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2019年05月05日(日) 

不登校や会食恐怖症の原因にも…学校の過剰な「完食指導」がはらんでいる問題とは
2019.05.05
著者 : 日本会食恐怖症克服支援協会 山口健太
キーワード : 教育給食完食指導会食恐怖症

最後まで、学校給食を食べるように指導される「完食指導」が過剰になり、体調を崩したり、不登校になったりする小中学生が増えているようです。

 

 

過剰な「完食指導」の実態とは?
 


 学校給食は、小中学生の楽しみの一つですが、中には「給食を残してはいけません」と先生に言われ、給食時間が終わった後も居残りさせられた経験を持つ人がいます。これを「完食指導」といい、指導が過剰になって体調を崩したり、不登校になったりする事例が増えています。さらに、それが原因で「会食恐怖症」という精神疾患になるケースもあるのです。

 

 筆者も会食恐怖症を経験した一人です。克服しましたが、同じような悩みを持ち、苦しんでいる人を少しでも助けられればと、一般社団法人日本会食恐怖症克服支援協会を設立して、過剰な完食指導や会食恐怖症についての相談を受けています。完食指導の現状や問題点について、ご説明します。

 
完食できなければ、クラス全員の前で謝罪


 近年、主に学校給食での「完食指導」が原因となり、さまざまなトラブルが引き起こされたという報道が増えています。「給食は残さず食べるものだ」という考え方は昔からありますが、一体なぜ、このようなトラブルが表面化してきているのでしょうか。

 

 具体的な事例を挙げると、岐阜県の市立小学校で2017年9月、50代教諭が担任を受け持った1年生のクラスで給食を残さないように指導し、数カ月の間に4人の児童が嘔吐(おうと)。2018年6月には静岡県で、当時小学6年の児童が、担任から給食の牛乳を飲むよう強制されたことでPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症したとして、学校を管轄している町に対し、家族が250万円の慰謝料を求める訴えを起こしたという報道もありました。

 

 岐阜県や静岡県の小学校の事例では、児童に大きな健康被害が発生し、マスコミを通じて報道されたことで、世の中に知られることとなりました。こうした事例だけではなく、筆者のところには、表沙汰になっていない相談も届きます。完食指導についての相談先がまだ全国には少なく、相談が増えていると感じています。

 

 最近、一番印象的なものとしては、給食を食べない児童に対して、担任が「クラス全員の前で謝罪させることを強制している」というものがあり、それがきっかけで不登校になったという相談がありました。

 

「今はそういう指導は、ほとんどないのでは」と言われることも多いのですが、保育所や学校の給食における完食指導、部活動における食事量の強制などの問題は、実際にまだまだ多いのです。

 

「会食恐怖症」とは?
 
 完食指導が行われることで、「学校給食が嫌で不登校になった」というケースの相談も多いのですが、この完食指導がきっかけで「会食恐怖症」などの精神疾患を引き起こすケースもあります。会食恐怖症とは「人とご飯を食べることができない」というもので、神経症の社交不安症における一つの症例とされています。

 

 会食恐怖症の人が、人と食事を取ろうとしたり、あるいは食事機会を想像したりしただけでも、吐き気、めまい、胃痛、動悸(どうき)、食べ物が飲み込めなくなる嚥下(えんげ)障害、口の渇き、体の震え、発汗、顔面蒼白(そうはく)、空気を飲み込んでおなかが張る呑気(どんき)、黙り込んでしまう緘黙(かんもく)などの症状が起きて、「みんなで楽しくご飯を食べる」どころではなくなってしまうのです。

 

 そして、日本会食恐怖症克服支援協会が会食恐怖症の当事者に向けて行ったアンケート(2018年9月)では、384人の回答者のうち62.5%にあたる240人が「完食指導が会食恐怖症のきっかけになった」と回答しました。

 

 会食恐怖症当事者の中には、50代以上の人もいますが、そのきっかけとして「子どもの頃、先生に給食の完食を強制されたこと」を挙げる人もいるので、それがきっかけで長年悩むことになったと考えれば、その人の人生に大きな影響を与える問題です。

 しかし、完食指導の全てが悪いのかというと、そうではありません。完食する子どもが増えるということは、その子どもたちの栄養がしっかり満たされることにつながりますし、食べられる食材が増えて、子どもたちの「食の楽しみ」が広がることにもつながります。また、クラスの残飯が少なくなれば、食料の廃棄量が減ることにもつながります。

 

 では、何が問題かというと「やり方」です。例えば、勉強が嫌いな子に無理やり勉強させたところで、嫌いなものは嫌いですし、自分から前向きに勉強する気は起きないはずです。つまり、「無理やり食べさせる」「食べろと言えば食べるだろう」というのが古いのです。また、食べられない子は「食べろ」と言われても食べられないので困っているのです。

 

