バッハ(ヨハン・セバスティアン=大バッハ)は、2人の妻との間に20人の子をもうけた。大変な子だくさんであったが、成人するまで育ったのは男子では11人のうち6人だけであった。当時の衛生・医療の状況を考えると無理かなぬことであろう。
この6人の男子のうち、4人までが音楽家として後に名を残すこととなった。長男ヴィルヘルム・フリーデマン(1710~84)、次男カール・フィリップ・エマヌエル(1714~88)、七男のヨハン・クリストフ・フリードリッヒ(1732~95)、九男のヨハン・クリスティアン(1735~82)の4人である。
この4人の息子たちが300年近くたった現在、僕のような「普通の」音楽ファンにまで名を知られているというのは、父親の血を引いているとは言え大変なことである。
今では彼らの作品が演奏会で演奏されることはあまりないが、レコードとしてはかなりの数が出ているし、それが放送される機会も多い。
しかしよく考えてみると、これは「親の七光」ではないだろうか。
今朝もNHK FMの「バロックの森」という番組を聴いていたら、大バッハの作品とともにヴィルヘルム・フリーデマンとカール・フィリップ・エマヌエルの作品が放送されていたが、2人の息子の作品は聴いていて面白くも何ともない、凡庸な作品である。お父さんがあまりにも偉大すぎるからとも言えるが・・・。
僕は息子たちの作品の入ったCDを2,3枚持っているが、あまり聴くことはない。音楽史を研究している人にはそれなりの価値があるのだろうが・・・。
音楽史ということからすると、彼らの育った時代は、ちょうどバロックから古典派に移る過渡期であったという点で、彼らにとって不幸であった。しかし彼らがいたからこそ、ハイドンが古典派音楽を確立できたとも言えるし、あのモーツァルトも幼年時代に彼らから影響を受けたなかったら、後のモーツァルトはなかったかもしれない。
だから「バロックから古典派への橋渡し」という意味で、彼らの存在は高く評価されていいのかもしれない。これは「親の七光」でも何でもない。彼らは価値のある存在である。
というわけで、久しぶりにカール・フィリップ・エマヌエル(C.P.E.)の作品を聴いてみることにしよう。