21世紀のはりまへ(6) -マルチメディアセンターの必要性- マルチメディアセンターと地域コミュニティの醸成 大震災以後、地域コミュニティが大きく注目され見直されてきています。「助け合いのまちづくり」とか「小さなデモクラシー」というのも、地域のコミュニティに対する意識づけを起点としてのまちづくりを説いた理論と言えます。 情報化を地域に根付かせるためには、まずパソコンリテラシー(使い方を覚える)や情報リテラシー(情報の読み書き能力)の開発が不可欠となります。このようなものを地域ぐるみで実践しようとしている例に、洲本市が行っている「情報団」があります。 これ自身は従来の枠組みにパソコンをそのままかぶせたようなもので、徳島大学の干川助教授らが同地で推進するボランティアの「情報お助け隊」がなければ身動きのとれない状態ではあります。行政が震災時に活躍した「消防団」をイメージして構想した「情報団」は、その展開方法が「上(行政)から下(自治会) へ」というものであったがために、それ自体をリードする人材を育成することができなかったのです。 つまり「草の根情報化」をいかにオフィシャルなものに引き上げてくるかという部分と、根付こうとしているものをいかに拡げるサポートができるかという点が、情報化による地域コミュニティの醸成を実現するキーであると思われます。 ここで提案するのが「ご近所LAN構想」です。 マルチメディアセンターからCATVや高速専用線によって、まず校区単位程度にネットワークが張れるようにします。前述の「NetDay」が同時に展開できるなら、これはすでにあるものと考えることが出来ます。次にそこから、各自治会単位にまでCATVか低価格専用線でネットワークを延ばします。ここに末端のサーバーを設置して、ここからネットワークケーブルを近所一帯に張り巡らすことができるようにします。つまりここが「ご近所LAN」であるわけです。 「ご近所LAN」の利点は、まず「コストが安い」ということです。上手にやれば僅かな費用で何台もコンピュータを接続することが出来ます。 次に「小回りが利く」という点です。例えば、自治会全員にメールアドレスを持たせるということもなんら問題なく実現できますし(全ての市民が生まれた時からメールアドレスを持つということも可能)、回覧板や自治会広報など地元独自のコンテンツも自由に利用することができます。 また「将来性がある」という点も重要です。基幹となるマルチメディアセンターと小学校サーバー、小学校サーバーと自治会サーバーの間を高速化するだけで、地元で接続したネットワークケーブルは敷設をやり直さなくても対応させることができます。 この情報通信インフラを支えるのは、地域ごとの草の根情報企業や情報ボランティアの力です。前者はいわゆる「街のでんき屋さん」が最も有力な候補となりますが、教育やサポートが地元でできるという仕組みを作ることは「ご近所LAN」にとって不可欠といえるでしょう。コミュニティの情報化学習の場として、市民センターなどの公的出先機関はもちろん、公民館や小学校などもその施設を地域住民に解放し、また相互に情報交流することで、互いのスキルアップが図れます。これについては、阪急淡路駅周辺の菅原小学校地区で、地域情報化実験に取り組む作山氏の例がたいへんユニークです。 将来的には、自治会サーバーに蓄積された情報を校区サーバーに吸い上げては、全ての自治会サーバーにフィードバックしたり、校区サーバーにある情報をマルチメディアセンターのメインサーバーに取り込み、また整理された状態で全ての校区サーバーに展開するというようなサーバーの連携ができれば、地域ぐるみの情報リテラシーの開発をベースとしてコミュニティの醸成にも役立つものと考えられます。 このような事例は、桐生・淡路で実験されていたNTTのコミュニティメーカー「連」で、ひとつのスタイルを提言しています。 |