珈琲のない珈琲で全く演唱する価値もなければ聞く値打ちもないと常々からカブキは思っている。 昨日は「奈良タンゴ祭」に行って来たが次々に登場するタンゴ演唱者を図らずも聴き比べる機会ともなった。 一番は何と言っても「ザ・ギターデュオ」であろう。これまでも何度か聴く機会があったが昨日ほどそのセンティミエント溢れる音に心震えた記憶はない。 ロサリオ出身のこの師弟デュオは二部のトップに登場したのだが、一部で登場した演唱の中にセンティミエントに欠けるものが散見され辟易していたからであろう。 続く演唱の中ではSayacaのタンゴ歌唱に成長著しいところを見い出し感銘を受けた。以前のブルース調が影を潜め素晴らしいタンゴになっていた。 ひきかえ前半に登場したKaZZmaの歌の劣化ぶりには失望以外の何物もない。まぁシェイスモはやめたようで好いのだが、全くセンティミエントが無い、今後の転換に期待したい。 もうひとつは冗長なインストゥルメンタル演奏になりがちなピアソラ音楽の採りあげ方だ。 一部に登場したプエルタンゴの一曲はやはり眠気をもよおす演奏となってしまった。独りよがりではなく聞き手を飽きさせない思い切った編曲に挑戦して欲しい。 二部のギターデュオはピアソラのギター組曲の第一楽章を割愛して演奏したが眠くはならなかったもののやはりややもすれば退屈ではあった。 はっきり言ってピアソラ音楽はピアソラ楽団以外で聴いてもしょうがない、最近カブキはそう思うようになった。 それほど再現は難しいのに世には譜面だけ追いかけたような演奏が多いのには全くうんざりする。 トリで登場したアストロリコ、一曲目では指が温もっていなかった部分もあったがコントラバスを除けばさすが円熟のアンサンブルであった。 特にバイオリンが冴えに冴え渡り好い演奏であった。タンゴのインストゥルメンタルではバイオリンが主役であると改めて感じさせる名演だった、喋るのを抑えて演奏に集中したせいか? |