上手に作ろうとしてはダメだよ。 心が自由でなくなってしまう。 力が入って身体が楽しめなくなってしまう。 制作で一番大切なことは動機や目的を忘失してしまうことだ。 するとほら、 気がついたら上手に作れていたりする。
上手に作ろうなんて思わなくても作品はできる。 作品はできてくるものなんだ。 作品ができてくるのはおもしろくてしかたない。 なぜこんなものができてくるのか。 不思議でしかたない。
形が現れる。 手が触れ形は変わる。 形が変わると心も変わる。 心が変わると手の動きが変わる。 手の動きが変わると形が変わる。 形が変わると心も変わる。 心が変わると……。
まるで果てのない旋回舞踏だ。 極小のスリップ(microslip)が旋回する。 イントリンジック(intrinsic)な回転(spin)ダンスだ。 回転で身も心も作品もすでに融け合っている。 まるで回転のために回転しているようだ。 回転が私を世界へと連れ戻す。 回転が永遠を欲す。
作品は回転のモチベーション(motivation)回転のメデューム(medium)だ。 ロクロの上で粘土は回転するが、作品が回転しているとは限らない。 作品を回転させるのだ。 回転する作品は終わらない。 終わらない作品は回転を配分する。 自己を回転させるのだ。 回転する自己はクラクラ(spin)する。 クラクラする自己はデクスタリティ(dexterity)を発揮して感覚的実在の袖をつかむ。 感覚的実在とは「生成しか存在しない」と言う意味での生成のことだ。 したがって生成は「一」なるものだ。 一なる生成とは多様であることだ。 ゆえに一とは多のことなのだ。 多なる生成は無垢である。 それは戯れる子どもだ。 戯れる子どもは回転する。 戯れる者、それはアーティストだ。 戯れるアーティストとは何か? それはなにものでもない。 戯れるアーティストは何を望むのか? なにものでもないがゆえにすべてを。 戯れるアーティストは何をなすのか? たいしたことじゃない。 ちょっとしたことだ。 ちょっと回転してみせるのだ。 努力なんかではない。 努力は凡庸だし不自然(extrinsic)だ。 回転は世界の意志だ。 ◎用語解説 ●slip:横滑り・ずれ・ちょっとした誤り ●extrinsic:・性質、価値・影響などが受動的な・外因的な、固有でない⇔intrinsic
◎本文解説
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