できるだけ時間を作って、知らない街の商店街や路地をぶらつくのが出張の楽しみです。その土地でしか触れあえない風を歩きながら肌で感じるのは、勉強にもなりますし面白いものです。東京の浅草・蔵前界隈は、谷中寺町あたりとはまた違うにぎわいのある下町。早朝に隅田川の河畔をぶらぶらすると、関西とはひと味違ういい雰囲気があります。
下町ではないのですが、何度か前を通って、気になっていたお店が駒形にありました。普通の定食屋さんなんですが、店の名前が「肉屋の正直な食堂」。ミートホープやダイショーのように偽装だらけの食肉業界にありながら、どれくらい「正直」なのかついつい調べたくて仕方ありませんでした。この度、近くにある大手通信事業者と午後一番で打ち合わせをする機会があり、ついに念願のチャンス到来。暖簾をくぐってみることとしました。
メニューは牛・豚・鶏の焼き物と鍋物ばかり約30種類。楕円形のカウンターに電磁調理プレートがセットしてある座席が計18席。正午を少し過ぎたあたりですでに満席でした。食券販売機で「若鶏スタミナ焼き(800円)」を買って、しばらくすると席があきました。テーブルに運ばれてきたのは、生の素材が入ったプレート。初めての客だとバレバレだったのか、おばさんが丁寧に調理の仕方を説明してくれます。
テーブルにはそれぞれひとつずつ砂時計がおいてあって、これがすべてのメニューの調理の目安になっています。
「若鶏スタミナ焼き」の場合は、砂が半分くらいまで落ちたら具材を野菜炒めの要領で混ぜて、砂が全て落ちたらほぼ焼き上がり。余熱で火の通りと堅さを確認しながら、卵を落として「とじたま」にするも良し、すき焼き風に「つけたま」で食べるも良しとのこと。「サイコロステーキ」の場合は、砂が全部落ちたところで加熱を止めて肉を裏返しにしたら「レア」状態。余熱で焼き加減を見ながらふたつのタレでご賞味下さいとのこと。カウンターを囲んで18人の男性が鍋やプレートをつついている姿は、なかなか壮観でもあります(笑)。
できあがったセットには、大盛ごはんとおみそ汁とサラダ。ごはんは無料でお代わりOKということですが、800円とは思えないボリュームで最初は食べきれるかちょっと不安でした。しかし半数くらいの客がごはんを追加していて、併せて味もますまず満足。これでちゃんと利益を出せているのかな~って、「正直」心配になるこたつでした。