黒+黄+緑=民主党
黄は黄なりに、緑は緑なりに、好き勝手なこと言わせてもらいます、ですよね。
つまるところ、ドイツ国民はしばらくは民主党政権を受容すると。
トルコにんまり、ロシア満面の笑み。
あっ、民主党ってのは日本のそれのことです。
私は明日の午後に家を出て(一人で)帰国するので、11月半ばに(じいさんと一緒に)ドイツに戻るまでは土曜日のブログが最後になると思っていたが、今、日本の新聞の報道を見たら総選挙の結果についてどうもいい加減なことが書かれていたので、ここに最新状況と今後予想される展開を記す。 9月24日(日)20時30分現在の選挙結果は次の通り。 CDU/CSU 32.8% (-8.7%) SPD 20.8% (-4.9%) AfD 13.1% (+8.6%) FDP 10.3% (+5.5%) 緑の党 9.1% (+0.7%) 左翼党 9.0% (+0.4%) この結果を受けて、SPD党首のマーチン・シュルツはただちに、大連立は組まず野党となることを宣言した。 (このオッサン、私は先週木曜日に行ったハノーファーで選挙演説をしているのを見た。初秋の陽射しに禿げ頭が光っていた。ちなみに欧州では禿はとても多いので、あまりジョークやからかいの種にはなりません。) SPDは確かに支持率を減らしたが、最大の敗者はCDU/CSUだとシュルツは嘲って、メルケルに「あんた、辞めたら?」みたいなことを言っていたけど、支持率は減ってもCDU/CSUは最多票を獲得したから、メルケル続投はしょうがない。 私がびっくりしたのは緑の党の得票数。まさか9%まで行くとは思わなかった。8%だって危ないと予想していたのに。 私が推察するに、これは私のバーデン・ヴュルテンベルク州の緑の党の知事が非常に評判がいいため、この州での得票が多かったからではないか。 それから、この州の大学町テュ―ビンゲンの市長ボリス・パルマ―も人気があり、最近出した本が大好評なので、それにも助けられたのだろう。 二人とも現実主義者で、ベルリンの左グループの暴走にブレーキをかけている。 (パルマ―については、2016年3月16日のブログに書いたので、よろしかったらご覧になって下さい。) さてさて、AfDの13.1%はメディアと他の政党を驚愕させたが、私はちょっと少なめでがっかりした。 とはいえCDU/CSUとSPDに続く第三の政党というのは、確かに快挙である。 各放送局は真っ先に、CDU/CSUは「ショックで固まってしまっている」と報道していた。事実、AfDの票は大半がCDU/CSUから奪ったものだという。SPDもAfDのためにかなりの票を失った。 各党首が並んでのインタビューで、AfD代表のお爺さんはさっそく司会者からも他の党からも虐められていたが、勝っちゃえば余裕。それにこの人、無駄に年とってないし。 しかしAfDとFDPを除く党にとっての今回の問題は、2013年の4政党に対して6政党となって631議席を6党で分けるため、各党の議席数がかなり減ったということである。 CDU/CSU 217 ←311 SPD 134 ←193 AfD 89 FDP 70 緑の党 62 ←63 左翼党 59 ←64 緑の党も左翼党も、支持率は増えたのに議席は減ってしまった。CDU/CSUに至っては94人も! ということは、かなりの議員が失業することを意味する。 別に私が心配することじゃないけど。 さて、シュルツが「大連立はない」と宣言したので、これからメルケルは連立相手を探さねばならない。 SPDだって二度も煮え湯を飲まされたら、懲りますよ、そりゃ。 で、今の段階ではFDPと緑の党の三党での連立になる可能性が高い。というより他の選択肢はない。 ところで6つのドイツの政党にはそれぞれシンボルカラーがあり、CDU/CSUの色は黒。SPDは赤。緑の党はもちろん緑。 左翼党はやはり赤で、SPDと紛らわしいので濃い臙脂色のことも多い。 FDPは黄色、AfDは空色である。 それでCDU/CSU、FDP、緑の党の連立になると、ジャマイカ連立と呼ばれる。ジャマイカの国旗は黒・黄・緑だから。 だがこの連立での組閣は、相当手間取るだろう。企業の味方FDPと企業家を資本主義の豚と呼ぶ緑の党では、差がありすぎる。 どんな法案も難航すること必至である。暗礁に乗り上げてばかりかもしれん。 その前に、今回は緑の党もFDPもCDU/CSUの衰退と弱みを知っているから、組閣に当たっては相当強気の要求をしてくるはず。 FDPは2009年~2013年でうっかりCDU/CSUに妥協したため、その後の4年間は冷や飯食いの立場に置かれた経験があるから、かなり強硬な態度で臨むだろう。 緑の党は、例の「CDU/CSUと組むとろくなことはない」というジンクス通りSPDの二の舞にならないよう、これまた妥協を拒むだろう。 今の予想では、クリスマスまでに新政権が発足できるかどうか怪しい、とまで言われている。 日本の新聞は、メルケルの続投でポピュリストの前進が阻まれ欧州はひとまず安心、フランスと協力して欧州を安定させるだろう、なんて書いてたけど、とんでもない。(記者たるもの、自分がこうあってほしい、と望むところに従って書いてはいけません。) 組閣が一向に進まないと、フランスも動きが取れなくなる。マクロン大統領は次期メルケル政権に対し南欧債務国の救済を急ぐよう求めるつもりで、選挙の終わるのを首を長くして待っていた。 彼にとっての最大の願いは欧州共同債の発行で、これによってEUのどの加盟国が破綻しかけても、共同で、ということはドイツの資金で、救おう、というのである。要するに、危険な債務者の保証人にしようということですね。 しかしドイツがこれをOKしたら、そうでなくても落ち目のCDU/CSUは墓穴を掘ることになる。欧州拡大派の緑の党はマクロンを支持するだろうが、FDPの方は反対。 おまけにユーロ批判のAfDが90近い議席を持っている。 というわけで、欧州はこれから安定、というわけにはいかない。(ついでに、最近マクロンの党は議会で過半数を割ったので、この兄さんも前途多難、欧州を救う前に自国をなんとかしないと。) メルケルさん、もしかしたら第4次内閣は散々なものになり、2017年の時点で引退しておけばよかった、と後悔するかもよ~。 追伸: 上記はドイツ時間で昨夜の結果に基づいているので、今朝10時の最終結果を添付します。やっぱり左翼党が最後に追い込んで、緑の党ににちょっと勝っちゃった。 |