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2006年12月14日(木) 
 先日、大阪の名物橋である「桜宮(さくらのみや)橋」の拡幅工事が完成し、12月17日から供用が開始されるとのニュースを聞いたので、早速検索してみたところ3つの記事が見つかりました。読売新聞とサンケイ新聞と asahi.com ですが、それぞれ『建築家の安藤忠雄氏がデザインした』、『建築家の安藤忠雄さん(65)がデザインを監修』、『建築家安藤忠雄さん(65)の設計が採用された』と書かれています。僕は、これらの記事の中ではサンケイの『デザインを監修』というのがある程度事実に近いと思いますが、それでも事実を正確に伝えているとは言えません。特に asahi.com の『安藤忠雄さんの設計』に至っては明らかに間違いです。

 そこで、この工事を担当した国土交通省大阪国道事務所のHPを見たところ、安藤氏は「新桜宮橋デザイン検討委員会」のメンバー、7人のうちの1人であったということが分かりました。同委員会は3回開催されただけですから、委員自らが筆を執ってデザインしたとは考えられないし、ましてや「設計」するなんてことは不可能です。(また、建築家である安藤氏がいくら優秀であっても橋梁の設計はできるはずはないでしょう。)
 僕の想像では、事務局から提示された何案かの設計図面に対して、各委員が意見を述べて、最終的なデザインを決定したということではないでしょうか。その中で安藤氏が主導的な役割を果たしたということは容易に考えられることですが、あたかも安藤氏一人がこの橋のデザインに関わったかのような記述は間違いです。マスコミは超有名人である安藤氏の名前を前面に出すことで読者の目を惹きつけようとしたのでしょうが、実にけしからん話です。一般の多くの人は安藤氏がこの橋をデザインした、あるいは設計したと思うでしょう。

 前置きが長くなりましたが、本論に入りましょう。これまで述べた中に「設計」という言葉と「デザイン」という言葉が出てきました。どちらも曖昧な言葉ですが、ものをつくる前段階の作業です。「前段階」といってもかなり範囲が広くて、①漠然と《こんなものができたら》と構想する段階から、②もう少し具体的に形を描く(デッサン)段階、そして③実際に製作できるように寸法や材質、数量などを図面に書き込む段階に分かれます。このように分類した場合、「デザイン」は②の段階、「設計」は③の段階になるでしょう。前述した安藤氏が関わったのは②の段階であったと考えられます。

 土木構造物の場合、一般的に①と②の段階を「計画」、③の段階を「設計」と呼んでいますが、実際にどんな作業をするか、道路の場合を例にとってお話ししてみましょう。
 先ず「計画」段階ですが、将来の交通需要をまかなうのには道路網をどのように整備したらいいか、あるいは現在の交通渋滞を解消するにはどうすればいいかなどを考えます。新しい道路をつくるか、現在の道路を拡幅するか、バイパスをつくるか、交差点を立体化するかなどを考えるのです。そして将来の交通量を予測し、必要な道路の規模を決め、粗い図面(計画図)を描きます。場合によっては完成予想図(パース=perspective)を描いて周囲との調和などを検証します。そして、こうして出来上がった計画に基づいて費用を概算し、予算措置をし、「設計」に回すことになります。

 「設計」段階で行うことは、材質と工法の決定、構造計算、詳細な図面(設計図)の作成、必要な材料の数量算出などで、これらを元に工事費を算定し、「工事設計書」を作成して工事を発注することになります。このうち「構造計算」は構造物の根幹に関わる作業ですから最も重要な作業です。近年の技術革新により、ほとんど自動計算が行われるようになりましたが、先ごろ問題になった「姉歯事件」のように、設計条件の入力を変えるととんでもない結果になります。姉歯事件のように恣意的に入力を変えることは論外としても、間違って入力ミスを犯すことはあるわけですから、設計者の責任は極めて重いと言わなければなりません。

 僕の場合は計画段階にしか携わってこなかったのですが、自分が計画したとおりに出来上がっているかどうか、いつも気になりました。計画の理念が設計者によく伝わらなかった場合もあったし、実際に設計不可能な計画図を描いたと思われることもありました。また、設計者にしても実際に現場で施工できないような設計をすることもあります。
 計画担当者にしても設計担当者にしても、それぞれの担当以外のことにも配慮することが必要だし、そのためには、技術全般に亙る広い見識が技術者には必要なのだと思っています。

写真は桜宮橋(現在は、すぐ横に相似形をした「新桜宮橋」が架かっています)

閲覧数3,314 カテゴリ連載読物 コメント4 投稿日時2006/12/14 11:41
公開範囲外部公開
コメント(4)
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  • 2006/12/14 12:46
    WRさん
     基本設計と実施設計はどういう区分なのでしょうか。

     ある施設の基本計画策定を担当したことがあります。確かに設計の理念みたいなことは書き込みましたが、機能面のことばかり書いて、デザイン等には言及しませんでした。施設の性質上、そういうことになりましたが、この場合は基本設計が基本計画の欠けた部分を補ってくれたのでしょうね。
    次項有
  • 2006/12/14 13:23
    鉛筆jamjamさん
    >基本設計と実施設計はどういう区分なのでしょうか。

    基本設計というのも曖昧な言葉ですね。組織によって使用する意味は微妙に異なると思います。
    ただ確かに言えることは、実施設計(詳細な設計図面や数量計算まで行う)の前段階であるということでしょう。
    しかし、僕が上に書いた「計画」段階の最終形までを言うのか、「設計」の初期段階(ある程度具体的な図面まで描く=例えば橋梁の場合にアーチにするか斜張橋にするか、コンクリート橋にするか鋼橋にするかまで決める)までを指すのかは、WRさんがおっしゃる「施設の性格」によって異なるでしょうね。ただ土木構造物では後者の場合が多いように思います。

    >基本設計が基本計画の欠けた部分を補ってくれたのでしょうね。

    当然そうでしょうね。実施設計は基本設計に基づいて行うわけですから。
    次項有
  • 2006/12/15 21:29
    すぶたさん
    確かに「安藤忠雄さんが設計」と書かれると、①から③まで携わったように感じますね。

    新桜宮橋のニュースをTVで見たとき、渋滞緩和のため新しい橋をつくったと聞きましたが、古い桜宮橋を改修するために1年くらいかかるので、桜宮橋は通れないとか・・・
    それでは当分渋滞は緩和されない気がします。
    次項有
  • 2006/12/15 22:55
    鉛筆jamjamさん
    >それでは当分渋滞は緩和されない気がします。

    今の状態が後1年ほど続くということですが、旧桜宮橋に少しでも長生きしてもらうためには我慢すべきでしょうね。
    桜宮橋は、10月26日のブログ「大阪の見どころ(5)」にも書いたと思いますが、土木学会の「土木遺産」に最初に選ばれた名橋です。でも、昭和5年生まれで今年76歳になりますからかなり傷んでいます。この際徹底的に治療して、この美しい姿のままで100歳、200歳まで長生きしてほしいと願っています。
    次項有
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