加藤久仁生さん、34歳。 2009年、「つみきのいえ」で第81回アカデミー賞短編アニメーション賞を受賞されました。 快挙にもかかわらず、約12分という短い上映時間の問題もあって日本国内ではたった3館でしか上映されませんでした。 「それでは、赤穂で上映しよう!」と思い立ち、遊加里たうん商店街の皆さん初め製作会社・配給会社のご協力を得て細々とですが加里屋まちづくり会館で「つみきのいえ」の上映会をさせて頂きました。 ご観賞頂いた皆さんには、少なからず心を揺するモノがあったと思います。 加藤さんはアカデミー賞受賞時32歳と若い。しかも、作品の出来栄えには人一倍のこだわりがあり頑固な反面、非常にシャイな性格。 他人事ながら「これからが大変だろうなぁ〜!」と漠然と気になっていました。 そんな加藤久仁生さんの近況が朝日新聞に掲載されました。 掲載された記事によると、加藤さんは「つみきのいえ」にどこかもの足らない感じを抱いていたそうです。 インタビューに加藤さんは次のように応えています。 「おじいさんの心の内側しか描けませんでした。亡くなった妻や、離れていった娘がおじいさんをどう思っていたのか。短編なので複雑な話にはできなかった。」 受賞後、講演の誘いが次々に舞い込んだ。すべて断った。「感動アニメの若手監督」のようには振る舞えなかった。なにより、納得していない作品について話す気分になれなかった。 アカデミー賞受賞後、加藤さんは人知れず苦しんでいたようです。 そんな迷いの中で、頼りにしていた大学時代の恩師も今春逝ってしまわれました。 暗中模索の最中、今年3月には東北3県を大津波が襲い、タイでは首都までもが水浸しになってしまう事態に陥っています。 「つみきのいえ」は、水没していく町で一人で暮らすおじいさんの話です。 上映された時には、漠然と太平洋にあるサンゴ礁で出来た島国を思い浮かべていました。 この映画を観たほとんどの人たちは、「水没する町」という設定は普通には起こらない非常に特殊な「おとぎ話」のような設定と思って観ていたと思います。 ところが、「水没する町」が現実のモノになってしまいます。 この「水没した町」に取り残された人々は、これからどのように日々を暮らしていけばよいのか? もう「おじいさん一人のお話」では済ませられません。 暗中模索を繰り返していた加藤久仁生さん、新作の構想をあたためているそうです。 「家族の心のふれあいをテーマに来年には制作に入りたい。」との事。 「つみきのいえ」で感じていた「ものたりなさ」を次回作品では払拭される事を期待しています。 |