わたくしも疑わない。
(戦後と変わらぬ迎春風景の我が家ではありますが)
地域SNSによる震災追悼プロジェクト「1.17リアルタイムレポート」の毎日新聞の記事のとなりにあって、目を留めずにはいられなかった『支局長からの手紙』という随想。武政和則姫路支局長の随想である。 岡山の田舎で過ごした年越しの様子から始まる本文は、その昔日本の何処にでもあっただろう懐かしい家族(一族)の迎春風景が描かれていた。昔といっても戦後20年を経たくらいの夢と希望に溢れていた時代。「日本人の原風景」と言うにはあまりに最近...でも今の人たちには体験できない幸せな経験でした。 その後40年。暮らしは豊かになっても、多くの大切なものを失ったと彼は嘆いています。播磨でも弱いものを狙った犯罪の横行は目を覆うばかり。「年ごとに世の中が悪くなっていくことへの無力感、閉塞感を、たとえわずかずつでも改善するためには何ができるのか、何をすべきか。暗中模索は今年も続きますが、桃源郷は心ある人の胸中のみに存在し、閉じ込められているものではない。そう信じています」と語る。 「ひょこむ」はまさに、武政さんが求める「桃源郷」を創造するアプローチであるように思う。信じる人たちが心を集めることによって、きっと不可能は可能になる。わたしはそう信じて疑わない。 武政支局長のイメージする桃源郷像は、 行き交う人たちが皆、穏やかな笑みをたたえていたわり合い譲り合い、疑ったり妬(ねた)んだり阻害したり蔑(さげす)んだり欺くこともなく、人を貶(おとし)めて地位を得たり、財を掠(かす)め取ったり不正に蓄財して欲に溺れることもなく、精一杯働けば相応の報酬が得られ、頑張れば頑張っただけ報われ、真面目に暮らしてきたものには憂いのない老後が保障されている。そして家族全員が団らんの明かりの下に集ってその日あったことを語り合った後、「今日も良い一日だった」と眠りにつく。 |