1,739万kW/2,121万kW (03/28 18:40)
81%
■バックナンバー
■RSSフィード
RSS 1.0 RSS 2.0 Atom 1.0
■このブログのURL
https://hyocom.jp/blog/blog.php?key=282254
2017年09月25日(月) 
私は明日の午後に家を出て(一人で)帰国するので、11月半ばに(じいさんと一緒に)ドイツに戻るまでは土曜日のブログが最後になると思っていたが、今、日本の新聞の報道を見たら総選挙の結果についてどうもいい加減なことが書かれていたので、ここに最新状況と今後予想される展開を記す。

9月24日(日)20時30分現在の選挙結果は次の通り。
                       
CDU/CSU   32.8%  (-8.7%)
SPD 20.8%  (-4.9%)
AfD 13.1%  (+8.6%)
FDP      10.3%  (+5.5%)
緑の党     9.1%   (+0.7%)
左翼党     9.0%   (+0.4%)

この結果を受けて、SPD党首のマーチン・シュルツはただちに、大連立は組まず野党となることを宣言した。

(このオッサン、私は先週木曜日に行ったハノーファーで選挙演説をしているのを見た。初秋の陽射しに禿げ頭が光っていた。ちなみに欧州では禿はとても多いので、あまりジョークやからかいの種にはなりません。)

SPDは確かに支持率を減らしたが、最大の敗者はCDU/CSUだとシュルツは嘲って、メルケルに「あんた、辞めたら?」みたいなことを言っていたけど、支持率は減ってもCDU/CSUは最多票を獲得したから、メルケル続投はしょうがない。

私がびっくりしたのは緑の党の得票数。まさか9%まで行くとは思わなかった。8%だって危ないと予想していたのに。

私が推察するに、これは私のバーデン・ヴュルテンベルク州の緑の党の知事が非常に評判がいいため、この州での得票が多かったからではないか。

それから、この州の大学町テュ―ビンゲンの市長ボリス・パルマ―も人気があり、最近出した本が大好評なので、それにも助けられたのだろう。

二人とも現実主義者で、ベルリンの左グループの暴走にブレーキをかけている。

(パルマ―については、2016年3月16日のブログに書いたので、よろしかったらご覧になって下さい。)

さてさて、AfDの13.1%はメディアと他の政党を驚愕させたが、私はちょっと少なめでがっかりした。

とはいえCDU/CSUとSPDに続く第三の政党というのは、確かに快挙である。

各放送局は真っ先に、CDU/CSUは「ショックで固まってしまっている」と報道していた。事実、AfDの票は大半がCDU/CSUから奪ったものだという。SPDもAfDのためにかなりの票を失った。

各党首が並んでのインタビューで、AfD代表のお爺さんはさっそく司会者からも他の党からも虐められていたが、勝っちゃえば余裕。それにこの人、無駄に年とってないし。

しかしAfDとFDPを除く党にとっての今回の問題は、2013年の4政党に対して6政党となって631議席を6党で分けるため、各党の議席数がかなり減ったということである。

CDU/CSU  217 ←311
SPD     134 ←193
AfD     89
FDP     70
緑の党    62 ←63
左翼党    59 ←64

緑の党も左翼党も、支持率は増えたのに議席は減ってしまった。CDU/CSUに至っては94人も! ということは、かなりの議員が失業することを意味する。

別に私が心配することじゃないけど。

さて、シュルツが「大連立はない」と宣言したので、これからメルケルは連立相手を探さねばならない。

SPDだって二度も煮え湯を飲まされたら、懲りますよ、そりゃ。

で、今の段階ではFDPと緑の党の三党での連立になる可能性が高い。というより他の選択肢はない。

ところで6つのドイツの政党にはそれぞれシンボルカラーがあり、CDU/CSUの色は黒。SPDは赤。緑の党はもちろん緑。

左翼党はやはり赤で、SPDと紛らわしいので濃い臙脂色のことも多い。

FDPは黄色、AfDは空色である。

それでCDU/CSU、FDP、緑の党の連立になると、ジャマイカ連立と呼ばれる。ジャマイカの国旗は黒・黄・緑だから。

だがこの連立での組閣は、相当手間取るだろう。企業の味方FDPと企業家を資本主義の豚と呼ぶ緑の党では、差がありすぎる。

どんな法案も難航すること必至である。暗礁に乗り上げてばかりかもしれん。

その前に、今回は緑の党もFDPもCDU/CSUの衰退と弱みを知っているから、組閣に当たっては相当強気の要求をしてくるはず。

FDPは2009年~2013年でうっかりCDU/CSUに妥協したため、その後の4年間は冷や飯食いの立場に置かれた経験があるから、かなり強硬な態度で臨むだろう。

緑の党は、例の「CDU/CSUと組むとろくなことはない」というジンクス通りSPDの二の舞にならないよう、これまた妥協を拒むだろう。

今の予想では、クリスマスまでに新政権が発足できるかどうか怪しい、とまで言われている。

日本の新聞は、メルケルの続投でポピュリストの前進が阻まれ欧州はひとまず安心、フランスと協力して欧州を安定させるだろう、なんて書いてたけど、とんでもない。(記者たるもの、自分がこうあってほしい、と望むところに従って書いてはいけません。)

