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2007年10月22日(月) 

エッカーンフェルデ市 (環境産業の育成、ドイツ)
 

 お金を掛けない環境対策でドイツの『環境首都』に選ばれた小都市エッカーンフェルデ市のメインストリート、キール通りは朝から日暮れまで人通りが絶えない。クルマが入らない中心市街地では、乳母車を押して買い物や散歩をする若い夫婦を頻繁に見かける。車椅子の人もごく普通にカフェでコーヒーを飲み、買い物をしている。この町の人口は23,000人、観光客も含めればもう少し多くなるが、果たしてこの規模の日本の町でメインストリートがこれほど賑わっているところがあるのだろうか。
 このような人で賑わいくつろげる中心街になったのは、20年前からキール通りとそれに接続する数本の道、延べ約1300メートルを全面的に自動車乗り入れ禁止にしているからだ。ドイツではかなりの都市で実施しているこの政策は、環境対策であるのはもちろんだが、市街地活性施策であり、福祉施策でもあり、観光振興施策でもある。エッカーンフェルデ市はその先進的な事例である。
 さらに、市街地だけでなく全市域の道路の70%に何らかの交通抑制施策が実施されている。ただ、それ以上に自転車を利用しやすい総合施策がすすんでいるので、クルマより自転車を利用する人の方が多い。エッカーンフェルデ市は自動車道の半分に自転車専用道路をつけている。また自転車専用道路のついていない道は、「ゾーン30」と呼ばれる時速30km制限地域の道やあまり自動車交通のないところなので専用道は必要ない。また、街のここかしこに工夫を凝らした駐輪施設があるので停めておくのに不便はないし迷惑にもならない。
 
①技術とエコロジーセンター
 雨水を利用してつくられた小さな池にかかる木の橋を渡り建物の中に入ると、まるで植物園の温室と思ってしまうであろう。TOZ(エッカーンフェルデ・技術とエコロジーセンター)はそんな建物だ。41のベンチャー企業が入居しているビルで、最初の5年間は14DM/1㎡という安い料金と、情報の提供、事務代行などで、エコロジーをテーマにしたベンチャー企業の支援をしている。
 ドイツではベンチャー企業の成功率は50%に満たない。そんな新起業を独立するまで手助けするのが環境首都に選ばれたエコの町エッカーンフェルドの市郊外にあるTOZの仕事で、成功率は実に90%に達している。町の思想を反映してエコ関連の起業を育てることがこの町らしいところだ。市の経済振興後者が出資しているが民間で運営しており、5年が経過する。独立して成功した企業の中には上場した企業もある。
 また、このTOZ建物自体が、エコロジーを見事に具現化している。例えば、床部分の断熱にはガラス粒が使われ、コンクリートの替わりにプラスチックボールを鉄骨の間に入れて軽量化している。壁と屋根の断熱には12種類の自然素材、葦、亜麻、羊毛クズなどを使用。暖房配管の防護には木綿を利用している。資材はリサイクル・再利用可能なもの、コンポスト処理可能なものを利用し、ポリ塩化ビニル樹脂、鉱物繊維、ポリスチロール、ポリウレタンなどの利用はしないというコンセプトである。
 中庭の北側に面する工房棟の壁には焼いていない粘土レンガを利用、昼間は熱を吸収し夜間は放出する働きがある。また壁は二重になっており、暖かい空気は下の隙間から壁の中に入って上昇し、天井近くの二重窓を通って中庭へ戻る空気の循環ができている。ガラス張りのホールではソーラーエネルギーのパッシブ利用をしており、床からくる熱と昼夜の温度差を利用した室内空間の自然空調機能とも結びついている。このようなシステムにより、冬期に冷え込み外気がマイナス20℃になったときでも館内は6~7℃に保たれるという。また、光の量に応じて照明を自動制御する設備も部分的に導入している。このような様々な工夫は、ガス、温水、電気消費量を節約し、それによって経営費を抑えることにも役立っている。
 植物も単に「ディスプレイ」として置かれているのではない。いちじく、キイウィなど実をつける木、夏は木陰つくり冬は太陽の光をとおす落葉樹、四季折々に咲く花々など、自然と人々のよい付き合いを演出している。また、このようなかたまりのある植栽は快適な空気をつくり安価に室内気候を整えるのに役立っている。
 このような試みは、多くの好影響を生んでいる。ひとつにはこれら開発された技術が他の建築物に応用されていくことで、すでに幼稚園などで実現されている。またエコロジカルな要求と経済性は必ずしも相反するものではないという認識が具体的に証明されたことになる。そしてこのTOZに入居したエコロジカルな要求をもっている革新的企業に対し建物自体もインスピレーションを与えている。
 
②LプランとFプランの整合
 5年たつと企業はセンターを出てまちに事務所や工房を構えることになるが、まだ完成後4年以内に、すでに7企業をエッカーンフェルデ市内に送出している。その中には100人の従業員をかかえるところも現れている。TOZは非常に好評ですでに1度増設し現在41の企業が入居しているが、まだ待機している企業もあるという。
 行政計画面でもエッカーンフェルデ市には大きな特徴がある。それは自然環境・景域計画(Lプラン)基づいて、土地利用計画(Fプラン)の全面的に変更したことである。日本の自治体に置き換えれば、環境基本計画と都市マスタープランが完全に整合が採れているようなものだ。エッカーンフェルデ市のように土地利用・開発計画と環境保全の摩擦が少ないまちはドイツでも珍しいという。またこの様な計画に基づく自然復元も工夫をこらしながらすすめられている。

閲覧数1,465 カテゴリ資料 コメント0 投稿日時2007/10/22 18:08
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