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2006年11月24日(金) 
【連載】ひょこむ的SNS活性化法-ネット桃源郷(1)

彼の自宅の電話は、いつも繋がりにくかった。夜8時を過ぎると、まずいつも話し中で、携帯電話もメールもない時代には、夜襲をかける以外に連絡の取りようがなかった。別に長電話の好きなお婆さんがいたわけではない。電話会社に内緒で彼の部屋にこっそりと分岐された電話線の先には、お弁当箱くらいの四角い箱が繋がっていて、始終忙しなくランプをチカチカと点滅させている。そのまた先には、机ひとつを占領して大きなコンピュータが鎮座しており、これもカチャカチャと音を立てて動いていた。深夜2時を過ぎるまで毎日その光景に変化はなかった。

今から約20年前、当時販売され始めたばかりの通信モデムを、1セット50万円以上したパソコンにつなぎ、シングルユーザーのパソコン通信ホスト局を、彼はひとり自前で立ち上げていた。数人の仲間で始めた遊びはすぐに何十人もの新しい仲間に拡がり、彼の自宅の電話はいつも話し中になった。家族の苦情を受けた彼が、なけなしのボーナスを叩いて電話回線を増設するのに、さほど時間はかからなかった。

彼には口癖があった。「ここから未来が始まる。ぼくたちはコミュニケーションメディアを手に入れたんだ」。アルビン・トフラーは著書『第三の波』(1980)の中で、情報社会の到来を高らかに歌い上げ、彼はその伝道師だった。自分のパソコンも、電話回線も、デスクも、そして膨大な時間をかけてもかえられない夢が、彼を突き動かしていたのである。目で追える速度で画面を流れる文字は、彼の夢を実現させる第一歩であると誰もが信じさせられた。

彼の仲間達はそれぞれのパソコンを使って、彼のデスクのホストコンピュータにメッセージを送った。それを読んで、他の仲間が返信をいれる。仕事の話、よくいくランチのお店の話題、スキーの報告、家族の爆笑ネタ。話題に事欠くことはなかった。時には、人生相談などシリアスな話しにも、皆が真剣に向き合い励まし合った。電子掲示板(BBS)というメッセージ交換の場所が、彼らの楽しみの呼称となった..「草の根BBS」と。

草の根BBSは、善意に溢れていた。それは私財や時間をなげうってホスト局を立ち上げ運営してくれている彼への敬意もあったのだろう。そこに参加する仲間達のすべてが情報社会の未来に明るい夢を重ね合わせていたのもある。中でも最大の理由は、彼らが温かいハートを持っていて、善意を提供することを惜しまず、支え合うことにどん欲であったことかも知れない。

1986年から、大手のパソコンメーカーが全国的な規模の商用BBS事業を始める。富士通のNifty-Serve,NECのPC-VAN,IBMのPEOPLEなどが拡大していく中で、ビジネスモデルにならない草の根BBSは徐々にひとつずつ姿を消していった。メーカーが運営するBBSは、パソコン通信という仕組みを広めることについては大きな成果を挙げたが、囲い込みのビジネス手法では、草の根BBSが描いた「善意の地域ネットワーク」が構築できようはずもなかった。時代はせっかく個人がつかみかけた新しいメディアを、強引に取り上げてしまったのである。

閲覧数4,217 カテゴリ出版 コメント6 投稿日時2006/11/24 17:42
公開範囲外部公開
コメント(6)
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  • 2006/11/24 19:44
    はやく続きが読みたいです。  保♪
    次項有
  • 2006/11/24 19:44
    jamjamさん
    興味あるお話ですね。次号を楽しみにしています。
    次項有
  • 2006/11/24 20:47
    とっても勉強になります。続き、待ってます~☆
    次項有
  • 2006/11/25 09:07
    この時代の人は、もうほとんど生存していないと思いますが(笑)、お気づきの点などありましたら、コメントくださいね。よろしくお願いします。
    次項有
  • 2006/11/25 11:33
    オメメさん
    情報という言葉の日本での初出は森鴎外が「藤鞆絵」の中で、「佐藤君は第三の情報を得た」と書いています。明治44年のことです。
    次項有
  • 2006/11/25 11:43
    オメメさん
    わしゃ生きとるで、博物館に入れるのなら、若くて美人を二、三人付けて、暖冷房をいれて、
    フランス人のシェフと中国人の料理人を付けてくれないと入りませんぜ。
    次項有
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