組閣が一向に進まないと、フランスも動きが取れなくなる。マクロン大統領は次期メルケル政権に対し南欧債務国の救済を急ぐよう求めるつもりで、選挙の終わるのを首を長くして待っていた。

彼にとっての最大の願いは欧州共同債の発行で、これによってEUのどの加盟国が破綻しかけても、共同で、ということはドイツの資金で、救おう、というのである。要するに、危険な債務者の保証人にしようということですね。

しかしドイツがこれをOKしたら、そうでなくても落ち目のCDU/CSUは墓穴を掘ることになる。欧州拡大派の緑の党はマクロンを支持するだろうが、FDPの方は反対。

おまけにユーロ批判のAfDが90近い議席を持っている。

というわけで、欧州はこれから安定、というわけにはいかない。(ついでに、最近マクロンの党は議会で過半数を割ったので、この兄さんも前途多難、欧州を救う前に自国をなんとかしないと。)

メルケルさん、もしかしたら第4次内閣は散々なものになり、2017年の時点で引退しておけばよかった、と後悔するかもよ~。

追伸:

上記はドイツ時間で昨夜の結果に基づいているので、今朝10時の最終結果を添付します。やっぱり左翼党が最後に追い込んで、緑の党ににちょっと勝っちゃった。

閲覧数950 カテゴリ日記 コメント8 投稿日時2017/09/25 05:33
公開範囲外部公開
コメント(8)
時系列表示返信表示日付順
  • 2017/09/25 07:02
    黒+黄+緑=民主党
    黄は黄なりに、緑は緑なりに、好き勝手なこと言わせてもらいます、ですよね。
    つまるところ、ドイツ国民はしばらくは民主党政権を受容すると。
    トルコにんまり、ロシア満面の笑み。

    あっ、民主党ってのは日本のそれのことです。
    次項有
  • 2017/09/25 15:03
    鉛筆ベッガさん
    > かーりーさん

    そういうことですね。今朝のラジオで結果分析をしていましたが、メルケルもシュルツも選挙戦で、今国民の最大の懸念である「難民の流入」とそれによる労働市場の混乱、難民扶養のための増税、何よりも犯罪の増加、といった問題に一切触れなかったことで国民の信頼を失った、と言っていました。その通りです。珍しく「御用レポーター」ではない人物でした。

    AfD,FDPの勝因の一つは、CDU/CSUとSPDの今の体たらくに業を煮やしたこれまでの「選挙無視派」「お任せ派」が、もはや自宅にとどまっていてはダメと、投票所に足を運んだからだそうです。

    実は選挙の1週間ほど前に、EU委員長のユンケルがストラスブールの議会で演説して、EU拡大路線は変えない、ユーロも加盟国をどんどん増やす、まずはルーマニアとブルガリアから、と宣言した。

    これにはドイツ国民は絶句で、スイス人は「EUは3つも4つもギリシアを抱えることになるね」などと嘲笑。

    このニュースを聞いたとき、こともあろうにメルケルの太鼓持ちといわれるユンケルがこの時点でこんなこと言ったら、間違いなくCDU/CSU・SPDに逆風だ、と思ったのですが、メルケルはユンケルを黙らせている余裕はなかったようです。

    ちょっと分かりにくいかもしれませんが、2013年から今日までの支持層の変化を示すグラフを添付します。今朝の新チューリッヒ新聞(NZZ)の電子版に掲載されていたものです。
    次項有
  • 2017/09/27 01:51
    > ベッガさん

     お隣ではマクロン陣営も苦戦してるみたいで、欧州全体がいわゆる民主党化しそう。どこもかしこも中道苦難の時代なのでしょうね。これから数年間は『憂鬱な欧州』の時代だと思います。難民問題とかいろいろあるにせよドイツは経済が好調なので、そこは踏ん張った方がいい。その部分で中道メルケルは踏ん張れるか。

