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2019年03月11日(月) 
マハン著『海上権力史論』は、海洋戦略(シーパワー Sea power)に関する古典中の古典と評価されている。戦前の日本海軍にも大きな影響を与え、「坂の上の雲」で有名な秋山真之が米国留学時に師事している。戦後も海上自衛隊の基本教本という。

シーパワー。それは平時においては活発な通商活動に伴う海運能力であり、戦時にあっては海の管制、支配力を示す。広大な海洋に向かって支配的な戦略を行使し、そこから自国の利益を引き出すことは容易なことではない。船舶の操船や運行能力、優れた船員の確保、船の建造能力はもとより、安全な船の運行を支援する海外拠点も必要になる。また、国に産業力がなく、貿易産品がなければ、シーパワーは育たない。シーパワーとは、平時における、活発な通商海運活動が前提なのだ。通商が成り立つ産業力が伴わないと、有事の軍事力だけでは、シーパワーは持続できない。さらに、国家の地勢的条件も重要な要素になる。良港があるか、海洋にどう面しているか。この本は「地政学」に関わる戦略書とも評されている。

「シーパワー」の対義語を「ランドパワー」という。地政学では、国家は、ランドパワーに頼る大陸国家と、シーパワーを有する海洋国家に二分される。

日本や英国、豪州、米国は、シーパワーに国家経済を依存する海洋国家だ。これらの国々は内陸部に対抗する国家をもたず、海洋軍事力に資源を集中できる。一方、ロシアや中国、フランス、ドイツは微妙だ。マハンによると、17~19世紀のフランスは、大西洋と地中海、イギリス海峡に面し、海洋国家としての地勢的な優位性を持っていたが、欧州内陸部への拡張志向を捨てきれず、中途半端な海洋戦略のまま、植民地を英国に奪われたという。逆に、アメリカ独立革命では、フランス海軍が独立派を支援し、アメリカ大陸とイギリス本国との海上交通路を遮断したことが、独立の成就に大きく寄与した。アメリカ独立革命は海の戦争でもあったと指摘している。

マハンの洞察は、現代においても有効だ。
この本の翻訳者による解説では、訳本出版当時の旧ソ連軍の海洋戦略が、このマハンの戦略と同じだという。海外拠点を確保しながら海洋軍事力を強化していた旧ソビエト連邦。いまその瓜二つの動きを見せているのが現代中国だ。東シナ海での埋め立て、アフリカやインド洋への進出、豪州での港湾租借。海上拠点となる空母の増強。いずれもマハンが、シーパワーの要素として、百年前に提示し、大英帝国や、旧日本海軍、合衆国海軍、旧ソ連海軍が推し進めた海洋戦略と同じだ。ロシアとの国境紛争が解決し、内陸部の脅威が消えた中国が、海洋国家としてのシーパワーを確立させようとしている。中国の軍事力は「戦わずして勝つための張り子の虎」かもしれないが、そうであっても、日本のいずも型護衛艦の空母改修は、こうした中国の進出に対応して、西太平洋上に海上拠点を保持しようとする思惑であろう。いずれもマハンの海洋戦略どおりだ。

閲覧数178 カテゴリ日記 コメント0 投稿日時2019/03/11 21:58
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