14日の金曜、仕事のあと、ふと思い立って“ムンク展”の県立美術館に行ってきた。 http://www.artm.pref.hyogo.jp/exhibition/t_0801/main.html 仕事場の最寄り駅から阪神岩屋駅まで140円。 まるでいなかの終着駅のように見える半地下式の駅。 震災前なら、この時間帯、浜に並ぶ大きな工場の勤め帰りの人たちが夕食や買い物をしたり、ちょっと寄り道する相談とかで、賑わっていたはず。 今はもう、そんな喧噪もない。 駅前に立ち、六甲の山裾から灘浜に坂をトコトコとおりていく。 ほどなく、あかるくライティングされた島文ビルを過ぎるあたりで、歩道は平坦になり、阪神高速神戸線の下、国道43号線を跨いだ。 みちはそのまま、HAT神戸の街区に入り、斜張橋のペデストリアンデッキとなって南につづいている。高層住宅の照明がみえる程度の暗がりの街の中で、木を張り合わせた舗道を歩く音はコツコツとひびき、みちの両脇に埋め込まれた街路灯のオレンジ色がうみの方までつづく。 そして、うみの手前で、開いているのか不安になるほど、ひっそりと佇む県立美術館の2階につながっていた。。 ムンク展は、学生のころだったか、ここが近代美術館という名前で王子公園の下にあったころ、見に行ったような気がする。 そのときは“叫び”もあった。 絵画のことはよく分からない。でも海辺の月明かりの書き方、心のうちを直截にあらわす独特の雰囲気。暗いと云う人もいるけれど、ぼくは嫌いではなかった。 今回はその色遣いに感激した。 “不安”“絶望”“生命のダンス” “声/夏の夜”“嫉妬、庭園にて”“浜辺の人魚”。 黒、赤、白、緑、青、紫。 ぼく自身、長い間こころを悩ましてきたことがらが、いっとき振り払われた、 そのときの気分が手伝ってのこともしれないけれど、 主張の明瞭さに裏打ちされた、一種の明るさを受け止めてしまった。 そして、展示室のプラズマテレビでは、 ムンクの作品が、ノルウエーのチョコレート工場で生き続けていることを教えてくれた。 社員食堂の、料理の受け渡し口の上部や、食卓を囲む壁に飾られた作品が機能的な部屋の雰囲気にとけ込み、談笑し、行き交う人びとと一緒に写っている。 それが特別の存在であることを誇示するような表示も囲いもない。 いまでもそんな工場があること、 また、それがチョコレート工場だということがイイじゃない。 (ティムバートン、ジョニーデップの映画とは関係ないけど。。) やっぱり、ヨーロッパはいいな。。 なにより、お客さんが少なくてよかった。 ゆっくりていねいに味わうことができる。 たぶん、作品の数ほどしか入ってなかったと思う。 展示を見終えて、美術館から駅にもどる途中、 暗がりのデッキで振り返ると、 海を跨いで走るハーバーハイウエイの明かりが ムンクの月の明かり風に尾を引いて、灘浜の海に映っていた。 夜の美術館は良かった。 晩8時までの公開は、金曜と土曜。 展示はこの30日まで。 |