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2006年11月29日(水) 
【連載】ひょこむ的SNS活性化法-ネット桃源郷(7)

実証的に社会ネットワークの“小ささ”を明らかにしようとしたのが社会心理学者スタンリー・ミルグラムである。「スモールワールド」という現象は、ミルグラムが1967年にPsychology Today誌に『The small world problem』という論文によって提唱した「6次の隔たり(Six Degrees of Separation)」という概念から発展している。この概念は、社会において人間同士がどのように結ばれているのかを明らかにするもので、「6人の共通の知人の連鎖を介せば世界中のすべての人間と間接的な知人関係を結べる」という考え方。以前から少ない知り合い関係の連鎖で(つまり少ないホップで)世界中の人間すべてと間接的な友人関係を結べるのではないかといわれてきたが、これを実際に実験で試したのがミルグラムである。

ミルグラムは、カンザス州およびネブラスカ州の住人の中から無作為に抽出した300人に手紙を渡し、直接面識のないマサチューセッツ州ボストンの受取人まで届けるよう依頼した。このとき、受取人の正確な住所は与えられず、郵便ではなく知人(ファーストネームで呼ぶような親しい人)経由で転送するように指示し、何人の仲介者が必要かを調べた。最終的には、42通の手紙がボストンの友人のもとに届いた。なかには10ほどのリンクを必要としたものもあったが、結果としてリンクの平均値は5.5であった。すなわち6人以下でつながっていたわけである。

1994年1月、ジョン・スチュワート・ショーという有名トーク番組で、オールブライト・カレッジの三人の大学生がケヴィン・ベーコン(Kaven Bacon)と共演し、名前を挙げられた俳優をみんなベーコンにつないでみせるという妙技で視聴者を引きつけた。多くの映画に出演しているベーコンは、数多くの俳優たちと共演していることから、ハリウッドの俳優は誰もが平均して二つか三つのリンクでベーコンとつながる点に、彼らは気づいていたのである。つまり「世界は6人でも、ハリウッドは3人で繋がっていた」わけだ。

ベーコン本人をベーコン数0として、ベーコンと直接共演したことのある俳優は1となる。その俳優と共演していると2になり、遠くなる毎にベーコン数は1ずつ増える。俳優と映画についての詳細な情報を提供しているインターネット・ムービー・データベースに登録されている俳優リストから得られたベーコン数の分布は、1が1,806人、2が145,024人、3が395,126人、4が95,497人、5が7,451人、6が933人、7が106人、8が1人となっている。これによりベーコン数の平均値は、2.946となり「六次の隔たり」を越えて、ほぼ3ステップで接続されていることとなる。このように密度の濃いネットワークでは「六次の隔たり」は容易に達成される。またリンク数が1桁の俳優が41%もいるのに対して、ごく少数の俳優は十をはるかに越えるリンクを持っている。すなわちこのネットワークでは平均が通用しておらず、多くのリンクを持つものがハブとして機能し、他の俳優たちをベーコンに近づけるのに役立っていることがわかる。

ベーコン数と同じ考え方で、著名な数学者であるポール・エルデシュとの共著論文の距離を示す「エルデシュ数」という概念もある。エルデシュは生涯、千五百編あまりの論文を発表しているが、そのうち五〇七編は共著である。エルデシュと共著論文をもつ者はエルデシュ数1。エルデシュの共著者と共著論文をもつ者はエルデシュ数2と続く。科学界は高度に相互連結されたネットワークで、科学者たちは共著論文によって強い絆でリンクされており、ネットワークサイズも小さい。数学者のネットワークはきわめて高度にクラスターされていたのである。

以上の先行研究から見て、地域は3人よりも大きく6人よりも小さなステップで接続しているであろうということは容易に思いつく。これが「地域は4人で繋がっている(Four degrees of separation in local community)」という、こたつの仮説(笑)である。しかし、現実の生活感の中で地域内の人々が4人で繋がっているという実感はない。この理由は、「本来は繋がっているはずの人材がリンクされていない」ことにあるのではないか。その人材とはどんな人なのか。地域SNSという新しい仕組みが、少しずつその謎を明らかにしつつある。

