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2012年03月30日(金) 

腹八分目が健康や長寿に役立つワケ

 

昔から、日本では「腹八分に医者要らず」などと言われてきました。健康維持や長寿に腹八分目がどう関わっているのか、近年いろいろと研究報告がされているので、まとめてみました。


執筆者:南 恵子

NR・サプリメントアドバイザー / 食と健康ガイド

■昔からの健康の秘訣「腹八分目」

 

平均寿命だけでなく、健康寿命をのばすことが重要です。
平成23年版『高齢社会白書』によると、我が国の総人口は2010年10月1日現在、1億2,806万人。65歳以上の高齢者人口は過去最高の2,958万人で、総人口に占める割合は23.1%、5人に1人は高齢者です。2055年には、2.5人に1人が65歳以上、4人に1人が75歳以上と見込まれています。

さらに2009年度の国民医療費は36兆67億円となり、1人あたりの国民医療費は年間で28万円で、毎年増加しています。これからの日本社会の先行きを考えると、できるだけ自分で健康を維持していくことを心がけたいものです。

江戸時代の儒学や本草学の学者であった貝原益軒がまとめた『養生訓』には、漢方医学書や養生書から日常生活に役だつ記述や、また自分自身の体験等をもとに、健やかに生きるための知恵が示されています。その中の飲食の章には、「腹八分目」や「食は控えめでちょうどよい」「ものたりないくらいがよい」「腹のなかを戦場とするな」といった、食べ過ぎを諌める言葉がいくつかでてきます。

約300年も前にかかれた『養生訓』や、先人の言い伝えの中には、今では間違いであると考えられるものもありますが、科学的な裏付けもされるようになったものもあります。

 

■「腹八分目」で寿命が延びる?

 

腹八分目、つまり控えめに食べるエネルギー制限食で寿命がのびる研究は、80年ほど前から行われていました。原生動物やミジンコ、サクラグモ、ラットなどの動物種において、通常食よりもエネルギー制限食の方が、平均寿命が1.4倍から1.9倍延びたという結果が出たのです。

その後も動物レベルの研究は行われ、エネルギー制限食を摂ることで寿命が延びるだけでなく、様々な生活習慣病や加齢による症状の予防改善に役立つのではないかというような様々な報告があります。特に近年では、長寿や老化をコントロールする遺伝子と関係するのではないかと考えられています。

金沢医科大学のサイトでは次のように説明しています。
ヒトのサーチュインは7種類(SIRT1~SIRT7)あります。最近の研究成果から、カロリー制限によって活性化されるサーチュイン遺伝子は、長寿に関連する細胞修復、エネルギー生産、アポトーシス(プログラム細胞死)に好影響を与えるのみならず、インスリン抵抗性も改善することが明らかにされてきました。

 
■「腹八分目」はメタボや脳機能にも影響

 

同大学では、サーチュイン遺伝子を活性化させる新たな薬物が登場すれば、インスリン抵抗性が関連するメタボリックシンドロームや糖尿病の克服に繋がる他、癌抑制および認知機能の維持など重要な役割を果たすのではないかと考えられ、また極最近、Srit1遺伝子を活性化することで慢性腎臓病を改善する仕組みを、金沢医科大学と、滋賀医科大学がマウス実験で解明されました。

東京大学と米国ウィスコンシン大学では、摂取カロリーを抑えると、加齢に伴い聴覚が低下する「老人性難聴」になりにくくなり、それには長寿に関係するSirt3という遺伝子がかかわっていることをマウスの研究で解明したと発表されています。

また2011年12月にはイタリア聖心カトリック大学医学部の研究で、マウスでの実験で、エネルギー制限することが脳の機能を良好に保つためにも役立つという発表もありました。

こうした一連の研究をもとに、例えば赤ワインに含まれるレスベラトロールという成分はサーチュインを活性化させ、血管内皮細胞の動脈硬化を防ぐ機能を高めることなどが分かっています。このような長寿遺伝子や他の関連タンパク質を活性する成分を活用した新薬の開発などにも研究が進められています。

 

■「腹八分目」をどう考える?

