名です。 境内までは長い石段が続き、その両脇にはびっしりと萩が植えられています。 《そろそろ咲き始めているかな?》 と思っていましたが、期待に反してほとんどは蕾の状態でした。
江戸時代に再建されたという本堂は、さほど立派なものではありません。 山側に設けられた「石仏の道」を北へ回ったところに「宝蔵」があります。建物は昭和58年に建てられたもので、耐火構造のように見えます。 ここには、阿弥陀如来座像を始め7体の仏像(いずれも重要文化財)が納められていますが、阿弥陀如来座像はこの寺の本尊で、その前には僧侶が座る場所が設置されていました。これは非常に珍しいことで、本堂に置かれている阿弥陀如来は身代わりの本尊なのです。
宝蔵の西側は展望台のようになっていて、眼下に奈良市街が広がります。ここは標高170mで、奈良市の中心部より100mほど高いのです。遠くに見える山並は、南(写真の左)から葛城山、二上山、信貴山、生駒山です。 ただ、北の方向は樹木が茂っていて見ることが出来ないのが残念です。
本堂の裏まで戻ってくると、萩が大分咲いていました。中には白い花のものもありました。 本番の29日には、参道の石段脇も含めて見ごろになっていることでしょう。
帰り道の村の中で、よく目立つ火の見櫓が立っていました。半鐘が防災無線の大きなスピーカーに取り巻かれ、肩身が狭そうに見えます。
村を北へ抜けると、新薬師寺の西隣に「奈良市写真美術館」があります。この美術館は、生涯奈良の風景と寺社、仏像を撮り続けた写真家・入江泰吉氏から全作品が寄贈されたのを機に、氏の作品の所蔵と展示を目的に建設されたものです。http://irietaikichi.jp/ 黒川紀章氏の設計になる建物は、周囲の景観に配慮して地上1階・地下1階の瓦葺とし、地形を上手く利用して地階の一部に光が入るように設計されているほか、特筆すべきは1階の外側に浅い池を配置したことで、建物が水に浮かんでいるように見えます。 玄関は道路から半階分高い位置にあり、明るく開放的なロビーの奥に喫茶室があります。(展示室以外は無料なので、お茶だけ飲みにくることもできます。) 展示室は地階にあります。しばらく来ていなかったので展示を観ることにしましたが、入江さんの作品のほかに現代作家・三好和義氏の「室生寺」という展覧会が開催されていて、折よく作者のトークセッションの最中でした。
写真美術館から高畑の古い町並みを抜けましたが、その一角で目に付いた風景です。 古い木造の長屋に煉瓦積みの塀、このアンバランスが妙に調和していて、昭和初期を髣髴させる風景でした。
奈良公園の南側に3つの池が並んでいます。西から猿沢池、荒池、鷺池ですが、 荒池は真ん中を道路が横断しているので池は4つに見えます。 僕は、この中で鷺池がいちばん好きです。西岸から池を見ると、遠くに高円山が見えて、とてもいい風景です。 それに、比較的観光客が少ないのもいいところです。猿沢池の1/5もないでしょう。 ただ、池の中央に架かっている橋の北岸寄りに「浮見堂」と称する建物が建っていますが、それが大き過ぎて風景のよさを減殺しているのが残念なところです。この建物が半分くらいの規模だったらよかったのになぁ といつも思います。
ここから先は、また観光客の雑踏に飲み込まれて近鉄奈良駅まで歩きました。 歩いた距離は12kmほどだと思いますが、久しぶりだったので脚からお尻にかけて筋肉痛を覚えました。 |