何ごとによらず、ものを一面的に見ていると大事なことを見失うことがあります。
なぜなら、勝ち残った企業でもその多くは儲けの大半を株主への配当と内部留保に回し、労働者や消費者に分配することをしなかったからです。 企業倫理の欠如した企業が多い日本の社会で、過度な規制緩和がどういう結果を生むかということに気がつかなかった、と言うより目をつぶった小泉純一郎という人は、多面的にものごとを把握することができない人だったのです。
設計図は平面図、側面図(道路の場合は縦断面図)、断面図で表わされるのが普通ですが、それぞれの図面を個別に描くのではなく、その前に全体像を把握しておく必要があるのです。
こういう線形の場合は、遠くから眺めたときの景観だけでなく、橋を走行する自動車から見ても折れ曲がって見え、運転者に不安感を与えます。
とかく設計者は、設計基準の最小値を満足していればよいと考えがちです。しかし各要素が重なったときには思わぬ不都合が生じることがあるのです。この場合のように不格好だったり運転者に不安感を与えるという視覚的な問題のほかに、急勾配と急カーブが重なったときには運転技術(ハンドル操作など)にも影響を及ぼす危険性も考えられます。 設計者は、各要素をそれぞれ個別に考えるのではなく、それらが組み合わさったときにどうなるかを考える必要がある、つまり道路や橋を「斜めから見て」不都合のないよう、各要素の数値を決める必要があるのです。
この図で言いたいことは、平面のカーブを縦断曲線の位置と合わせることと縦断曲線を可能な限り大きくとるによって視覚的にスムーズな線形になるということです。 とは言え、道路や橋は何もない宇宙空間に建設するものではありません。地形や建造物はもとより、この橋の場合は下を通る大型船舶の航路などといった各種条件をクリアしなければなりません。例えば平面図の青の線にした場合には用地買収が必要になるし、縦断図の緑の線にした場合には橋の高さが低くなって航路の高さが保てず、航路の高さを保とうとすればこう配をきつくするか、橋の長さを延ばさなければならないといった問題が生じます。 設計者はこうした条件にがんじがらめになって、黒の線のようにしたのでしょう。しかし、ものを斜めから見る訓練ができていれば、もう少し考えようがあったのではないかと思うのです。 |