     人なんて単純なもので、政治的・イデオロギー的な不満が蔓延しても、日々の暮らしが何とかやっていけるなら、殺し合いとか戦争なんて面倒くさいものですよ。そういう風に思っているので、私の場合、基本、マクロ経済政策を政治評価の中心に置いてます。マクロ経済無知の護憲平和環境ってのが一番ヤバい。(護憲平和環境を否定してるわけではないです。話の要諦は『マクロ経済無知の』ってとこです。誤解なきよう。)

     国民があってそれを目的とした経済があって、そこを破壊するのは常に『善意』だなあと最近そう思ってます。日本の近代史が何より雄弁に物語ってる。

     ヨーロッパと朝日の善意には儀礼的無関心で行くことに決めました。それがさしあたっての私なりの結論です。
    次項有
  • 2017/09/28 19:16
    鉛筆ベッガさん
    > かーりーさん

    東京によって先ほど自宅に着きました、いかれてたパソコンが奇跡的に機能しているので、とりあえず高知からコメントにお礼。

    東京ではホテルに着いた途端、テレビで目にしたのが民進党が希望の党に「合流」というニュース。なんですか、これ。

    どんな手段を講じてでも安倍政権をつぶす、って前川さん、政治の場を仇討ちの舞台に。「善意」の仮面すら脱いだのね。

    フィナンシャルタイムスもドイツを蝕む極右なんて言っちゃっている。蝕んでるはAfDだけじゃないけどね。やっぱり攻撃して一番無難な悪役が必要だから。
    次項有
  • 2017/09/29 08:08
    > ベッガさん
    > フィナンシャルタイムスもドイツを蝕む極右なんて言っちゃっている。

     これ面白いのかなと興味津々なのだけどドイツ語分からねえw この手のコメント欄だからシンパとアンチと冷やかしのモザイクなのだろうけれども... いつかエントリに取り上げてくださいませ。とても、とてもとても、興味があります。
     ↓
    http://www.zeit.de/politik/deutschland/2017-09/wahl…d#comments

     それから一応言っとくけど、
    > どんな手段を講じてでも安倍政権をつぶす
    と言い放ったのは前川さんではありませぬ。

     前田さんですよ。

     ............マエダァ???
    次項有
  • 2017/09/29 23:24
    鉛筆ベッガさん
    > かーりーさん

    ここのドイツ語別にむずかしくないのですが、訳文を入力するのが大変なんです。すごく使いづらいパソコンなので、長いブログは書けない。ドイツに戻ったらエントリしますね。

    話は違うけど、民進党のやり方に対する共産党の怒り、分かる。共産党を支持するつもりは毛頭ないけど、こんな仕打ちに会ったら、誰だって怒るわさ。
    次項有
  • 2017/09/25 09:08
     帰国準備で忙しいのに、速報、感謝です。

    > というわけで、欧州はこれから安定、というわけにはいかない。

     なるほど。背景がよく分かりました。

     日本も、今夕、安倍首相が、28日衆院を解散を発表します。「10月10日公示-10月22日投開票」になりそうです。
     小池新党が150人擁立目指すとか。日本のこころ・中山恭子代表、福田峰之副大臣が合流表明。民進、旧みんな所属議員も雪崩込む情勢です。
     この新党、何を目指して日本をどう動かそうとしているのか、皆目見当がつきません。;^^

     写真は、NHK衛星第1テレビジョンがけさ流した、France 2で毎日20時に放送されるニュース(Journal de 20 heures)から
    次項有
  • 2017/09/25 15:19
    鉛筆ベッガさん
    > 南総の寅次郎さん

    小池さん、今の人気に酔って大失態をおかさねばいいのだけれど。「希望の党」?そんな少女コミックみたいな題つけて。

    あ、付記しておきますが、ドイツ国会議員の数は631人より多いんです。ほとんどが比例制で選ばれるけど、若干「小選挙区制」で選ばれる議員がいますので。

    この人達は所属政党を鞍替えしても議席は失いません。そのため最近緑の党の女性がCDUに移ったニーダーザクセン州で、SPD・緑の党の連立政府の過半数が崩れ、再来週に州選挙が実施されることになりました。

    今回のCDU/CSU及びSPDの得票率は、戦後最低だそうです。この二党、国民を完全になめていたとしか思えない。猛反省すべし。
    次項有
  • 次項有コメントを送信
    閉じる
    名前 E-Mail
    URL:
■プロフィール
ベッガさん
[一言]
自分の好きなことがやれる時間があるのはいいですね。
■この日はどんな日
書き込みはありませんでした。
■最近のファイル
■最近のコメント
■最近の書き込み