 強制することなく、食べられるようになる方法はあります。しかし、ほとんどの大人たちはそれを知らず、どこかで勉強機会があるわけでもないので、ついやってしまうということなのです。今回は「完食指導」の現状や問題点についてお伝えしました。次回以降、さらに内容を深めていきたいと思います。

 

(日本会食恐怖症克服支援協会 山口健太)


閲覧数146 カテゴリ食、食と心身の健康、医食同源、食源病退治 コメント7 投稿日時2019/05/05 11:36
公開範囲外部公開
コメント(7)
時系列表示返信表示日付順
  • 2019/05/06 11:43

    そんなことが起きているんだ!?
    自主性を大切にするのが一番の教育なのでは・・・

    「好きなものを好きなだけだけ取って」とは
    いかないものやら。。。
    次項有
  • 2019/05/06 15:29
    > ジーメンさん

    戦後の「逆コース」(古いなぁ~)で、
    個性、自主性の尊重よりも
    鋳型教育が復活してしまいました。
    民主主義を取り返すには教育から。
    路は遠いです。

    偏食をただす、という意義はあるのですが、
    やり過ぎです。
    次項有
  • 2019/05/06 18:26

    > Double Eagle @kachinetさん

    > 個性、自主性の尊重よりも
    > 鋳型教育が復活してしまいました。
    > 民主主義を取り返すには教育から。
    > 路は遠いです。

    そうなんです。学校での勉強(成績)が良ければ
    良い?とか。 また、そうした子供達はいずれ東大
    に入れば将来が保障される?
    そんな、幻想はもう終わったのです。

    自主性・創造性・考える力・挑戦力・多様性
    そんな個々の力がそれぞれの立ち位置で発揮
    できる、たとえ少数意見でも尊重する!

    民主主義の多数決、数が多ければ、少しづつ
    強調され過ぎています。
    誰も言わない? 言えない?
    憂いています。!(^^)!
    次項有
  • 2019/05/07 10:40
    > ジーメンさん

    多数決は民主主義の第一原則ではありません。
    言論による説得と納得、話し合いこそ!
    時間的な制限によって、時に多数決によらざるを得ない場合もありますが、それは本来、方便です。
    多数を得ていれば何をしてもイイと勘違いした連中が
    この国を危うくしています。
    次項有
  • 2019/05/06 23:24
    いまだにむかしの小学校低学年のような指導が???

    そばアレルギーの女の子が給食を残さず食べる競争?のためにおかわりをして亡くなった事件を思い出しました。

    無理に食べなくてもいいのに。
    先生もちゃんと食べてるのかしら。
    次項有
  • 2019/05/07 10:41
    > くちべにがいさん

    教師自身が無理強いされています。
    日の丸、君が代とか。
    素直に鋳型に嵌る人間しか教師になれないんじゃないでしょうか?
    教師自身が人間性を失っています。
    次項有
  • 2019/05/13 14:45
    NHK
    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190513/k10011911…jSHsCW7zbQ

    楽しいはずの給食が…「完食強要」やめて
    2019年5月13日 9時23分

    楽しいはずの学校の給食の時間に苦しんでいる子どもたちがいます。先生から「残さず食べなさい」と言われ、無理に食べさせられたり、給食の時間が終わっているのにひとりポツンと教室に居残りをさせられたり…。こうしたいわば“完食指導”の行き過ぎで、体調不良や不登校になるケースが相次ぎ、中には、大人になっても苦しみが続く人がいることを知っていますか。(徳島放送局記者 岩本悦子)

    給食を無理やり口に…
    取材に応じてくれたのは、高知県の女子大学生(21)。
    学校の給食が苦しみの時間に変わったのは、小学2年生の時でした。

    おなかがいっぱいで残したチーズを担任の教員に無理やり口に押し込まれ、その場で吐いてしまいました。
    「すごい怖かったし、給食に対する恐怖みたいなものを植え付けられた感じだった」と女性は当時を振り返ります。
    もともと小食気味で、食べるのに時間がかかったという女性。この出来事がきっかけで教室に行くのが怖くなり、保健室に通う日々が続きました。
    さらに、中学生になっても厳しい完食指導に直面します。
    3年生のある日、給食を食べ切れなかった女性は、担任の教員に「これ以上食べられません」と訴えました。

    しかし、聞き入れられず、女性はひとり教室に残され、泣きながら食べ物を口に詰め込んだといいます。
    今も続く苦しみ
    それ以来、女性は人と一緒にごはんを食べること自体が怖くなってしまいました。
    「食べられなかったら何か言われるんじゃないかという不安や緊張がすごくある。この状態が一生続くのかな、どうにかならないかなと思う」と語った女性。
    大人になった今も病院でカウンセリングを受けるなど、完食指導で負った心の傷は癒えていません。
    国は“個に応じた指導を”
    学校給食の指導の在り方はそもそもどのようになっているのか。

