熊谷守一「喜雨」より
絵なんてものは、やっているときはけっこうむずかしいが、 でき上がったものは大概アホらしい。 どんな価値があるのかと思います。 しかし人は、その価値を信じようとする。 あんなものを信じなければならぬとは、 人間はかわいそうなものです。 真鍋井蛙編著「もうひとりの熊谷守一」里文出版より 作品「喜雨」の蛙について語っているくだり。 「平易ながら非凡さは群を抜いている。 --中略-- 蛙は蛙として見る鋭さは、冷徹な画家の眼そのものである。」 おきまりの視点でおきまりの言葉を羅列しただけのこの感想文に何の精彩もない。 著者は賞賛しているつもりなのだろうが、熊谷が言わんとしたことを骨抜きにするいつものやり方なのである。 ……かわいそうなものです。人間は…。 |