1,418万kW/2,121万kW (03/28 23:25)
66%
■バックナンバー
■RSSフィード
RSS 1.0 RSS 2.0 Atom 1.0
■このブログのURL
https://hyocom.jp/blog/blog.php?key=4645&com_mode=1
2006年12月28日(木) 
 新しいシリーズを始めます。前回の 「土木用語辞典」 は少し堅苦しかったので、肩の凝らないものにするつもりです。書く方も肩が凝らないよう、土木屋として 『つれづれなるままに、心にうつりゆくよしなし事をそこはかとなく』 書き記すことにしました。

 さて、みなさんは 「土木」 というと何を思い浮かべられるでしょうか。ダム、道路、橋、トンネル、それともヘルメットをかぶって設計図面を持った現場監督さん、ブルドーザー、パワーショベル・・・。そうですね、いろいろな場面が浮かんできます。けれども、中には土木と建築の区別がつかない人もいます。それはたぶん、どちらも巨大な構造物を大きな建設機械をもってつくる仕事だからではないでしょうか。確かに土木と建築は似たところがあるし、両者の境界線上にある仕事もあります。でも土木は土木、建築は建築なのです。

 では土木とは何なのでしょうか。お役所流に言えば 「国土を保全し、人々の生活を支える基盤施設を整備する」 仕事であり、それを支える学問分野(土木工学)ということになるでしょうか。

 国土を保全する仕事としては、砂防や流水調節をするためのダム、河川の堤防、海浜の防波堤などがあります。また、基盤施設(最近インフラ・ストラクチャー=略してインフラと呼ばれる)としては、道路、橋梁、発電用のダム、送電線の鉄塔、上下水道、電線類やガス管を通す管路、鉄道、港湾施設等々、挙げればきりがありません。このように、土木の仕事はすぐれて公共的な性格を持っていて、国や地方自治体といった公共団体と、民間会社であっても公益事業者と呼ばれる機関の仕事になっているのです。こうした仕事の性格から、土木事業は英語で public works と呼ばれ、日本では公共事業と呼ばれるのです。土木工学が英語で civil engineering (市民工学)とよばれるのもそのためです。建築の多くが、個人の住宅や会社のビル、工場などといった非公共的なものを扱うことを考えるとその違いがはっきりするでしょう。

 そうした土木事業を支える土木工学は、水の物理的性格を知る水理学、構造物を設計するのに使う構造力学、土を扱うのに使う土質工学、道路の交通量予測や交通の安全性などを研究する交通工学、周囲の風景との調和を検証するための景観工学などのほか、施工法、コンクリートや鋼材といった材料、鋼構造をつくるのに必要な溶接等々、さまざまな研究分野に分かれます。

 僕は土木屋ではあるけれども、ヘルメットをかぶって工事現場に立ったことは一度もありませんし、と言って計算機を回して構造物の設計をしたこともありません。役所生活の大半を道路計画の部署で過ごしましたから、日がな地図の上に線を引いたり、荒っぽい計画図や完成予想図を描いたり、概算事業費を出したり、PR用のパンフをつくったりしていました。つまり土木屋の中の計画屋だったわけですが、そうした中で学んだことは、《計画屋といえども、構造のことも少しは判っていなければならない》 ということでした。

 専門馬鹿にならないこと、「井の中の蛙」 にならないことは技術屋として心すべきことですが、研究者についても同じことが言えると思います。細分化されすぎた学問分野では、ともすれば全体を見失いがちです。スペシャリストになることはいいことですが、同時にゼネラリストであることが、今の時代、特に重要ではないかと思うのです。


閲覧数3,580 カテゴリ連載読物 コメント7 投稿日時2006/12/28 10:01
公開範囲外部公開
コメント(7)
時系列表示返信表示日付順
  • 2006/12/28 10:20
    オメメさん
    国土の保全が土木ですか。チャチャ入れるようですが、時折、保全ではなく破壊に近いこともしているように見えるものもあります。
    国土の保全の基準はあるんですか。
    ほっといた方がよいのか、手を付けた方がよいのかのです。
    次項有
  • 2006/12/28 10:42
    鉛筆jamjamさん
    オメメせんせー、だから「お役所流」と言ったのです。
    けれども、以前のブログにも描いたと思いますが、国土交通省の考え方も、最近変ってきています。これは市民の声が漢方薬のようにじわじわと効いてきたからでしょうが。
    高級官僚といわれる人たちの多くは目先のことしか考えていませんからね。彼らを教育するのは大変なことです。政治家もそうですが・・・。
    次項有
  • 2006/12/28 20:25
    すぶたさん
    >専門馬鹿にならないこと、「井の中の蛙」 にならないことは技術屋として心すべきことです

    エンジニアはとかく専門馬鹿の人が多いようにおもいます。かくいう私の主人も偉大なエンジニアで、専門以外のことは疎い人です。
    もうちょと、柔軟な発想ができればと、もっと人生が楽しくなるのになぁ・・・とよくおもいます。
    次項有
  • 2006/12/28 21:00
    鉛筆jamjamさん
    すぶたさん、あなたが知らないだけで、ご主人は専門外のことにも識見がおありになると思いますよ。「専門」の領域というは専門外の人には分からないものですからね。
    次項有
  • 2006/12/28 21:06
    すぶたさん
    そうですね。
    でも、主人が知ってる花の名前は、バラとチューリップとたんぽぽくらいです。

    まあ、花の名前知らなくても生きてはゆけますけど・・・
    次項有
  • 2006/12/28 21:22
    鉛筆jamjamさん
    すぶたさん、僕の言う「専門」は専門の中の専門のことなんですよ。例えば上に書いた土木工学の中の構造力学といったものです。
    だから、同じ土木工学の中で、交通工学を専門とする人でも構造力学をある程度知っている必要があるということなんです。ちょっとややこしくなりましたか?
    次項有
  • 2006/12/29 00:43
    すぶたさん
    ややっこしいけれど、jamjamおじさんのおっしゃりたいことはわかりますよ。
    次項有
  • 次項有コメントを送信
    閉じる
    名前 E-Mail
    URL:
■プロフィール
jamjamさん
[一言]
定年退職して20年経ちましたが、40年やってきた土木屋の根性は未だ…
■この日はどんな日
■最近のファイル
■最近のコメント
■最近の書き込み