    文部科学省は子どもの肥満やアレルギーなどの問題を背景に、平成19年に「食に関する指導の手引」を作っています。

    この中では、「個に応じた指導」を掲げ、一人一人の体格や運動量などを考えて指導することを呼びかけていて、画一的に完食を指導するようなことは求めていないのです。
    それでも相次ぐ完食指導
    しかし、学校現場では完食指導の行き過ぎが後を絶ちません。

    徳島県小松島市にある「徳島赤十字ひのみね総合療育センター」の心身症専門の小児科医、中津忠則医師のもとには、完食指導をきっかけに心と体の調子を崩した子どもが数か月に1人、新たに受診に訪れます。
    カルテに書き込まれているのは、「登校していない」「一口も食べられない」「給食を恐れて発熱が続く」など、子どもたちの悲痛な訴え。
    中には、食べ物を無理やり口に押し込まれたり、「クラス全員が完食したら宿題を減らす」と言われたりしてトラウマとなり、長期間の治療が必要になった子どももいるということです。
    中津医師は、「『何でも食べられる子どもになってほしい』という先生の思いは間違ってはいないが、無理やり食べさせるというその方法論が非常に乱暴で、結果的に子どもを傷つけている」と指摘しています。
    各地でトラブル表面化
    給食の完食指導によるトラブル。この数年間だけでも各地で表面化しています。

    岐阜市では、小学校の教員が、児童の口元に食べ物を運んで食べさせるなどして、2年間で5人をおう吐させたなどとして、おととし厳重注意処分になりました。
    また静岡県では、小学校の教員から牛乳を飲むよう強制されてPTSDになったなどとして、子ども側が去年、町に対して慰謝料を求める訴えを起こしました。

    このほか東京都や富山県でも教員が処分されたり、学校側が謝罪したりする事態が起きています。
    個に応じた指導
    こうした中、「個に応じた指導」を実践しようとする動きもあります。
    徳島県三好市の辻小学校では、給食の時間は「ランチルーム」と呼ばれる部屋に教員と子どもが全員集まって一緒に食べます。
    配膳の時、おかずやごはんの量を減らしたい子どもがいれば要望に応じますが、ただ減らすのではありません。
    担任の教員が子ども一人一人の体調やふだん食べている量などを見極めながら調節するのです。
    担任の教員は、「毎日一緒に食べていれば『この子だったらこのくらいは食べられるかな』というのが分かります。最初は無理のない量にして、毎日ちょっとずつでも量を増やしていけるよう努めています」と話していました。
    校長先生の思い
    こうした取り組みの土台になっているのが、内田公生校長の、ある反省の思いです。
    内田校長も若い頃、完食指導にとらわれていた時期があったといいます。当時勤務していた学校でよく掲げられたのが「残飯ゼロ週間」という目標。

    内田校長は、小食の子どもに無理に食べさせることはしませんでしたが、たくさん食べられる子どもに山盛りに配分して、クラス全体の残飯ゼロを達成していました。

    でも、食育に関心を持って勉強を進めるうちに自分の誤りに気付いたといいます。いま最も大切にしているのは「子どもが食の楽しみを味わうこと」です。
    食べる意欲を上げよう
    その思いを実現するために、「食べる意欲を上げる環境づくり」にも取り組んでいます。

    「いただきます」のあとの10分間、部屋に流れるのはオルゴールの心地よい音楽。この間はおしゃべりをしない決まりで、子どもたちは食べることに集中します。
    音楽が終わると、はじけるように会話が飛び交い、みんな笑顔でさらに給食を食べ進めます。

    「食べる時と会話を楽しむ時間にメリハリがつきました」と話す担当の教員。
    食が細かったり苦手な食べ物があったりする子どもが少しでも食べていれば、気持ちを込めて褒めていました。

    小学5年生の女の子は「野菜が苦手だったけど、いまは時間内に食べられるようになった。先生の励ましはすごくうれしくて、もっとがんばれる気がする」と語ってくれました。
    楽しく完食を
    こうした取り組みを2年前から続けてきた辻小学校。
    保護者にも給食の様子を伝えるなどして連携を深めた結果、今ではほとんどの子どもが給食を完食できるようになったといいます。
    内田校長は「生きる力の源ともなる“食”の楽しさを伝えるというのが食育の基本。子どもが食べたい気になって食べる。われわれはその気にさせることが最も大事だと思っています」と話していました。
    完食強要をなくそう
    冒頭の高知県の女性に、インタビューの最後、「当時の担任の先生に何を言いたいですか」と尋ねました。

    女性はしばらく考え込み、こう答えました。
    「『わがままで言っているんじゃない。本当に食べられないんだ、おなかいっぱいなんだ』と言いたい。もっと一人一人を見てほしかったし、わかってほしかった」
    子どもの成長を支え、食べる楽しさを学ぶ場でもある学校の給食。栄養バランスがとれた、適切な量の食事を完食するのはもちろんいいことなのですが、そのやり方が問題なのです。
    完食を目指す熱意が子どもを逆に追い詰めることになっていないか、いま一度見つめ直す必要があると感じました。

    徳島放送局記者
    岩本悦子
    次項有
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