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2007年09月05日(水) 
ことしの3月半ば、
日本列島に大雪が降って、
暖冬が、最後に帳じりを合わせたころ、
新潟県、村上(むらかみ)市を訪れた。

**********************
新潟県村上市。越後、最北の城下町

「越後村上鮭紀行」(ご馳走の手帖1991)という
短いけれど、しっかりした文章を読んで以来、
長い間、この街が気になっていた。

三面(みおもて)川を遡ってくる鮭大切の食文化。
北国(ほっこく)の城下町の面影と、
それを大事にして発信しようとする、まちの“ちから”。
日本海の海鳴りがきこえる瀬波温泉も忘れてはいけない。。
このまちから、さらに北、11キロにわたって断崖が海に迫る“笹川流れ”をすぎると、
海坂藩・藤沢周平の世界、山形・庄内の地となる。
【村上市の位置:地図参照】

今回の旅は、僕と、若いMくんの二人づれ。
新潟空港からのくるまは、雪舞う内陸の国道7号をさけ、
砂丘地帯、海沿いの3ケタ国道を坦々とすすむ。
そして小1時間、防風林のあいだ、
押し寄せる黒々とした波が防護ブロックに大きな白い波頭を残し砕け散る、
まだ冬景色の海上に石油採掘の巨大なプラットホームがあらわれた。
沖合4キロメートル、水深36メートルに位置する岩船沖油・ガス田。
そう新潟平野は日本では有数の油田地帯だ。
現在、この海上がその中心になっているという。

お昼前、村上市に着いた。
さっそく、まちを案内してくれるひとが待つ
旧市街、細工町の料理屋さんに向かった。

村上のまちは、臥牛山(がぎゅう)・村上城址のふもと、
日本海に向かって“武家まち”、その西に“町人まち”がつづく。
まちのどこからでも城山を望むことができる、
市街の北側を三面川が貫く、
川は北前船が行き来した日本海につながっている。
この3つがこのまち独特の文化を育み、
いまも城下町の雰囲気を色濃くただよわせる。

【“城下町村上 絵地図 武家まち界隈】

“あっ、ONIくん、ここ、ここ。
 主人、やっぱり首が痛くて来れなかったの。ごめんね。”
ふっと、からだのどこか、
ずっと忘れていたあたたかいところに触れられたような。
僕は、大学のサークル仲間から、そう呼ばれていた。
“元気そうだね。。
 Aくん。
 この夏、同窓会テニスにでてきてくれた。
 ありがとう。”
そして、かれらはサークルの仲間同士のカップルで、
いまは、旦那さんの出身地、新発田で暮らしている。

彼女は、お座敷のテーブル一杯に、たくさんの案内をひろげて、、
“また、いろんなとこ、歩き回りたいんだろうと思って、
パンフレットあつめといたよ。”
ありがとうございます。

“この海鮮料理が評判だって。”
ほいほい、それを。おまかせです。
では、っと。。この子は呑めないから、、、
“それと、「〆張鶴」(しめはりづる)の吟醸2つと「酒びたし」をください。”

実は、僕らは、この二品のために、ここまでやってきた。とも云えるのだ。

きりっ!とした、つめたい地酒。
うぅ~ん。おいしいよ~ぉ。
お酒は、醸された、ご当地で飲むのがいちばんというけど。
僕にはあうな~ぁ。

そして、鮭の“酒びたし”。
薄くそぎ身されたアメ色の身が少量の清酒に浸され、
生姜の繊切りが添えてある。
うふ。酒の香りが鼻に抜けたあと、
塩味にほどよくなれた鮭のあじが
からすみのような味わい。

さらに、〆張鶴を口にふくむと
こころなしか柔になったアミノ酸たっぷりの滋味のあいだを、
お冷やがツーと、とおりすぎる。
うふっ、うふっ。。と、ひとり悦に入ってしまう。

姫路のタクシー屋さんの一人っ子だった彼女と、
竜野のMくんは初対面だけれど、
播磨の話題で盛り上がってる。
僕は、話しの接ぎ穂に気を遣う必要もなく、
適当に相づちを打ちながら、気持ちよく、〆張鶴の世界に浸る。

彼女は、学生時代もよく気がつき、話題が豊富で、
横にいて、とっても楽だった。
きっと、あれから、とてもたくさんの人生を紡いできたのだろうけど、
会えば、いつでも大学のころにもどることができる。

“じゃ、ONIくん。道案内お願いね!”。
ほいほい、そういうことなのね。
ボクは地図好き、見知らぬ土地での勘の良さで通っていた。
20万㎞をこえたというダイハツ・パイザーの助手席に乗り込む。
彼女が、お世辞にも女子大生のプライベートカーという感じじゃなかった、
中古のブルーバード510セダンで、
姫路の船場川・鷹匠町や千代田町の
狭い路地を走り回っていたのを思い出すよ。