閲覧数4,744 カテゴリ出版 コメント7 投稿日時2006/11/29 04:54
公開範囲外部公開
コメント(7)
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  • 2006/11/29 11:02
    オメメさん
    炭素は四本の手で化合物を作っています。
    生物はほとんどこの化合物です。
    シリコンも同じような化合物を作りますが、
    どうも生体とは合わないようです。豊胸術
    などでも。
    自然はもっとも効果的に結合しているんですね。
    次項有
  • 2006/11/29 11:49
    おもしろい!
    すんなりと理解できました。
    一度私たちもミルグラムのような実験をしてみたいです。
    こういうアナログ実験、大好き。

    このひょこだちも表で見ると、もっと面白いことが分かるのかもしれません。
    次項有
  • 2006/11/29 14:26
    JQさん
    ミルグラム、読みました。
    なるほど、なるほどね。でした。

    こたつねこ理論も理解^^

    人のつながりっていうのは縦方向と横方向があって、
    横軸っていうのが価値観だったりするのではないか、と思うワタクシであります。

    ちょっと例がなんですが、女性誌の仕事などをしていると、CanCamをやっている人はViViもやっている。
    小学館をやっていると講談社や集英社とつながっている。でも、もそっと違うところでのつながりは薄いのです。結果的に「どこにいっても同じ人が出てくる」という状況になるのですが、それは同じ横軸にあるからであって、横軸の位置を変えると別の「同じ人群」があるわけです。
    次項有
  • 2006/11/29 23:38
    夢工房さん
    街中を歩いていると多くの知らない人々とすれちがう。
    田舎を歩いていると知っている人ばかりとすれちがう。
    こたつ理論で言う「4人の繋がり」は、どの程度のコミュニティーを想定されているのか?
    田舎では、「地域は、2人で繋がっている!」
    ベーコン数が小さいほど地域は、よくなるのかなぁ??
    ベストな数字は幾つかなぁ?
    次項有
  • 2006/11/30 02:38
    オメメさん、人間の接合子は9本くらいだとひよこセンセから聞いたことあります。複雑系のメッカ・サンタフェ研究所の発表で(最適な友人の数は8~9名)あったそうで、また「曼荼羅」の神様もそんな数ですね。

    たまちゃん、ありがと♪
    「よさこい」ネットワークの人的接続関係なんて調べたら、面白いことがわかるかも知れません。結構グループ毎に濃いみたいですし~。

    JQさん、縦と横のお話し、参考になります。縦は分類しやすいですが、横軸を担っている存在が鍵ですね。ネットワークは「繋げばよい」というものでもないと思いますが、外部からの圧力ではなく内部で横軸に気づくような仕掛けができると自律した接続が可能になるのかも知れません。

    夢工房さん、「御近所数」が少なければ少ないほど強固なつながりになると思いますが、紐帯が強くなりすぎて空隙がなくなり、風通しの悪い(外部からの情報収集能力が低い)ネットワークになっていきます。これは良くない傾向です。仰せの御近所数のベストポイントは、これからの地域づくりの新しい指標となるかも。現状でも都会は大きく田舎は小さいという傾向は、間違いなく存在するし、地域的なバラつきもあるでしょうからね。地域SNSが本当に浸透したら、そんなことも語られるようになるでしょう。さすが、ただのお百姓と違うねぇ~(笑)
    次項有
  • 2006/12/01 01:02
    JQさん
    ところで、「世界は3000人しかいない」っていう話を思い出しました。リアルな人は3000人だけで、それ以外は幻想なんだそうです(笑
    なんとなくわかる気もします。
    3000人という数字は結構リアルです。
    次項有
  • 2006/12/01 01:31
    JQさん、3000人は認知ネットワークの限界値?
    こたつの場合は、1000人も難しいかも(笑)
    次項有
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