 

現在行われている実験の中にはヒトレベルのものもあるかもしれませんが、まだまだ小規模であったり、多くは動物実験です。まだ人間にそのまま当てはめてよいのかどうかは明確ではありません。

研究報告の中には、腹六分目という厳しい条件もあるようですが、あまり厳しく制限すると、栄養面でのバランスをとりにくくなります。エネルギーや栄養素が不足しても健康障害は起きてしまいます。食の細いお年寄りや、やせ嗜好のある女性が、今よりもさらに控えめにするのは危険です。あくまで食べたいだけ食べるような食べ方はやめて、適量を守るという、まさに「腹八分目」が適切なのだと思います。

「カロリーさえ低ければいいの?」という記事でも書きましたが、エネルギーの数値にとらわれすぎて、摂取量が少なければ何を食べてもよいわけではなく、幅広い栄養成分が必要です。詳しくは、記事をお読みください。

 

■計算せずに、「腹八分目」にするコツ

 

仕事をしている多忙な現代人が毎食エネルギー計算を細かくするのは難しいのが現実です。腹八分目にするためのいくつかのポイントをご紹介します。

まずは、きちんと3回、ほぼ規則正しいリズムで食事ができているならば、まずは実験の動物のように食べたいだけ食べ続けている状態ではないと言えるでしょう。1回の食事はできるだけ1汁2~3菜を目安にバランスよくを心がけましょう。また夜遅い食事は、軽いものにしましょう。

食事と食事の間に、適量とる間食は、食の細い人や、食事が夜遅くなる人には必要な場合もあります。しかし、間食をだらだら食べ続けているようなタイプや、しかも甘いものは食べないけれどスナック菓子が好きというタイプは、油断できません。スナック菓子の中には、甘いお菓子同様に高カロリーのものもあるので要注意です。

余分な脂質はできるだけカットすることをまず意識しましょう。揚げ物よりは焼き物、霜降り肉よりは赤身の多い肉、デミグラスソースよりは和風おろしソースというように。

というのは、ごはんなどの糖質やタンパク質は4kcal/1gに比べて、脂質は9kcal/1gで、1g当たりのカロリーが2倍以上になります。もちろん脂質も必要な栄養素ですが、現代の日本人の多くは、脂質はとりすぎの傾向がみられるからです。

肉類や魚類に含まれているタンパク質も必要な栄養素です。タンパク質を控えすぎても、すぐにおなかがすいてしまい、間食をだらだらしていれば逆効果です。また特に高齢者は肉類などは避けがちですので、意識してタンパク質をとる必要があります。

例えば私は、ハンバーグでもミンチは半分で、半分は豆腐、あるいは蓮根等を加える等して、ボリューム感はありながら低カロリーにし、野菜をとりやすくしたりしています。

 

■よく噛むことも忘れずに。

 

幅広い食品をまんべんなく食べた方が健康のためにはよいので、何を食べるかの前に、どう食べるかも大切です。よく噛んでゆっくり食べること。しっかり噛まずに早食いの人ほど食べ過ぎて肥満になりがちですし、噛むことで満腹感にもつながります。

できるだけ根野菜、豆類、ナッツ類などの「かたいもの」、イカ・タコ・コンニャクなどの「弾力のあるもの」、切干し大根や海草・キノコなど繊維質の多く含まれているものを選んで食べると、不足しがちや野菜や海草、豆類などを自然と選びやすくなります。

主食のごはんに、玄米や発芽玄米・雑穀などを混ぜたりするのも様々な栄養素の摂取や食物繊維をとることになり、白米だけよりもグラム当たりのエネルギーが減り、またよく噛むことにつながります。


参考/
・平成23年版 高齢社会白書・概要版 (内閣府)
・平成21年度国民医療費の概況(厚生労働省)
・『口語 養生訓』(日本評論社)
・「長寿遺伝子Sirt1」(ネスレ栄養科学意義)
・「カロリー制限が長寿をもたらす仕組み」(ネスレ栄養科学会議)
・「カロリー制限による健康効果にタンパク質プロヒビチンが関与する可能性を発見」(東京大学大学院農学生命科学研究科)
・抗老化・寿命延長におけるカロリー制限の役割(中部大学応用生物学部)
・「エイジングとアンチエイジングな食べ方/白澤卓ニ」(『月刊食生活2009/07』)

 



サーチュイン遺伝子


閲覧数94 カテゴリ食、食と心身の健康、医食同源、食源病退治 コメント0 投稿日時2012/03/30 09:55
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