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2022年11月23日(水) 

きっかけは女優の中江有里さんだった。我が家の下宿生の姪っ子が日経新聞をとっていて、いつも読ませてもらっている。ある日、記事の中に彼女の名前を見つけた。「私見卓見」という投書欄だった。経済新聞に誰でも経済以外のことでも投書できるんだ。それも1000字まで書けるというのが魅力だった。いつも投書する京都新聞はその半分しか書けなかったから。いつか投稿してみようとずっと思っていた。

 

10月18日に修理中の国宝大徳寺方丈屋根裏から大工道具「ノミ」が発見され、400年前の忘れ物か? というニュースが流れた。大徳寺の工事を請け負うくらいの大工だから、当時の名だたる棟梁であろう。その巧が大切な商売道具を置き忘れるなんてあるはずがない。これは「みつればかく」の例だろうと思ったが、誰もそんなことを言わない。そこで「私見卓見」にメールで投稿したら、すぐ担当者から「おもしろい」という反応があった。以後、2度ほど原稿修正の遣り取りがあり、最後はゲラ刷りまでチェックさせてもらって、本日掲載となった。

 

京都新聞への投書に慣れていたのでこれには少々驚いた。投書って送ったら、掲載か不採用か載るまでわからない。原稿も新聞社が勝手に修正して載せてしまう。そんなもんだと思っていたから、日経担当者の丁寧な仕事ぶりには感心させられた。

 

しかし、掲載されたものに不満がないわけではない。当初の原稿にあった『東海道中膝栗毛』の弥次さん喜多さんの話がカットされている。でも、自分の書いたものは書き慣れた論文調で記事のほうがよみやすくなっていて、反省させられてた。そこで、ここには当初の原稿を読んでもらい、記事の方は「日本経済新聞 私見卓見」で検索し、ご覧いただければありがたい。全文読むには会員登録が必要だが、一か月10本まで閲覧可能の無料会員になっていただければ、すぐに読むことも可能。どう変わっているか比較してもらえるとうれしい。

 

ちなみに、となりの山村さんに日経に投書が載ることを伝えたら、こんな一言を頂戴した。

「これで全国区やな~」

 

  *  *  *  *  *  *  *


 国宝建物「大徳寺方丈」解体修理中に建立当時のノミが発見されたことを10月19日の日経夕刊などが報じていた。ノミは屋根を支える垂木と板の間に挟まっていて、刃が赤く錆びついてはいるが原型を留めているという。

 

 これが約400年前のものとされた根拠は、①発見場所に過去に解体された形跡がない、②形状が中世当時の両刃仕様、③発見場所付近に残されたこれで削ったような刃の痕跡、からだそうだ。しかし、なぜこんな所にノミがという謎が残る。報道では「大工が忘れた?」とあるが、これは「 満つれば虧(か)く」を避ける風習だと考えられる。

 

 「月満つれば則(すなわ)ち虧く」は『史記』が出典の諺で、「満月は必ず欠ける。物事は盛りに達すれば必ず衰えはじめるというたとえ〔大辞泉〕」である。中、近世では戒めとされ、『徒然草』82段でも或る人の言として兼好がこんな話を伝えている。

 

 「すべて何も皆、事の整ほりたるは悪しき事なり。し残したるを、さて打ち置きたるは、面白く、生き延ぶるわざなり。内裏造らるるにも、必ず作り果てぬ所を残す事なり。」

 

 このように建築は完成の一歩手前で留めておく、それが長持ちの秘訣らしいが、実際この例は散見する。

 

 ①姫路城二基の小天守最上階にある花頭窓で乾小天守の方は格子が未完成。②知恩院御影堂大棟中央に「葺き残しの瓦」と呼ばれる四枚の瓦がわざと残されている。③石清水八幡宮幣殿蟇股にある四つの巴紋彫刻のうち一つだけが逆の右巴で、わざと間違いの箇所を残し未完成を装っている。他にも東大寺大仏殿に一か所残された柱の穴も同様の事例と見なせるだろう。

 

 この柱の穴くぐりは人気の観光スポットだが、『東海道中膝栗毛』で弥次さん喜多さんもやっていて、江戸時代から既にあったようだ。もっとも弥次喜多は京都の方広寺大仏殿でも穴くぐりをしているので、柱の穴は東大寺だけのものではなかった。

 

 この柱穴の謎は東寺講堂に残る柱の穴で解明できる。東寺のものは人がくぐれるほどではないが、この穴は木造建築で木組み構造のバランスを整えるのに使われたという。穴に横木を入れて柱を動かし、木組みの最終調整に使われたのだそうだ。当然、工事完了時に穴は埋めらる。だから、残された柱穴は「満つれば虧く」、未完成を象徴しているのである。

 

 このように、大工の願いが込められた大徳寺方丈のノミは、約400年を経て成就した証なのだ。だからこそ修復工事では、ノミを取り除かず現状維持を切望する。

 

 


閲覧数84 カテゴリ日記 コメント0 投稿日時2022/11/23 16:53
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