くるまは、細工町の狭い路地を抜け、“町人まち”から、
臥牛山・村上城址のふもと、“武家まち”に入っていく。
ゆったりとした街割に、
それらしい生け垣をもった、慎ましやかな住家が並ぶ。
あくまでも、ふだんの暮らしの延長にあるまち。
各地で整備されつつある歴史探勝園路なんかも、まだない。

村上は、明治時代から戦後すぐまで、
士族がすむ「村上本町」と町方がすむ「村上町」の二つの自治体に別れていた。
そして、あの“雅子さま” (すなわち小和田家)の本籍は、
ご成婚まで村上本町にあったそうだ。

三之町にある郷土資料館では
村上大祭(7月6,7日)の荘厳華麗な屋台山車「オシャギリ」と、
“人形さま巡り”に因んだ旧家のひな人形を見た。

江戸期かそれ以前に創られたであろう、
生身の人を思わせる、どきっとするような大きな“お顔”の
りっぱな大名雛、古今雛を観るにつけ、
中世以来北前船の寄港地として栄えた街で財をなした豪商の係累
京都や姫路と関係の深かった殿様ゆかりの一族など、
様々な変遷のなか、これらの文化を現在まで守り、
暮らしに息づかせてきた人々の力、町の力を凄いと思う。

そのあと、江戸時代の中級武士が暮らしていた、若林家住宅にいく。
知行150石、それなりの身分というのだが、
かや葺、寄棟造のとても簡素な造り。
つい“たそがれ清兵衛”さんちを思い起こしてしまう。
【重要文化財 若林家住宅:
 http://www.iwafune.ne.jp/~osyagiri/  】

畳敷きの客間と、板の間に畳表だけの普段使いの居間とに分かれている。
通された居間の囲炉裏端で、煎茶をいただきながら、
受付の初老の男性からこの住宅のいわれをお聞きする。

1980年頃まで、親類筋に当たる地元選出の稲葉修代議士が、
自宅兼事務所として使っていたという。
この住宅の主だったというだけで、なんとなく清廉な感じがする。
三木内閣の法相、たしかローキード事件で田中角栄氏の逮捕を許可したひとだったか。
同じ新潟選出なんだ。。

囲炉裏には赤い火が熾っている。
居室にそれ以外の明かりはなく、
板の間、すぐ脇にある台所の流し、縁側、そして各室の柱、
すべてが外からの光がたよりの、鈍いあめ色の世界。
そして、暗がりの向こうで、早春の日差しを浴びた庭が光ってる。
地面の土色と松の深緑、そして、庭の隅に黒みを帯びた雪が残る。
外気が部屋の中に流れ込んでくる。
炭が燃える“かおり”が、残り雪に冷やされた凛とした空気と相まじり、
〆張り鶴に火照った頬に心地よい。
鉄瓶が、かすかな白い息を吐きながら、チンチンと音をたてている。
日暮れの景色になるまで、ずっとここに佇んでいたい気がする。。。

武家屋敷を辞して、市役所と中央公民館のあいだをとおって、
町人まち、上町、大町、小町と連なる商店街へ歩いていく。
この南北のとおりだけで25軒のお店が、
自宅のひな人形や土人形、郷土玩具、福神さんを公開している。

村上のまちづくりイベント、“城下町村上 町屋の人形さま巡り”。

村上の中心市街地の活性化を願う村上町屋商人(あきんど)会が、
昔ながら町屋が多く残る城下町の雰囲気と代々受け継いできたお雛様を活かして、
まちのにぎわいづくりのためにはじめた。
今年で8回目。75軒の町屋が、3月1日~4月3日の間、
古くは江戸時代から伝わるひな人形を茶の間や座敷で展示、開放。
見学者は、地図を片手に、レトロな雰囲気の町人まちを回遊し
普段入れない町屋で、そこに住まうひとと語り、お人形さまを見てまわる。
【“城下町村上 町屋の人形さま巡り”
 :http://www.city.murakami.niigata.jp/kanko/ningyou/

【村上のまちづくり(案内人 吉川真嗣)
  : http://www.k-shinji.info/index.html 】  
【         公開町屋
  : http://www.k-shinji.info/visitor.html 】 
 
そして今日と明日だけは、新潟から、東京のお客さんを乗せて、
蒸気機関車C57が引っ張る “SL村上ひな街道号”がやってくる。

大町では、鮭の加工品のお店、「喜っ川(きっかわ)」を訪ねた。
細長く、うなぎの寝床のような町屋。
裏まで土間が突き抜けている。
お客さんでごった返す、昔の町屋風の店舗部分をぬけると、
つづく茶の間には、お雛様が披露され、
さらにその奥、裏通の日射しが仄かに見える暗がりの中に作業場がある。
そこに足を踏み入れると、
屋根裏の梁に桟を渡して、何十本、何百本もの鮭が逆さ吊りされている。
あの“酒びたし”の鮭だ。
滋養たっぷりの鮭の“白子”も吊されている。

【鮭の酒びたし】

【鮭の白子】

(9/7「越後・村上(むらかみ)-まちのみりょく【後編】」に続く)

閲覧数2,448 カテゴリクチコミ情報 コメント0 投稿日時2007/09/05 23:15
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