総務省ではここ数年、「ICT基盤(情報通信技術ネットワーク)の整備」「ICT利活用の促進」「ICT人材の育成」を一体として推進しており、これらの相乗効果による地域経済社会の一層の活性化を目指している。例えば、地方自治体などからの提案を受けて採択する補助事業においても、「地域性・独創性」「技術性・先進性」「汎用性」「期待される効果」「地域経済への波及効果」「事業計画の熟度」「事業の継続性」と並んで「ICT人材の参画」が重要な評価指標として明記されている。ただ、基盤整備や利活用促進と比較して、人材育成の重要性が認識されるようになってからまだ日は浅い。
ICT基盤の整備については、2000年からスタートした高度情報通信ネットワーク社会構築政策である「e-Japan戦略」と「u-Japan戦略」によって、ブロードバンド網の世帯カバー率98.3%(08年3月)、光ファイバ網世帯カバー率86.5%(同)となり、2010年度末までにブロードバンド・ゼロ地域を解消することを目標にするほど進展している。また地上デジタル放送は、普及世帯数は2,200万世帯(08年3月)、普及台数は3,877万台(08年7月)なっており、2011年7月までの完全デジタル化に向けて順調に進展している。
ICT利活用の促進事業と対策については、ブロードバンドなどの普及が進んできたことにより、医療・福祉、観光・交流、防災・防犯、地場産業や一次産業など様々な分野において、ICTの利活用が期待されるようになり、一部の地域や企業においては、販路・市場(商圏)の拡大や生産管理・業務効率化による生産性・売り上げの向上など高い成果を上げている。しかし、一方で、ブロードバンドなどが整備されていても、ICT利活用が十分でない地域も相当程度見受けられることから、07年度から、地方自治体などに対して、地域の諸課題の解決や住民の利便の向上に資する汎用的なICT利活用モデルの構築を委託し、国は委託先から提出された成果物を全国各地域に提供することにより、わが国全体におけるICT利活用の普及促進を図る「地域ICT利活用モデル構築事業」を展開している。
ICTの普及の課題の一つとして、ICTの基盤整備や利活用のニーズがあるものの、地域においてICTに知見を持ち、ICTを利活用できる人材(地域ICT人材)が不足していることが挙げられる。最も遅れていたこの地域のICT人材育成と充実であるが、全国各地域において、地域ICT人材を充実させ、それぞれの地域において、ICTの導入から運用までの円滑化を図っていく必要がある。そこで総務省は、「情報通信人材研修事業支援制度」により、第三セクター、NPO法人などが実施するICT分野の専門的な知識および技能を有する人材を育成する研修事業に対し、助成を行っている。
また、ICTを活用して地域の課題の解決に取り組む地方自治体などに対して、知見・ノウハウ面の支援を強化する観点から、地域の要請に基づき、地域情報化に幅広い見識を有する「地域情報化アドバイザー」を派遣し、情報化を「基盤」「利活用」「人材」の三つの側面から総合的にサポートする「地域情報化アドバイザー制度」を実施している。
ICTが全国各地域に浸透し、地域経済社会の活性化に貢献していくためには、各地方自治体において、的確かつ容易にICTを導入することが可能となって、それを自律的かつ継続的に運営するような仕組みの構築が必須である。このため、引き続き様々なモデル・事例から得られる知見・ノウハウなどを基に、当該地域の実情に合わせて、ICTの利活用方法をカスタマイズし、その導入から実践に至るまでの業務を担う意欲あるICT人材の発掘および育成に一層尽力していくことが不可欠である。これを成功させるために、先進モデルの事例、知見・ノウハウなどを抽出・可視化し、地域オリジナルなモデルとして官民協働で醸成することが必要とされ、地域情報化アドバイザー制度の成果が期待されている。
http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/top/tiiki_kosin.pdf